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誕生日

褒められ惜しまれ倒した誕生日前夜祭が終わり、いよいよ誕生日当日を迎えた。


昨日とはうって変わって目の前にはダークグレーのタキシード。

グレー1色ではなく、襟と中のベストは黒で襟には金製の家紋のブローチに胸元には紅いチーフ。

差し色が効いてますね。こちらも気合いが入ってらっしゃる。


「リラ様、そろそろお仕度を」


ぼけーっと眺めていると、アザレに声を掛けられた。


「わかった」


返事をするとアザレはいそいそと着替えの準備をしていく。

今更だが、貴族は身の回りの事を自分ではほとんどしない。

もう慣れたけど、記憶が戻った当初は着替えだの風呂だのを人に手伝って貰うのは抵抗あったな。


アザレがてきぱきとタキシードに着替えさせていく。

一応髪も結い直す。昨日と違い、キツめに結って細い三つ編みにして後ろに垂らす。最後にチーフを直して、完成した。


鏡には、とても女だとは思えない父上と瓜二つの凛々しい美少年が写っていた。

……自分で美少年とか言うのもなんだが、実際美少年だから仕方ない。だってイケメンの父上に瓜二つで不細工って事はないだろう。


「こっちがいつも通りなんだけど、昨日と凄い違いだね…」

「そうですわね…。今日のリラ様も勿論素敵ですが、昨日のリラ様は本当に美しかった…」


うっとりと言うアザレ。

今日の私も昨日の私も貴女の仕事の成果ですよ。


しかし、美少年だが、全体的にダークカラーで纏められているからか、やっぱりなんか悪役っぽい。

黒髪に紅眼って勇者か魔王かっていったら断然魔王だよね。この配色。

これが広間にバーンと登場するんですよ。RPGなら間違いなく魔王登場シーンですよ。


「リラ?入って良いかしら?」


アホな事を考えていると、ドアの外から声を掛けられた。


「母上⁉」


私の声に反応し、素早くアザレがドアを開ける。


「あら。仕度は終わっているのね。やっぱりアザレは仕事が早いわね」

「ありがとうございます」


後ろ手にドアを押さえたままお辞儀をするアザレ。器用だなー。


「母上。私からご挨拶に伺わねばならないのにおいでいただき申し訳ありません」


慌てて近寄り頭を下げると、下げた頭をポンポンと叩かれる。


「親子なんだから堅苦しい事言わないの。頭を上げなさい。あと、立ち話もなんだから座ってお茶でもしましょう。まだ時間はあるしね」


母上はそう言うと、テーブルに向かう。

私も続くと、母上付きのメイドさんが椅子を引いてくれる。

どうやらアザレは既にお茶の準備に向かっていたらしい。


「しかし、どうしてリラはそんなに堅苦しくなっちゃったのかしら?旦那様もご夫人方も皆気さくなのに」


ふーっと溜め息をつく母上。そうですね。うちの皆も貴族とは思えない位気さくですが、貴女のお姉様も凄い気さくでしたよね。


「やっぱり長男として育てられたせいかしら…ねぇアザレ、どう思う?」


いつの間にかお茶と共に戻って来たアザレに尋ねる。


「そうですね。リラ様はいつもどこか張りつめていらっしゃる気が致します」


お茶を注ぎながら答える。

そうかなー?そんなつもりはなかったんだけどなー?


「リラは、このまま男として生きていくことに不満は無いの?」


昨日エリーゼお姉様にも同じようなことを言われた。皆が私の将来を心配してくれている。今の母上の言葉が、本当に最終確認だろう。


「不安はありますが…皆が思っているほど不満は無いです」


そう。ゲームの設定云々は関係無く、私は意外と男として生きていく事に不満はなかった。

何故なら、この世界の貴族の令嬢とは、政略結婚をし、子を産み、社交界では夫の立場を磐石なものとする為に立ち回る。

そんな存在なのだ。

母上の様に公爵令嬢で選ぶ側ならば良いが、伯爵令嬢では同等かより良い家に選んでもらえる様にするのが理想的だ。


うちの親達は政略結婚を強制するような事はないだろうが、やはり自分の立場を考えると、恋愛結婚は難しいだろう。

望まぬ相手と結婚し、一生を縛られて生きていくことになるのであれば、男として家を守り一生独身で生きていくのも大差無い。


それが私の結論だった。


「大丈夫ですよ。私は家の為に犠牲になっていると思った事はありません」


そう言って笑うと、母上はなんとも複雑な表情をした……。














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