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 吸血鬼が続々と集合場所である私の元に集まってきている。フォンやナナの言うとおり、ただ座っているだけ、それだけで吸血鬼が集まってくるのだ。吸血鬼は知恵を求める。ナナの言っていたあの言葉はおそらく事実だ。

 集まってきた吸血鬼の内、数体は何かしら物を持ち帰ってきていた。内容はフォンが言っていたように食料品が多いようだ。日持ちする缶詰もあるが生物もある。食料品の他には雑貨、衣類、もはや何に使うのか分からないパーツ……バラバラだった。

「おや?リーダーのお二人さんも帰還ね」

前方に吸血鬼軍団、その先頭にはフォウとメイだ。吸血鬼の数は……もともと正確な数を把握していなかったが増えているわけでも減っているわけでもないと思う。

「あなたの目的、ワクチンは無事に確保できたかしら?」

「ワクチンは確保できた。しかし……」

フォンは明らかに歯切れが悪い、一体サンコ村で何が起こったのだろうか?共に村に入ったメイが何か知っているだろうと思っていたが彼女は吸血鬼手に入れたものを整理していた。多分何も知らない……

「ナナ、コイツの顔に覚えはないか?」

フォンはナナに一枚の紙を手渡した。内容はなんだろうか?私もナナの後ろから紙を覗き込んでみた所これは手配書のようだ。写真に写っているのは女性のように見えるが……私には見覚えない。

「知らない人ね……だけどフォウが言いたいことはわかる。人間の特徴を色濃く残しているけど彼女は……半人半鬼である可能性が高いわね」

その写真は肩から上を写し、そして不鮮明なものであった。顔つきからして女性と思われるがその右側の頬から首全体にかけてアザのようなものがある。よく写っていないがまさかこれは吸血鬼の特徴である青い皮膚、もしそうだとしたら彼女は半人半鬼ということになる。

「罪状は窃盗ねえ、えっと詳細は……“吸血鬼が町に入り込んだ混乱に乗じて窃盗を行った疑い”か、まるであなたたちね」

戦利品の整理が終わったメイも話の輪の中に入り込んできた。ナナから手配書を受け取ると一瞬凍りついた。そしてその直後「一瞬私かと思った」と安心していた。

「半人半鬼は珍しい事例と聞いたが……これで俺とメイにハン、そしてナナが以前、出会ったことがある半人半鬼にこの手配書の女の五人になる。俺が把握しているだけでもこれだけの数だ、珍しいにしては多い気がする」

珍しい、だけど珍しいにしては多い、単に私たちは半人半鬼の集まりだから半人半鬼の情報が集まりやすいとも考えられるが……

「こうは考えられないかしら?ここ数ヶ月で半人半鬼が増加したとね……」

吸血鬼の専門家、ナナの見解、彼女の推測はこの場において最も現実に近いと言える。

「半人半鬼が増えた?ということは吸血鬼の被害が増えたってことになるが……まさか俺たちが!?」

吸血鬼の被害、確かにここ最近増えている。そう、他でもない自分自身の手で吸血鬼の被害を増やしている……吸血鬼の被害が増えれば吸血鬼も増える。そして“珍しい事例”が起きることも多くなる。それも吸血鬼を率いて略奪行為を行っているのは私たちだけではない、この手配書の女

、文面には“吸血鬼騒動に乗じて窃盗”としか書かれていないが私たちと同様、吸血鬼を操っている可能性が高い。

「複数のリーダーが現れて各地で暴れ始めた。そして吸血鬼が増えたし半人半鬼も増えた。それも事実でしょう、でも単純な吸血鬼被害は二年前の方が多い……」

「じゃあ何が原因よ?」

メイは持っていた手配書を丸めてポケットに入れた。声が少し震えているのが気にかかった。

「ワクチンよ、吸血鬼用のワクチンが半人半鬼を増やす事になった。あのワクチン、西の国で二年前に作られた物だけど当時は吸血鬼の被害が深刻だったから急ピッチで実用化したのよね」

私にはそれのどこに問題があるのか理解できなかった。とぼけた顔を見る限りメイもその様子だ。私の常識としはせっかくできたんだから使うべきとも思うのだがそんな私は子供だろうか?

「薬やワクチンってのはただ作ればいい訳じゃない」

フォンは顎に指を当て渋い声付きで語りはじめた。フォンは半人半鬼になる前は製薬会社にでも勤めていたのだろうか?

「作られたものが本当に効くのか、副作用はないのか、詳細な成分分析、動物実験や臨床実験の末に実用化される。物にもよるが何ヶ月、何年とかかる場合もある」

そんな長い時間をかけるべき新薬、それがあのワクチンの時はあまり時間をかけなかった。多くの実験や多くの調査を総括して決めるべき事を少ない事例のみで実用化した。

「まさかロクに調査をしなかった事じゃないでしょうね?」

いつの間にかメイは前のめりになっていた。怒っていると見えるがいったい誰に対して怒っているのか……やり場はわからない。

「そうね、ワクチンが中途半端に作用してしまう事がある。そのことに気づかないまま実用化してしまった」

最近、半人半鬼が増えた理由……それは二つある。一つは半人半鬼が吸血鬼を引き連れて行う略奪行為、そしてもう一つは研究段階だったワクチンの無理な実用化……それが原因だった。

「フォン、何処へ行くの?」

フォンが突然立ち上がりそして隠れ場所である坑道を出ていこうとする。メイは慌てて立ち上がりフォンを追いかけようとする。慌てたせいで足がもつれていた。

「お前はここで待ってろ……風に当たってくる」

少し震えるような声でむしろ一人で居させるほうが不安に感じられた。だけど彼の声は全てを拒否するもので彼と親しいはずのメイもその場で立ち止まるしかなかった。

「それだったらいいけど……」

過ぎ去って行くフォンの背中はそれを追いかけていく吸血鬼の姿ですぐに見えなくなった。メイにはついてくるなと言っておいて吸血鬼は大丈夫らしい。メイは心配そうな声とセリフを言っている割に頬は膨らんでいる。まさか吸血鬼にヤキモチしている訳ではないだろうか?


 それからはしばし無言の自由時間、別に誰が「今から自由時間です」と言ったわけではない、なんとなーくそんな感じになっただけだ。自由時間なわけなので自由にしていいわけなのだが私もナナもメイも何もせずにただボケーとフォンの帰りを待つだけだった。

「今、帰った」

ついにフォンが帰ってきた。ボケーとしていたが何もなかったかのように私たちの自由時間に参加してきた。もちろんフォンも自由時間に何をするというわけでもない、だからやたらと静かな時間となった。

「あ……」

そうだ静か、静かすぎるんだ。だからか私にはその違和感にすぐ気がついた。

「フォン、そういえば吸血鬼たちは?」

そう、フォンがここを去る時、彼の後ろには吸血鬼達がついていった。それなのに彼が帰ってきた時には吸血鬼がいないのである。

「ああ、吸血鬼か……」

フォンは顔を上げた。別に誰を見ているわけでもないし何を見ているわけでもない、どこかここではない遠くの場所を見ていた。

「吸血鬼は解散させた」

その場が一瞬で凍りついた。

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