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親友

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「では、ラーシュは外で待っていろ。グライエルは中に入れ」


ブラッド先生の部屋の前に着くと、先生はそう言って中に入っていった。


「済まないアドニス。やっぱり先に帰ってくれても…」

「待ってるから早く行ってこい」


そう言ってアドニスは有無を言わさず私を部屋に押し込んだ。

人が気を遣ってやったのになんて態度だ。少しイラッとして閉められたドアを睨む。

しかし、担任から呼び出しを喰らうとは。入学して1ヶ月。特に何も問題は起こしていない筈だが…。


「そんな所に突っ立ってないでこっちに来たらどうだ」


振り返ると、先生は部屋の奥の机に向かって座っていた。

近付いて机を挟んで向かいに立つ。なんか取り調べみたいな雰囲気だな。緊張する。

ブラッド先生は騎士団に所属していて、本来は王宮勤めらしい。

しかし教師の仕事が忙しく、騎士団の仕事も学校内で片付けなければならない様になった為に専用の個室を与えられているらしい。


「そう固くなるな。説教じゃない」


私の態度に苦笑して、先生は机の引き出しから何かを取り出し私に差し出した。


「……鍵?」


そう。それは鍵だった。


「此処の合鍵だ。持ってろ」

「……はい?」


合鍵?合鍵ってなんだ?男性から合鍵渡されるとか恐らく前世でも経験してないぞ?

あ、でも家とかじゃなくて学校内の部屋だもんね。それでも先生の個室になるわけで……。あ。駄目だ意味が理解出来ない。


「わざわざ人が居なくなるまで待って着替えて授業に遅刻なんぞされたら困るからな。これからはこの部屋を使え。俺が居ないときは鍵を掛けているから合鍵を持っておけ。中からも鍵は掛けられるから安心だろう」

「はい?」


合鍵の意図を説明されるが、やはり理解出来ない。

わざわざ着替えの為に合鍵渡して部屋を提供するか?普通。

部屋を軽く見渡すと、本棚に囲まれ机には書類が積まれている。

これ多分見られちゃまずい物もあるんじゃないか?生徒に鍵渡して出入りさせて大丈夫なのか?


「部外者に見られてはまずい仕事等もあるから与えられた個室では?」

「そうだな」

「その個室の鍵を生徒に渡すのは問題では?」

「お前は部外者ではないだろう。俺の上司はお前の父親だからな。俺の仕事内容はお前の父親が把握している」

「それでも、これは贔屓では?」

「だが助かるだろう?」


確かに助かる。だが……。やはり何故先生がこんな事をするのかわからない。

先生は上司の子供に恩を売って自分の評価を上げようなどとするタイプの人間ではない。

ならば純粋に人助けだとして、何故安全な着替えの場を提供しようとしてくれたのか。


考えられる可能性は1つ。先生は私が女だと知っている。


いつまでも差し出された合鍵を手に取らない私に先生はため息をついた。


「俺はルーベンスの子供は全員娘だと聞いていたからな」


突然のその言葉に身体が凍りつく。それを見て先生は意地の悪い笑顔を浮かべて言った。


「お前の父親の親友はラーシュ侯爵だけじゃないって事だ。俺も此処の卒業生でルーベンスとは同期でクラスメイトでな」

「そうだったんですか……」


おい。担任が同級生とか初耳だぞ親父。


「そう言うことだ。別に何にも企んでないから安心して受け取れ」

「でも先生の部屋に出入りしていたら怪しまれるのでは…?」

「担任だし大丈夫だろう。後はお前が上手くやれ」


丸投げかい!?助ける気が有るのか無いのかどっちだよ!?

しかし確かに助かる。借りていて損は無いだろう。


「有り難くお借りします」


言って鍵を受け取る。


「まぁ。上手く使え。出来る限りフォローはしてやる」

「有難うございます」

「話は以上だ。帰って良いぞ。ラーシュもあまり待たせては不憫だからな」

「はい。失礼します」


一礼し、部屋を出ようとすると、後ろから声を掛けられた。


「あぁ、そうだもう1つ。リラ・グライエル。息子が居たことを知らなかったのは俺だけだから安心しろ」


本名まで知ってんのかい!?

慌てて振り返ると先生は楽しそうに笑っていた。リアクション見て面白がってんな。ちくしょう。

だが今の言葉では私が女だと知っているのはブラッド先生だけだと言うことか。安心していいのか分からないが、取り敢えず良かった。


「そうですか。6人中5人娘ですからそんな勘違いをされても仕方ないですね」


そう言ってこちらも笑顔を浮かべる。こちとら中身は40歳オーバーしてますからね。その程度のからかい全然余裕で流せますよ。


「では失礼します」


再び一礼し、今度こそ部屋から出たのだった。

先生はやはり楽しそうに笑っていた…。





先生の部屋を出ると、待っている筈のアドニスが居なかった。

あれ?やっぱり先に帰ったのか?


「終わったか?」

「うわっ!びっくりした。帰ったのかと思ったよ」


いきなり後ろから声を掛けられ思わず声を上げてしまった。ちょっと恥ずかしいぞ。放課後で人が居なくて良かった。


「ちょっと花を摘みに行ってた」

「何処のご令嬢だお前は」


何だその表現は。ていうか人が驚いてんの見て笑いやがって。


「待たせてすまなかったな。じゃあ帰るか」

「そうだな。帰ったら夕食までチェスでもどうだ?」


チェスは口実で恐らく話が聞きたいのだろう。更衣室の件に担任からの呼び出しだもんな。アドニスが気にならない筈がない。


「いいな。お前の部屋で良いか?」

「あぁ。じゃあ帰るか」


寮は学校の敷地内にあるので登下校はすぐだ。


寮に着くと、そのままアドニスの部屋に向かう。談話室もあるのでそこでチェスとかカードゲームをしている子達も居るが、私達でゲームをする時は基本的にどちらかの部屋でやっている。

ほら。この手のゲームって、性格が出るから。

アドニスとやると本気でやるから談話室でやってたら皆に性根の悪さがバレてしまう。


「で、何があったんだ?」


部屋に入るとチェスを準備しながら尋ねてくる。

私はお茶を淹れていたのだが。テーブルに着くまで待ってられないのか。


「あぁ。まず更衣室でな、クーゲルに鉢合わせたんだ」

「は!?」

「あと、先生から合鍵貰った」

「はぁ⁉」

「以上」

「待て待て待て」


お茶を持ってテーブルに着くとチェス盤に駒が散乱した状態でアドニスが頭を抱えていた。まぁそうなるよね。


「まずクーゲルと鉢合わせたって大丈夫だったのか⁉」

「着替え終わっていたから大丈夫だったよ。ただ、入って来た事に気付けなかったんだ。周りに注意は払っていたのに」

「お前がか?」

「あぁ。それが引っ掛かって…。ドアの開け閉めの音もしなかったんだ。なんでアイツはわざわざ気付かれないようにそっと入って来たんだ?と思って」


そう。鉢合わせた事よりそれが気になっていた。わざわざ音を立てずにそっと入って来るという事は、中に居る人間に気付かれたくなかったという事だ。

殆ど皆が着替え終わっているタイミングで、人が居る可能性は低かったのに何故そんな事をしたのか。実際アイツは自分で言っていた。『ダントツでビリかと思った』と。

人が居る筈がないと思っていたのにその行動は矛盾しているではないか。


可能性としては、アイツは中に誰かが居ると知っていた。それも恐らく中に居るのが私だと。


もしくは日常的に音を立てずに生活するのが癖になっているか。だが普段の様子を見ていると普通にドアの開け閉め等の音は気付くレベルだ。


ならば考えられるのは前者だ。

アイツは何故私に気付かれたくなかったのか。


「クーゲルには注意した方が良いな…。女とバレてなくても、男でも危ないらしいからな」

「え。何それ」

「ブラッド先生が言っていた。男同士の奴も少なくは無いって」


まさかのBLですかー⁉ここギャルゲーですよねー⁉


「そうか…アドニスも気を付けろよ…」

「あぁ…」


なんだろう凄い空気が重くなった。


「あ。先生からは着替えに部屋を使って良いって。父上の同級生で私の事も知っていたらしいよ」

「そうだったのか。なら取り敢えず安心だな」

「あぁ。こうなると私よりお前の方が危なそうだな…」

「いや、まぁ…」


何とも言えない表情をするアドニスに笑っているのをバレない様にお茶を啜った。ヤバいちょっと面白い。


しかし着替えの心配は無くなったが、クーゲルには注意しないとな。ギャルゲーの主人公だからまさかゲイって事はないと思うが…。


取り敢えずこれから注意して周りを見てみよう。リアルBLが見れるかもしれない。学校生活に新たな楽しみが出来たわ。


私はこの時自分が世間的に完全に男であることを忘れて、BLに関して完全に他人事だと思っていた…。

































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