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不信と不安

「今日は二人一組で打ち合いをしてもらう」


あれから数日後。ありがたくブラッド先生の部屋を使わせてもらい、安全に着替えが出来るようになりました。

そして只今剣術の授業中です。基礎訓練も終わりくじ引きでペアを決めて手合わせをするのだが…。


「グライエル様とペアですか。ついてないなぁ」


そう言って笑うのはカナン・クーゲルだ。手には私と同じ『13』と書かれた札を持っている。不吉な数字だ13。


『ついてない』はこっちの台詞じゃあ!なんでお前とペアなんじゃい‼

あの更衣室での遭遇以来出来る限り避けて来たのに!何でこのタイミングでお前とペアか!?

自分のくじ運の無さに絶望する。

確かに前世でもコンビニのくじ引きとか応募券しか引いた事無かったわ。


て言うか今までペアは先生の方でそれぞれのレベルを見て予め決めて来ていたのに、何故今日に限ってくじ引きなの⁉


「クーゲルと組むのは初めてだな。手加減はしないぞ」


内心の絶叫とは裏腹に冷静に返す。手加減しないってか出来ないわ多分。顔が憎すぎて。


「今日はペアでこの円の範囲内で打ち合いをしてもらう。相手を円の外に追い出した方の勝ちだ。シンプルだろう?」


成る程。それならば技術で劣っても力で押せば勝てる可能性もある。

一通り基本の型は皆修めたし、これからは腕力の差も見ていこうというわけか。

それでくじ引きによるペア決めだったのか。迷惑だ。


「では、1番のペアから円の中に入れ」


一応他人の動きを見るのも勉強なので、皆で囲んで見学する。13番目なら順番が来る前に授業時間が終わるかも…。


「あぁ。授業時間もあるから、一組5分以内に決着が着かなかったら次にいくからな」


期待はバッキリへし折られました。


5分掛からずケリの着くペアもいて…まぁ、アドニスがそうで相手を瞬殺したんだけど…あっという間に自分の番がまわってきました。


「次。13番」


12番が入って5分経過。決着が着かず、ブラッド先生から交代を言い渡される。


「はい!」

「はい」


ついてないと言った割にテンション高くクーゲルは返事し、対称的に私はテンション低めに返事する。


円の中に入りクーゲルと対峙する。あぁぁむかつく初心者マーク野郎が目の前に‼


「始め!」


先生の掛け声で腰に差していた木剣を抜くと同時にそのまま横凪ぎに切りつける。

が、クーゲルは一歩下がってそれを避け、剣を振りかぶり上段から降り下ろしてくる。

スキだらけの大振りの一撃。避けるのは容易いが、ここは敢えて…。

下から掬い上げる様に剣を振り上げる。それは降り下ろされたクーゲルの剣とぶつかり…


「っ!」


クーゲルの剣が私に押し切られ、そのままバランスを崩し後ろによろめく。

振り上げた剣をそのまま袈裟懸けに降り下ろすと、体勢が崩れ剣で防ぐ事の出来ないクーゲルは再び後退る。更に追撃をかける為に突きを繰り出すと、やはりそのまま後退り…


「止め!」


ブラッド先生の声で、クーゲルが円から出た事に気付いた。

ヤバい…うっかり本気になる所だった…。

ま、勝てて良かった。負けたら更に憎しみ倍増するとこだった。

木剣を鞘にしまおうとすると…何か空気を裂くような気配を感じた。

負けた筈のクーゲルが剣をしまわず横凪ぎの一撃を繰り出してきていた。

先生止めって言っただろ‼防げるか!?


「っ⁉」

「クーゲル⁉」

「リランド⁉」


ガッ!


先生がクーゲルを咎める様に、アドニスが私を心配してそれぞれの名を叫んだ時。

私は咄嗟にクーゲルの木剣を木剣の柄で弾き返していた。


この野郎…!今…。


「クーゲル。止めだと俺は言った筈だが」


先生がクーゲルに詰め寄る。


「あ。すみません。あまりにもグライエル様の攻めが凄くて焦ってしまって聞こえませんでした」


へらっとしてそう答える。

嘘だ。コイツは焦ってなんかいなかった。少なくも先生の声は聞こえていた。

だからこそあのタイミングで剣を振るったのだ。私が油断したであろうタイミングで。


「この程度で焦る様な精神力では騎士は務まらんぞ」

「はい。すみません」


先生が信じたかどうか分からないが、注意され反省の態度をとる。

コイツ。あの時…。


バランスを崩したフリをして、敢えて気付かれ難い低い姿勢から剣を繰り出してきた。恐らく最初から狙っていたのだ。私が油断するタイミングを。

私を見る目は、とても焦った人間のするものではなかった。獲物を狙う狩人の様な鋭い眼をしていた。


どういうつもりだ?何故そんな事をした。


クーゲルは先生から私に向き直り、やはりヘラヘラした笑顔を浮かべる。


「でも、グライエル様は流石ですね。手も足も出ませんでした」


ぬけぬけと何を言うか!

どうせ最後のあの一撃の為にわざと押されて見せたのだろう。


「そんなことはない。クーゲルも最後の一撃は鋭かったぞ。防げて良かった」


私の言葉にクーゲルは更に笑みを深くした。


更衣室の件といい、一体コイツは何を考えているんだ?

ゲーム上では才能はあるが性格容姿全において特に特徴の無い一般人だった筈だ。バッドエンドで逆恨みしたりはするが、少なくとも序盤からこんな曲者ではなかった。


ゲーム通りの世界ではないのか?

これからの学校生活一体どうなっていくんだ…。 

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