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成績

「では今日は休暇前最後の授業ですから、皆様1人1人とダンスを踊らせて頂きましょうか」


 そう言ってニッコリと優雅に微笑みを浮かべる美女。礼儀作法担当のコーデリア・セイラン先生だ。

 セイラン伯爵家の一人娘で婿取りをしたのだが、旦那様を早くに亡くされ未亡人となり、現セイラン伯爵の息子さんがまだ幼い内は当主代理として伯爵家を取り仕切っていらした逞しいご婦人だ。

 息子さんが当主に就かれてからは時間に余裕が出来た為学園で講師をしてくださっている。当主代理を務めただけあって、大変厳しく胆のすわった御方である。


「出席番号順ではつまらないですから、此方のくじを引いて下さい。その番号順で踊って頂きます」


 礼儀作法の先生だけあってくじの箱を手に取る仕草までもが優雅だ。凄い。私には出来ない。


「引くのは出席番号順に致しましょうか。グライエル様からどうぞ」


 言われて箱からくじを引く。きっちり折られた紙を開くと綺麗な字で『23』と書かれていた。いい感じに後だな。

 私に続きアドニスが引き、皆次々と引いていく。出席番号最後のジェンキル・ダラスマニが引き終えると、先生は箱を片付けた。


「では、1番を引いた方此方に出ていらして」

「はい」


 返事をして前に出たのは今くじを引いたばかりのダラスマニだった。ダラスマニ男爵家の次男で赤い髪に青い目の爽やかなイケメンだ。


「あら。最後に最初を引かれるなんて」

「誰よりも最初に先生の手を取れるとは、光栄です」

「まぁ。その言葉は私の授業の成果かしら?」


 クスクスと先生が笑う。嫌みの無い優雅な笑い方だ。


「1曲お相手よろしいですか?」

「勿論ですわ」


 このやり取りも採点されるんだから恐ろしい。油断の出来ない授業だ。


 そしてダンスが始まり、短めにアレンジされた曲が終わるとお辞儀をして終了した。

 ちなみにこの曲もわざわざ生演奏である。まぁ弦楽三重奏位だけど、それでもわざわざ授業の為に凄いよなー。


「リードもステップも問題無いですね。このまま精進して頂きたいですわ」

「ありがとうございます」

「では次の方」


 そんなこんなで次々とダンスを踊っていく。短めとは言え30人と連続ダンスって先生体力凄いな。もう半分を過ぎたが全然疲れていない。


「次の方」

「はい。宜しくお願い致します」


 前に出たのはカナン・クーゲルだった。誘いのやり取りをして曲が始まり、手を取り踊り始める。

 リードもステップも問題無さそうだ。入学前までダンスなんてした事がなかったらしいが、貴族と変わらないレベルだと思う。

 曲が終わると、お辞儀をして終了した。


「問題ありませんわね。とても初心者とは思えませんわ」

「ありがとうございます」


 次はアドニスだった。流石に侯爵家で教育されただけあって問題無い。というよりもなんか洗練されてる。同じ曲、ステップの筈なのに思わず見蕩れる位だった。


「流石だわ。何も言うことは無いわね」


 曲が終わると先生はニッコリと微笑んだ。今日初めてのリアクションだ。凄いなアドニス。


 その後また何人か踊ったがアドニス程踊れた者は居なかった。


「次の方」

「はい」


 いよいよ自分の番がきた。先生の目の前に立ち恭しくお辞儀をする。


「どうぞ1曲お付き合い下さい」

「まぁ。喜んで」


 曲が始まり手を取り踊り始める。しかし…確か先生はもう40歳過ぎている筈なのに全く疲れを見せないこの体力。そして近くで見ても肌はシワがなく美しい。まさしく美魔女だ…。

 見蕩れていると先生が浮かべていた微笑みを更に深くした。

 次の瞬間先生のステップが微妙に変わった。

 え。なんで?内心の驚きを隠しそのまま此方も笑顔で変わったステップに合わせてリードする。そして間もなく曲が終わり、お辞儀をする。


「素晴らしいわ。良く対応出来ました」

「意地悪はやめて下さいよ」


 笑顔で褒めて下さるが、いきなりなんで私だけあんな意地悪をされたのか。


「あら。もし御令嬢の足を踏まれたりしてしまったらそこにつけ込まれてしまうでしょう?グライエル様は大層人気がお有りだから、手段を選ばない御令嬢も出てこられるかもしれないわ」


 これはその時の為の訓練だと言わんばかりに良い笑顔を浮かべる先生。確かにそんな事態は避けたい。


「ありがとうございます。これからも御指導の程宜しくお願い致します」


 一礼して私の番は終わった。

 取り敢えず礼儀作法に関しては今のところ私とアドニス、クーゲルも成績は良好そうだ。

 この調子で他の授業でも良い成績だと良いが…。














 

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