期待外れ(※主人公視点ではありません)
元日って意外と暇です。
リランド・グライエル。女所帯で育てられた軟弱男だと思っていた。
首席入学もどうせグライエル騎士団長の息子だからという学園側の贔屓だろうと思っていた。
だが実際は剣の腕は勿論、身体能力、教養とどれも大したものだった。
プライドの高い貴族なら庶民にあんな舐められた態度をとられたら腹を立てて何かするんじゃないかと期待したが、それも無しだ。自制心も大したものだ。
1度だけ拝見した事のあるグライエル騎士団長と良く似たリランド・グライエルは見た目だけでなく中身も騎士団長譲りなのか。
それとも今までその様に教育されてきたのか、いずれ人の上に立つ自覚と覚悟が有るのだろう。
期待外れだ。あんなに有能では付け入る隙がないではないか。
実力重視とは言え生徒は貴族と裕福な商家出身の子供達だ。有力な人物に取り入ろうとする奴等も少なくはない。
だがリランド・グライエルには取り巻きが居ない。確かに積極的に人と関わらないが、話してみると取っつきにくいタイプではない。なのに何故取り巻きが居ないのか。それは常に一緒に居るラーシュ侯爵の息子がそういう輩を寄せ付けないのだ。
此の国では珍しい神秘的な黒髪に紅い目に凛とした佇まいも相まって、陰で孤高の騎士等と呼ばれて憧れの的だ。
このままいけば将来きっと騎士としても貴族としても至高の存在となるだろう。
だが今ならまだ手が届く。手が届くならば掴んで引き摺り降ろす事も出来る。
自分の所まで、堕とす事が出来る。
まだ、間に合う。
至高の存在を、自分だけのモノに。