表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/111

誕生日前日。

疲れた……。


全ての男性陣と踊り、心身ともに疲れ果てた私はひっそりと壁際に逃避した。

ひっそりと言っても出席者が少ないので、多分…いや確実に皆にバレているが。


立食式なので、壁際に置かれたテーブルに飲み物や軽食が用意されている。

ジュースとアルコールがある…。

可能ならワインでも飲みたいところだが、今は生憎未成年。ドリンク係のメイドさんにしぶしぶオレンジジュースを頼む。

今も昔もジュースはオレンジジュースが好きです。


注いでもらったオレンジジュースを一気飲みする。


「おかわり」


そう言って空のグラスを差し出すと、メイドさんの顔が引き吊っていた。

いや、だって緊張して喉乾いてたんだよ!そんな顔しないで!


「リラ様。普段でしたらともかく、今日位もっと令嬢らしく振る舞って下さい。そんなにお美しいのですから」


そう言って苦笑いでオレンジジュースのおかわりをくれるメイドさん。

なんだ。今日は褒め殺しの日か?


「いつもと見た目は変わってもリラはリラなのね」


呆れた声に振り返ると、金髪に紅眼の美女と、美少女が苦笑いを浮かべて立っていた。


「エリーゼお姉様、リンド」


長女のエリーゼお姉様と、5女のリンドだ。あと今アドニスと踊っている次女のトリアお姉様が第1夫人の娘達になる。

エリーゼお姉様は18歳、トリアお姉様は17歳でウィリアムと同じ学園に通っている。リンドは1つ下だ。


「ドレス良く似合っているわ。着心地はどう?」

「動き辛いよ。良く皆こんな格好でいられるよね」

「慣れれば何て事ないわよ。ねぇリンド」

「はい。リラお兄…お姉様ももっとドレスを着られたら良いのに。いつものお姉様も素敵ですが、今日のお姉様はもっと素敵です!」

「ありがとう。リンド」


優雅に微笑むお姉様と、キラキラした笑顔のリンド。

前世含め40オーバーの私からしたら可愛くてしかたない。


「それにしても、こんな美人を本当に騎士にするつもりなのかしら…」


お姉様が笑顔を曇らせる。明日正式にお披露目されてしまえば、私は嫡男として社交界にデビューする。

一生男として生きていくことになる。


「今からでも考えを改めてくれないかしら…」


考え込むお姉様。お姉様方の思惑としては、今日のパーティーで令嬢としての私をアピールし、お婆様の考えを改めさせたかったらしい。

ドレスのフィッティングの時に力説された。

実際皆ドレス姿の私をべた褒めしているし、勿体ないと嘆いているが…。

それだけだ。誰も騎士にするのをやめろと言う人はいない。


実は今までにもウィリアムが私を婚約者にと伯爵家に対してアピールをしてきた事もあった。

侯爵家から伯爵家へ、身分が上の者からの打診。

身分第一の貴族社会では断ることは難しい事態だったのだが…。

『リラは嫡男として騎士にする』

そのお婆様のたった一言で無かったことになったのだ。

まぁ、ウィリアムはまだ諦めていないようだが。


ここがゲームの世界だからか、予定調和の為に何か力でも働いているのか、どういうわけか私が騎士になるのは揺るがないらしい。


「私は今まで男として教育されて参りました。もう令嬢には成れませんよ」


「リラはそれで良いの?」


心配そうにお姉様が尋ねる。リンドも不安そうな顔をしている。


「覚悟は出来ています」


そう。ギャルゲーの攻略対象だとわかった時から最悪の事態は覚悟していた。その為の準備もしてきた。


明日、いよいよ私は本格的に男として生きていくことになる。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ