水島 士郎という青年。
士郎視点。
僕、湯藤 士郎 高校二年生16歳は今クラスメイトと共に海水浴にきている。
一緒に来ている全員と仲が良いというわけではないが、その中の一人の炎堂 寛人と幼稚園に入る前からの大親友だったので彼に無理やり連れていかれたのである。僕はそんなに――いや、かなり人好きが悪く友人がかなり少ないのである。それにたいして、寛人は何かの宗教の主神かのように周りに人が寄ってき好かれているのである。
しかし、彼自身は人がそんなに好きではなく僕か家族以外に親しい人間はいない、彼曰く、僕と一緒にいれればそれでいいとかいっているので友人が少ない僕にとっては有難いことこの上ない。
「おーーい、しろーーー!こっちに来て泳ごうぜ!!お前、水が大好きなんだろ!!!」
そう、何を隠そう僕は大の水好きなのである。何故そんなに水が好きかというと、旅が趣味の父に連れられてエジプトに行った時に、僕だけ砂漠の中に遭難してしまった事があったのだ。その時、一緒に来ていた寛人は僕がいなくなったことにいち早く気づき、僕が遭難したかもしれないと聞くとショックで気を失ったらしい。大人ですら水分補給なしで歩いていれば危ういというのに、当時小学低学年だった僕は当然すぐに力尽きあわや脱水症状で死んでしまうところに、突然の大雨が降り、なんとか持ち直した僕は近くにあった洞窟に避難して数時間後に父たちに発見され救助されたのだ。
それ以来、僕は水を命の恩人と思い、水についてひたすら知識を集め、全国中の温泉や山水を巡り今や専門家と同等かそれ以上の知識を持ち合わせているのだ。ちなみに寛人はいつも僕に付いてきていて前に何故僕に付いてきてきてくれるのかと聞いたら
「お、おれは火に興味があるからしろについていってるんだよ。ほ、ほら、温泉って水も大事だけどその温度を調節する火があってこそのおんせんだとおもうんだよねっ。天然の温泉も火山の地熱から温まってるから火に関連してるから、いや、もちろん、しろの事が一番だからついていってるんだよ?というか、しろと温泉と火みたいな関係になりたいっていうか………」と最後の方があまりよく聞き取れなかったが寛人が退屈していなさそうだったのでよしとしておいたのだ。
(そういえば、あの頃から寛人は四六時中僕と一緒にいるようになったような...)
「おーーい、しろ!聞こえてるのか!? まさか、日の光にやられて気を失ってるんじゃ.....!?おい、しろ!!!だいじょうb「大丈夫だよ、寛人。少し考え事してただけだから。」 なんだぁ、もう心配したじゃないか。」
寛人は少し僕に過保護すぎるのだ。
朝、学校に行くときは僕を起こしにきてくれるし(寛人の家は僕の家のお向かいで親の代から仲がいいらしい)、昼は手作りの弁当を持ってきてくれ、下校は一緒に帰ってくれ、親の帰りが遅い僕のために親が返ってくるまで僕の家にいてくれたまにお泊りをしてくれたりと寛人は優しいやつなのだ。よく、顔を真っ赤にして何を言っているかわからない時と目に光が宿っていないような怖い顔をするが完璧な人間よりも欠点がある方がいいので特に気にしてはいない。
寛人は「向こうで泳いで遊ぼうぜ!」と僕の腕をひっぱり海のほうへ走っていく。
そういえば、あれだけ父の付き添いで世界中を飛び回り、水が好きだというのに海で泳いだことはなかったなと思い僕は転ばないよう寛人にひっぱられながらも海の方へ走っていく。
初めての海。
そう、海で泳ぐのは初めてだったのだ。
僕は、水に関する知識として海に関する知識も豊富だったのだ。
だから、油断しっきていたのだ。
僕は知らなかった、いくら知識があっても本当の海の恐怖というものを。
海で遊んで日が沈みはじめ、疲れていた僕は陸へあがろうとした、しかし突然足に強い痛みを感じ海の中へ沈んでいく。
「がぼっ・・・ひ・・・・ろとっ・・・・・たすけっ・・・・・・・・・・・!!!!」
僕より少し前を泳いでいた寛人に助けを呼ぼうとしたが疲れ切った身体ではそれもかなわず、すぐに沈んでいってしまう。
怖い
心の奥深くから湧き出る背筋が凍るゾッとするような恐怖。
これが、海の、死の恐怖。
(ああ、僕はここで死んじゃうのか。いやだなぁ、もっと水の事知りたかったなぁ、でも水の中で死ねるならそれはそれでいいかな。海の中は怖くて冷たいけど何か落ち着くなぁまるで・・・・・・・・・・。)
僕が目を閉じる前に見た光景は、必死の形相で僕の手を伸ばす寛人の姿だった。
やっぱり、寛人は優しいな。そう思い目を閉じた意識が遠のいた瞬間。
突然、水の奥深くなのに強い光を感じ僕の意識はまるで強い力にひっぱられた様に戻ってきて、水の感触がなくなった。
わけが分からず目をひらいた僕に飛び込んできた光景は―――――
前に使っていたアカウントが使えなくなったのでこちらに引っ越しました。