合流
ナナは私よりも一時間ほど遅れて集合場所に到着した。集合場所は決めていたが集合時間までは特に決めていなかった。事が済んだら集合場所に行く、ただそれだけだった。ここからだと診療所よりも養鶏場の方が遠い、だから私のほうが早く用事を済ませるし、早く集合場所にたどり着く事だろう。だからナナが遅れている事自体は大した心配要素にならなかった。例え私よりも大幅に遅れても不思議にはならない。どうせ慣れていないだろう鶏の扱いだ。ナナがワーギャーと文句を叫びながら鶏を追いかけている光景が余裕の余裕で目に浮かぶ。そしてやっとの思いで鶏を捕まえるのだ。ナナが遅れているのはそんな騒がしい理由に決まっている。そう思っていた。
「お帰りなさ……い」
ナナの疲れた顔をみて思わず出迎えの言葉が濁った。持っている麻袋は蠢いており、鳴き声から察するに中身は鶏……しかも一匹ではないだろう。慣れない鶏相手によく頑張ったものだ。だけどナナの疲れ様を見る限り、鶏を追い掛け回しただけとは思えない、肉体的な疲労だけではなく精神的な疲労を感じるのだ。
「はぁ、流石に疲れたわねぇ」
集合場所である木の根元までフラフラと歩いて行ったと思うとそこに座り込んでしまった。疲れた……それは彼女の今の状態を見れば明らかだ。私の実家、養鶏場で何かが起こったのは明らかだ。だけど聞いたところでナナが素直に答えてくれるとは思っていない。今までのナナを見てみればすぐに分かることだ。
「ナナさん、右手が……」
ナナの右手を見ればそこには血がついていた。量からして結構な量、しかしそれにもかかわらずナナはタオルを巻くだとかの止血処置を全く行っていなかった。
「大丈夫、鶏に突っつかれただけよ」
鶏に突っつかれたにしては血だらけな気がするが、よくよく見てみると血は流れているというよりも、血が手に付いているという印象を受ける。既に血は止まっているのだろうか?ナナはポケットに入れていたハンカチで手にベットリ張り付いた血を拭き取る。血が止まっているのは確かなようで新たに血が吹き出すようなことはなかった。拭き終わったハンカチは例の巨大リュックの脇にあるポケットに入れた。
「さてと、休憩はもう終了にしましょう」
今さっき休憩を始めたばかりだというのにナナはもう立ち上がっていた。五分も休んでいないのではないだろうか?確かに今は急ぐべき時なのかもしれない、私も行く道は早足で移動した。私だって今すぐにでも帰ってフォンを救いたい。だけど今のナナに帰る体力が残されているのか心配だった。
「もう大丈夫なのですか?」
ナナの足元はフラフラだ。私は思わずナナのもとに駆け寄って肩を貸そうと寄り添う、だけどナナの左手で払われてしまった。ペシリと軽い一発、全く痛くなかった。本人に距離されてしまうと私はどうする事もできなかった。だけどやっぱり今の状態では心配で……だから私はナナの五歩後ろを歩いた。歩きながらナナの背中をただ見守った。




