夏休み・8
すみません短いです。
これから小説自体R15とさせて頂きますm(__)m
「観念したか。素直で良いな」
レイピアを手放した私に完全に油断して近付いてくる髭面。
目の前まで来ると手を伸ばしてくる。が。
残念。観念などするものか。
手を伸ばす髭面に私は一歩踏み出した。
ードンッ!
髭面の後ろから見ていた野盗達には何が起こったか分からなかっただろう。
ゆっくりと倒れていく髭面。その喉元にはナイフが突き刺さっていた。
手放したレイピアの代わりに取り出した隠しナイフだ。
何が起こったか理解出来ていない野盗達は反応が遅れた。
その一瞬に私は動いた。
まだ服に仕込んでいた数本のナイフを野盗達に向かって投げ付ける。
咄嗟に反応出来ない前列の野盗達は避けきれず傷を負う。
ナイフを投げると同時にレイピアを引き抜き右端の野盗に向かって駆ける。
すれ違い様に胴を薙ぎ、ナイフに当たらなかった後列にに斬りかかる。
やはり反応が追い付いていないそいつの喉元を一突きする。
3人やった。だが、流石にもう野盗達は状況を理解し、私に向かって武器を構えていた。
しかし、どうやら私に危害を加えてはならないらしい野盗達は私に攻撃を仕掛ける事が出来ずにいる。
睨み合いながら私は野盗達の奥の人物を最も警戒していた。
先程2人を逃がした時、髭面は後ろに目配せをした。その時にその視線を受けて更に野盗達に指示をした男だ。全身黒ずくめでフードにマスクまでして顔を隠している。
髭面がリーダーっぽかったが恐らくコイツがリーダーだろう。
コイツらの他に居るであろう黒幕について話を聞かなければならない。髭面を殺したのはこの男が居れば情報元は充分だろうと踏んだからだ。
「やるか」
1つ呟いて、私は野盗達に向かって行った。
ここからセルゲイ視点です。
「セルゲイ様!良かったのですか!?」
リラ様を置いて行った事が未だに心配なのか、最早見えぬのにロッドが後ろを気にしながら問う。
「良くはありません…ですが、リランド様は幼少より騎士団長が鍛練されてきました。あの程度の輩に遅れは取らないでしょう」
「あの数でも、ですか?」
勿論、1対1や、4、5人程度なら、だ。あの数では流石に太刀打ち出来ないだろう。
だが、彼奴らはリランド様には危害を加えることが出来ない様だった。そこに付け込めば或いは…。
「ロッド。貴方は戻ってリランド様が見えるギリギリの位置で身を隠して下さい。万が一援軍到着前に何かあれば後をつける様に。リランド様の命に関わらない限り手出しはしてはなりません。」
「は!」
私の指示に敬礼をするとロッドは手綱を引き、来た道を引き返して行った。
ロッドは若手だが実力のある子だ。ヘマはしないだろう。
「リラ様。もう暫しお待ちを…!」
カーディナル家は領地の境界付近に警備隊として其れなりの数の私兵を置いていた筈だ。その内何人かは元騎士が居た。緊急事態だ。昔の権威を使って引っ張らせて頂こう。
私達を傷つけまいと独り残られた幼い主。本来ならば他の姉君、妹君達と同様に護られるだけの存在で良かった筈なのに。
美しいお嬢様は私達をも護ろうと剣を握る騎士となられた。
必ずお守りせねばならない。必ずお救いせねばならない。
私は己の傷の痛みも忘れ、ひたすらに馬を走らせた。