タイトル回収
読んで下さる皆様ありがとうございますm(__)m
「そして夜が明けた!」
……独り部屋なので誰もツッコミ入れてくれないけど、前世では独り暮らしが長かったので慣れてます。
いよいよ今日から本格的に学園生活。つまりギャルゲーが始まる。
気合いを入れて男らしく身支度を整えて部屋を出ると、何故かそこにアドニスが立っていた。
「お早うアドニス。どうした?」
取り敢えず挨拶をすると、アドニスは両手で顔を覆い俯いた。
「どうした?」
「幸せ…」
質問に対してワケわからんことを答えてきたので放置して食堂に向かう。
学生寮は3棟あり、入学年度ごとに分けられている。その為寮生活で先輩後輩が一緒になることは無く、3年間同級生と過ごすことになる。
食堂に入ると、先客達が一斉にこちらに目を向けてきた。その視線に寝起きでちょっと苛ついてしまった私は、目が合った数人を思わず睨み付けてしまった。
睨まれた奴等は慌てた様子で目を反らした。何だ?なんなんだ一体?
「流石に騎士団長の息子で首席入学だと、注目の的だな」
置いてきたはずのアドニスがいつの間にかすぐ後ろに立っていた。
気配感じなかったぞオイ。
「そうだとしても、ジロジロ見られると気分が悪い」
「まあ、何かあっても俺が付いてるから」
食事を受け取り席に着くと、当然のように向かいに座ってくる。
本人的には頼れる幼なじみ、若しくはナイト気取りなのかもしれないが…。
それが逆に心配だけどな‼
目の前で幸せそうにスープを飲んでいる幼なじみに気取られ無いように、こっそりため息をついた…。
朝食を終え、学園に登校する。当然の如くアドニスも一緒だ。
食堂の時と変わらず周りの生徒達から視線を感じる。恐らく新入生だけでなく上級生達も居るだろう。
なんなんだホント。ジロジロ見んな何か言いたいことがあるならハッキリ言え!貴様ら全員男だろうが!
…と叫びたいところだが、取り敢えず無視して教室に向かう。
1クラス30人で1学年3~5クラスの編成になっている。バラつきがあるのはその年によって入学者数が違うからだ。
今年の1年生は3クラスだけだが、3年生と2年生は5クラスある。
更にクラス分けは入学時の成績で分けられる。
予め武芸の基礎を学んできている貴族の子息と、才能は有れど学べる環境に無かった商人の子供ではスタート地点が違うからだ。
勿論最終的には同じレベルまで学び卒業する様にはなるが。
なので成績の良い貴族のクラスと、貴族と商家の混ざった中間のクラスと商家メインのクラスに大体別れる。
私は首席だったので、恐らく成績優秀組のクラスだ。残念な事にアドニスも同じクラスだ。
教室に入り、出席番号で決められた席に着く。
1番前の列の窓際だ。そして隣はアドニスだ。なんだ?呪いか?裏で手でも回したのか?
教室を見渡したいが、どうしても視界にアドニスが入るので、なんかちょっと不愉快になるのでひたすら外を眺めていた。
いや。銀髪碧眼のイケメンなんだよ?でもほら露骨に危険人物だから警戒心がね。
それでも当たり障りのない雑談をしながらホームルームの開始を待った。
「では、出席番号順に自己紹介をしてもらおう」
担任のブラッド先生が言った。
ホームルームが始まり、先生の挨拶と自己紹介。カリキュラムの説明等を一通り終え、お決まりの生徒の自己紹介だ。
…ちょっと待て、出席番号順?
嫌な予感がしたと同時に先生がこちらを見た。
「グライエル。君からだ。ここに来て、フルネームと、何か一声」
ほらぁやっぱり!そうだよね私出席番号1番だった!
席を立ち、前に出ると、29人がこっちを見ていた。
ジロジロ見られる事にはもう慣れたわ!
でも怖いので皆の顔は見ない。絶妙に視線を外す。
「リランド・グライエルです。皆さんご存知かと思いますが、父はグライエル騎士団長です。父の名に恥じぬ騎士となれるよう精進していきたいと思います。宜しくお願い致します」
そして1つ礼をして席に戻った。名前が違うのは『リラ・グライエル』だと明らかに女性名だからだ。一応昔から外ではこの名前を名乗っていた。
「次、ラーシュ」
アドニスが立ち上り前に向かった。
……そんなこんなで半分くらいの自己紹介が終わった。
名前を聞く限り、ここまではずっと貴族ばかりだった。
「次、クーゲル」
ブラッド先生の呼んだ名前に思わず振り返りそうになる。だがアドニスが隣に居るので変な反応は出来ない。
クーゲル⁉まさかカナン・クーゲルか⁉
ゲーム上では主人公の顔は公開されなかったので顔を見ても分からないが…。
緊張しながら前に出てきたクーゲルを見た。
「っ⁉……」
思わず出そうになった声を慌てて手で口を塞いで飲み込んだ。
焦げ茶色の髪に、同色の眼。この世界では反って珍しい地味な配色。そこそこ整った顔立だが、私はこの顔に見覚えがあった。
ゲームで、ではない。
顔を見ると同時に思い出されたのは、ヘッドライトと初心者マーク。
そう。クーゲルはあの憎い初心者マーク野郎と同じ顔をしていた。
「カナン・クーゲルです。実家は商家で、皆様程武芸は学んできていませんが、グライエル騎士団長の様な騎士を目指して精進していきたいと思います」
しかもカナン・クーゲルかよ!主人公かよ!
……いや、待てよ。
ゲームにおいて主人公は、必ずしもハッピーエンドになるとは限らない。勿論バッドエンドもある。
……ここで会ったが100年目‼カナン・クーゲルに恨みはないが、同じ顔をした前世の私の仇の代わりに貴様の人生バッドエンドに叩き落としてやる‼
学園生活初日。私は完全に悪役の様な目標を立てたのだった…。
更新頻度についてご意見ありがとうございますm(__)m
出来れば週2、最低でも週1は更新していきたいと思います。