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襲撃の夜Ⅰ

 昨日は夕方から深夜にかけて吸血鬼を引き連れて移動、場所はサンコ村である。その日は移動だけで深夜になってしまったため近くの廃坑にこもり吸血鬼たちを太陽から守った。

 再び太陽が上り、そして沈む。時は既に夕刻となり人間の時間は終わる。ここからは吸血鬼たちの時間だ。

 この吸血鬼の軍団、初めこそは不気味感じられた。今はワクチンがあるからいいとは言え吸血鬼の被害は”西の国”程ではないが確実にある。ケイラン村でも被害が出たことはあった。だから吸血鬼は怖い、そのイメージが脳裏に焼きついていた。吸血鬼は半人半鬼を仲間と思っているのか襲う事はない、ましてやここにいる吸血鬼はフォンやメイが集めてきた戦士のような存在だ。私を襲うことはないし敵ではない、むしろ味方だ。だけど一度、焼き付いた恐怖心は未だ私の心の中にある。

 最初はこの恐怖心は簡単には取り払うことはできないと思っていた。だけれども意外な事にこの吸血鬼の大群が自分の後ろを付いてくるという事に慣れてしまっていた。あまりの量に感覚が狂ったのだろうか?それとも自分自身が吸血鬼のような存在になったからだろうか?それは分からない。ただ移動中、吸血鬼達にある違和感を覚えた。フォンやメイの後ろを付いてきていると思っていた吸血鬼だがどうも私の後を付いてきているような気がしたのだ。気のせいかもしれないのだが……ただ私自身も吸血鬼を扱えてしまうのかと半人半鬼の性質が怖くなった。

「では最後の打ち合わせだ」

フォンがそう言って立ち上がった。夜型のメイもちょうど起きだし、隣にはナナの姿もある。更に彼らの後ろには集めてきた吸血鬼の姿もウジャウジャといた。

「吸血鬼には手振り一つで村を襲い、そして物や人を奪ってくるように仕込んである。だが流石に吸血鬼の頭では細かい指示は理解できない、つまり奪ってくる物は完全にランダムだ。食料品を好んで持ってくるようだが、指示したものを持ってくることはできない」

だけど今回は食料品を得ればいいというわけではない、ワクチンを手に入れなければならないが吸血鬼に頼ってはワクチンを手に入れることはできない、となると手段は一つだ。

「メイが吸血鬼を村に放つ、いつもどおり彼らには目に付いたものを持ってきてもらう、だがそれはあくまで陽動だ。本命は俺が数匹の吸血鬼を引き連れてワクチンを頂く」

フォンとメイ、彼らは私より先輩だし私とは違って吸血鬼を操ることができる。二人が前に出る、適材適所と言う言葉があるのならそれは正しい事だけれども私にはやることがない……役に立たない、残念ではあるけれども悔しさもあって安心でもあった。

「ハン、そう残念がるなよ、君にも役目はある」

私の気持ちは顔に出ていたのかフォンは残念がるなよと言った。

「何を言っているのよフォン、ハンは安心しているのよ」

メイまで私の心を読んでいた。私ってここまで気持ちが前に出てしまう人だっただろうか?

「フォンもメイも惜しい線行っているけど違うわね。両方よ両方!」

ナナの場合は私のせいじゃない、彼女はカンが鋭いだけだ。別に私が読まれやすいわけじゃない。

「ともかく、ハンお前はここに待機だ。吸血鬼の集合場所だな」

「私に務まるの?」

吸血鬼の集合場所、それはつまり吸血鬼を集めるということだ。そりゃ吸血鬼を村に放つよりは簡単だけど務まるだろうか?

「務まるさ、君はそこにいるだけでいい」

そういってフォンは歩き始めた。少しだけ出遅れてメイ、彼女は小走りでフォンの横まで駆け寄ると歩幅を合わせて歩き始めた。そしてその二人の後ろをゾロゾロとついて行くのは数十匹の吸血鬼、彼らもまた素直にリーダーの後ろをついて行く、私は待つだけだ。

「さてと、では私も見物と行こうかしらね……」

不敵見な笑みを浮かべるのはナナ、見物すると言う割には動く事をしなかった。ただ洞窟の中で退屈そうに貧乏ゆすりをしながら体育座りをしているのだ。見物、という割には彼女の視界はすべてトンネルの闇の中だ。吸血鬼軍団を見物しているようには思えない、という事は何を見物しているのだろうか?今、この廃坑の中で彼女が興味を引きそうなもの……私しかいない、吸血鬼たちが帰ってくるまでの間、私はナナの見世物になるようだ。

「私、なんだか吸血鬼の集め役を任されちゃったけど大丈夫かな?」

わざとナナに聞こえるように独り言を言ってみた。

「大丈夫よ、あなたなら出来るわ」

そうナナは言った。ということは出来てしまうのである。吸血鬼を従えることが出来てしまう、フォンやメイと同じようにだ。

「吸血鬼は群れる生き物ではないけど知恵のある仲間についてく、そういう生き物だからね」

吸血鬼から見たら私は知恵のある吸血鬼のようだった。知恵、生きていくためには必ずしも必要とは限らないもの、だけど有ると無いでは生きていく効率が違いすぎる。知恵がある方がより効率よく生きていける。吸血鬼はそう感じているらしい。

「フォンの言うとおりそこにいるだけでいいわ、吸血鬼にはある程度教え込んでいるみたいだし物を盗ってきたら半人半鬼の元に集まるわよ」

フォンが吸血鬼に物事を教え込む、私からすれば何故そのような事ができたのか不思議だ。だけど吸血鬼の専門家ナナは全く驚いておらずいたって普通の事と認識している。

 ナナがここに残った理由、私を見物する理由だがもしかして私の吸血鬼リーダーとしてのデビューを単に見たかっただけなのではないだろうかと思った。彼女の興味は今、そこにあるんだ。

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