ネタバレ・1 ※主人公視点ではありません
クリスマスでした。メリークリスマスです。
※フリジア視点となります。
「で、フリジア。お前は何をしてきたんだ?」
リラを見送って直ぐ、お祖父様に問い掛けられた。
「あら、お祖父様。友人のお宅に遊びに行っていただけですわ?」
にっこり笑ってそう答えると、お祖父様は眉間に皺を寄せた。可愛い孫の言うことを信じられないのかしらこの爺は。
「リラをあまり面倒事に巻き込むんじゃないぞ?只でさえあの娘は普通に生きてくだけでも面倒な事になっとるんだからな」
完全に私が何か面倒事にリラを巻き込んだと思ってるわね。まぁ、間違ってないけれど。
「わかってますわ。だから未来の伴侶としてリランドを助けてあげようとしただけですわ」
どうせ騎士団から報告もあるだろうし、隠しても無駄だから肯定と取れる返事をする。嘘は言っていないし。
私の返事にお祖父様はため息を吐く。
「それなら良いが、お前との婚約も露払いには良いだろうが、もうちょっと何とかならなかったのかね」
「その言い方だと私との婚約も面倒事の様に聞こえます」
「儂からしたらお前もリラもストレイタも王子達も可愛い孫だからの、皆幸せになってほしいのだが」
聞き捨てならない言葉に嫌味を返すが、長年この国の貴族のトップに立ち続けた爺には効かなかったらしい。無視して自分の話を進めてくる。
「リラが4人に分裂でもしてくれたら簡単なんですけど」
「皆諦めが悪くて困る」
孫全員の共通点が諦めの悪さならそれはうちの血筋からの遺伝では?
「リラも、諦めてくれたら楽だと思うのですけど」
「まぁ、今は無理だろうなぁ」
「今は?」
無理だろうではなく、今は無理だろう?引っ掛かりを覚えてオウム返しに問う。
「好きな男でも出来れば変わるかもしれんだろう?今はそれ所じゃないんだろうが、まだ人生は長い。先の事は分からんからな」
「リラに好きな男なんて…」
出来る筈がない。とは言えなかった。
ラーシュ兄弟に王子達、お兄様。そして梟。
リラの周りには、役者が揃い過ぎている。
「分からんだろう?まぁ、さっきも言ったが儂は皆が幸せになってくれれば良いと思っておるから、リラがどんな選択をしてもそれで幸せになれるなら良いと思うがな」
「…そうですね」
私だって、リラには幸せになって欲しい。ただ、欲を言えば私と共に幸せになって欲しいのだ。
だが、リラの性格を考えるとこのままではそれも難しくなるかもしれない。
明日どこまで話をすれば良いかしら…?明日の話次第では、リラは今まで通りに私に接してはくれなくなるかもしれない。
まずは、リラが何をどこまで知っているかの確認からね。それとも、お祖父様のお誘いを利用して先延ばしにしてしまおうかしら?
「そうだ。何をしでかしてきたかは知らんが、面倒事になる前に報告しておくんだぞ?奴は執務室に居るからな」
誰に、等と言うまでもなく、根回しを推奨される。そうだった、騎士団が来る前に話を済ませておかなければ。ライラは兎も角、クリゾンテーム家には咎はない。特にカナリーまで巻き込まれたら可哀想だ。
「そうですね。では、失礼しますお祖父様」
淑女の礼をして、お父様の執務室に急いだ。
※ここからクーゲル視点となります。
途中まで上手くいっていたのになんでだ!?
ライラ・クリゾンテームでは役者が弱かったのか?だが、あの位の馬鹿でなければ利用しづらい。
本来であれば公爵を妬んだ有力貴族が黒幕だった。クリゾンテーム男爵は別にプリムヴェール公爵を妬んではいないし、3年目のイベントを強制的に2年目に発生させたのがダメだったのか?
いや、そもそも今回の誘拐は俺が言い出したのではない。ライラが企て、俺はそれを利用しようとしただけだ。
フリジアルートのイベントにおあつらえ向きだと。
その考えが最初から間違っていたと言われればその通りだ。だが、まず俺は首謀者ではない。クリゾンテーム家はクーゲル商会のお得意様。そこのご令嬢に強制的に協力を迫られたから断れなかった、協力するフリをして土壇場でフリジアを助けるつもりだったと訴えれば情状酌量の余地はあるだろう。
こんなルートのバッドエンドは見たことがない。と言うことはこのルートのバッドエンドはあり得ないと言うことだ。きっと大丈夫だ。上手く言い逃れられる。
拘束され乗せられた騎士団の馬車の中で、俺は無罪、せめて減刑される為の言い訳を必死で考えていた。
俺はこの時忘れていた。
リラ・グライエルがパルクールを知っていたこと、そして、リラ・グライエルが関わると全てが思い通りにならなかったことを。
いつも読んで下さる皆様ありがとうございますm(_ _)m