イベント?・10
申し訳ありません、4ヶ月も空けてしまいました…m(_ _)m
クーゲルバッドエンドでガッツポーズ取っててうっかり忘れそうになったけど、フリジア助けてないわ。梟とフリジアの鼠が居るとしても早く行ってやらなきゃ。
「奥にフリジアとライラ嬢が居る筈です。拘束したままクーゲルを先頭に入りましょう。誘拐した連中が油断するでしょうし」
「分かりました」
ロッドさんは私の提案に頷き、他の騎士達に指示を出す。
あっという間に後ろ手に拘束されたクーゲルは腕を掴まれ1人の騎士に立たされる。
その騎士はこちらを見て頷いた。よし。行けるな。
「では行きましょう」
私が声を掛けるとロッドさんは頷いた。ちなみにロッドさんを呼びに行ったザックはクーゲルを取り押さえてから私の横に控えている。ザックも一緒に突入する。
「あ、やっぱり待って下さい。クーゲルを後ろから抑えるのはザックに代わって下さい。ザックならクーゲル越しに見えても仲間の1人に思われるでしょう」
鎧を着けていないとは言え、騎士が居ると思われたら逃げられるかもしれない。
私の提案に騎士さんは頷いてザックと交代した。ごめん。最初に提案しとけば良かった。
クーゲルは手が使えないのでザックがドアノブに手を掛ける。こちらに目配せをするので1つ頷くと、そのままドアを開けた。
「何してるのよアンタ達!早くこの女をどうにかしてよ!」
室内に響き渡ったカン高い声はドアを開けたことでこちらにまで響いた。
「あ!アンタ何やってんのよ!?コイツらアンタの指示がないと何も出来ないって言うのよ!早くこの女をどうにかしてよ!」
入り口のクーゲルに気付いたのか今度の怒声はこちらに向かって響いた。
これで確定した。この声はライラ・クリゾンテームだ。クロだとは思っていたがここまでバカだとは。
事が済むまで被害者面で怯えたフリをしてれば良かったものを。これならクーゲルはライラに罪を着せてフリジアイベントを成功させる事も簡単だったろう。
私が動かなければ。
どう動くと目で問うザックに私を通す様に合図する。
避けたザックとクーゲルの横をすり抜け、私は部屋に入った。
「ライラ嬢。今のはどういう意味でしょう?」
目の前に現れた私を見てライラの目が見開かれる。
室内に視線を走らせる。部屋の隅で拘束されてるフリジアに、クーゲルの仲間は男3人。流石に口止めの事とか考えたらあんまり大人数は使えないか。ちなみにフリジアは軽く口元に笑みを浮かべている。この女狐が。
私もライラに向け軽く笑顔を浮かべる。
「貴女はどの女をどうして欲しいのですか?」
「なんでっ…」
なんでって。そりゃこれだけ杜撰な計画じゃあねぇ。
バレないと思ってる辺り流石バカ。
「梟」
ライラに答えず一言名を呼ぶ。
次の瞬間。室内に居た男達が崩れ落ちた。うわぁ。よわぁ。
何はともあれ制圧完了。
「さて、ライラ嬢。手荒な真似はしたくありませんので、大人しく投降して下さい」
「私は被害者ですっ!フリジア様と一緒に誘拐されたの!」
往生際が悪いな。今更そんなん通じると思ってんのか。
「では先程のこの女をどうにかしろと叫んでいたのはどういう事ですか?2回もそう叫んでましたね。全員聞いていますよ?」
「それはっ…」
「何故こんな真似をしたのです?男爵家が取り潰しになっても良いのですか?」
「っ!」
筆頭公爵家のプリムヴェール家に手出しなんてしたら男爵家なんて速攻潰される。そこまで考えたらちゃんと最後まで被害者面しとかないと。それが怖くてナタリエは私に助けを求めたんだろうから、そこは出来るだけフォローして上げようとは思うけど。
「私は家などどうでも良いのです!」
ライラが叫んだ。
「男爵家など弱い家柄なばかりに、フリジア様にリランド様を奪われて!貴族とは言え何も欲しいものは手に入らない!そんな家などどうなっても構いません!」
溢れんばかりの涙を浮かべ叫び続けるライラ。
「私はずっとリランド様をお慕いしていたのに!公爵家と言うだけでフリジア様に容易く奪われて!父上には諦めろと言われて!産まれた家が公爵家だったと言うだけでフリジア様は欲しいもの全てを手に入れられる!」
叫び続け遂にぼろぼろと涙を溢す。
「フリジア様さえ居なければ!リランド様は私を選んでくれる!」
力強い。だが痛々しい叫び声だった。
その叫びに、私は……。
アホかァァァァ!!!!!
全力でツッコミを入れていた。
フリジアが居なければ自分が選ばれるとかバカか!!!
言っちゃぁなんだが私に言い寄るご令嬢どんだけ居ると思ってんの!?悪いけどフリジアが居なくてもアンタは選ばんわ!もっと良い女いっぱい居るわ!
どんだけ自己評価高いの!?バカなの!?いや、バカだからこんなマネしたんだろうけど!
やっぱもっかい言わせて、アホかぁぁぁぁ!!
「申し訳ありません。私はフリジア以外を選ぶ事はありません」
溢れる涙を拭いもしないライラにそう告げた。
ライラの目が大きく見開かれる。
「例え貴女が公爵令嬢だったとしても、何も変わりません」
私は、私が私で在る為に。
フリジア以外は選べない。
『リランド』だけではなく、『リラ』をも愛してくれるフリジア以外は。
それに、仮にライラとフリジアの立場が逆転していたとしても、ライラは『リラ』をこれ程愛していただろうか?
彼女が求めるのは男の『リランド』なのだから。
「なんでっ…なんで…」
私の言葉にボロボロと涙を溢すライラ。
何故そんなに私に入れ込むのか。何故フリジアが居なければ自分が選ばれると思ったのか。
何故こんなバカなのか。マジで。
騎士団の皆さんも、ザックも恐らく梟達すらも呆れ返ったこのサムい空気の真ん中で、悲劇のヒロインよろしくライラは泣き崩れたのだった。
ちなみにフリジアは頬の内側の肉噛みながら必死で笑い堪えてました。
読んで下さる皆様ありがとうございますm(_ _)m
改めて、ちゃんと完結はさせますのでよろしければもうしばらくお付き合い下さい。