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イベント?・8

明けましておめでとうございます。

読んで下さる皆様今年もよろしくお願いいたします。

 うわっ埃すげぇ!

 咄嗟に服の袖で鼻と口を覆う。夏でも長袖スーツで良かった貴族の令息。


 建物内はかなり埃っぽかった。

 マスクが欲しいレベルだが、無いのでハンカチで鼻と口を押さえながら廊下を進む。


 やはりアパートだったのだろうか、途中いくつか部屋がある。使われなくなって相当経つのかドアは朽ちて無い物となっていたので中を覗きながら進む。

 この階に人の気配は無いから居ないだろうが、念の為。


 …やっぱり居ないな。


 全ての部屋に人が居ない事を確認して廊下突き当たりの階段を目指す。此処は外から見て2階建ての建物だった。


「…地下もあるのか」


 突き当たりは踊り場になっていて、階段は昇りと降りがあった。さて、フリジアは上か下か。


 まぁ、監禁するなら地下だろう。騒がれても声が外に漏れにくいし、実際下からは微かに人の気配もする。わざわざ探らなくても梟に聞けば良いんだけど、頼りっぱなしも癪だしちょっとは自分で頑張ろう。


「梟。先行してフリジアの所で待機。フリジアに危害が加えられそうになったら現場を制圧しろ。私を待たなくて良い。あと、そろそろザックを動かせ」


 姿は見えないが居るであろう梟に指示を出す。端から見たら完全に私の独り言だが、周りに人は居ないし気にしない。


「御意」


 小さく返事が帰ってきた。これでフリジアの安全は確保された。後は、私のやるべき事をやるだけだ。


 気配を消し、静かに階段を降りて行く。

 降りた先は廊下ではなくちょっとしたホールの様な広めの部屋だった。人の気配と声がする。

 中からは見えない位置で止まり、耳をすます。


「プラチナブロンドの令嬢は拘束しておけ。もう1人は拘束を解いて自由にしてやれ。脅すのは良いが、手は出すなよ」


 聞き慣れた声が聞こえる。前世みたいにスマホですぐ録音出来れば証拠になるのになぁ。無い物ねだりしても仕方ないし、すぐ現行犯で押さえるしかないか。

 残りの階段を駆け降り、部屋に入る。その場に残っていた指示をしていたであろう人物に声を掛ける。


「今の話はどういう事かな?クーゲル」


 そこに居たのはカナン・クーゲルだった。

 私の声に此方を振り向くクーゲル。


「プラチナブロンドの令嬢は拘束しておけ。もう1人の拘束は解いて自由にしてやれ。とは…誰と誰の事かな?」


 訊いてはみたが、フリジアとライラの事で間違いないだろう。クーゲルも共犯だろうとは思っていたが、予想通りで笑えてくる。


 恐らく誘拐の主犯はライラ。だがライラ1人でフリジアの誘拐なぞ出来るわけがない。必ず協力者が居る筈だった。

 それがクーゲル。怪しいとは思っていたが多分コイツは私と同じくこのゲームの記憶のある所謂転生者。記憶を元にライラのフリジア誘拐を利用してフリジアルートでの誘拐イベントを起こそうとしたのではないだろうか?


 仲間か手下か知らんがそいつらにフリジアに手を出すなと釘を刺したのはバッドエンドを回避する為。フリジアを拘束したままでライラを自由にしたのはフリジアにライラが主犯だと印象付ける為。後はタイミングを見計らって助けに入るつもりだったのだろう。


 たとえライラがクーゲルが共犯だと訴えても証拠はないのだろう。恐らく外の見張りもこの先に居るであろう誘拐犯も上手く逃がして口止めをして、自分は上手く言い逃れてフリジアを助けたヒーローにでもなるつもりだったか。


「グライエル様。どうして此処に?」


 クーゲルは驚いた顔で問い掛けてくる。そんなに私が此処に居ることが想定外なのか。


 甘いんだよ。


 甘過ぎて笑いが込み上げてくる。勿論堪えているけれど。

 その甘さのお陰で、念願叶ってコイツをバッドエンドに叩き落としてやれる。


「質問に質問で返すのはどうかと思うが。まず私の質問に答えるのが先じゃないか?答えたら私も答えよう」


 私の言葉にクーゲルは一瞬怯む。さて、どんな言い訳をしてくるか。


「聞き込みで、此処にお二人らしきご令嬢が連れ込まれたと聞いて…」

「そうか。それで、此処で誰かに指示をしていたのか。状況がおかしいな」


 成立していない言い訳を一蹴する。


「それに、なんでお前は入り口の2人に止められなかったんだ?」


 あのヤンキー2人はクーゲルを一瞥したが止めなかった。それはクーゲルが雇い主だからだろう。


「そんな嘘で騙せると思ってるのか?誰を相手にしてるか考えろ。私を舐めてるのか?」


 まぁ、私も梟のお陰で楽に此処に辿り着けたんだから私の力ってか梟の力ですけどね!ハッタリも大切ですよ!


「……」

「ちゃんと説明してくれるか?クーゲル」


 俯き口を閉ざしたクーゲルに向かって1歩詰め寄る。


 次の瞬間。


 私は後ろに跳んだ。


 私が居た空間を2振りのダガーが空振りする。


 クーゲルは私が詰め寄った瞬間に間合いを詰め隠し持っていたダガーを振り切った。


 そして隠す気もない殺意が溢れている。


「それが答えか」


 お前が単純で良かったよ。


 追撃をかけてくるクーゲルに、私は込み上げる笑いを噛み殺すのに必死だった…。















 

お付き合い下さっている皆様ありがとうございます。

今年で完結までいけたらなと思っています。どうぞ今年もお付き合い下さいm(_ _)m

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