6『勧誘』
コイツ…できる!!
声に出さずに心で言った。いや、表情に出てたかな。
ハーエネというのはハームフルエネミー、つまり有害な生命体のことだ。俺達『ハンター』は、これを駆除することを仕事としている。このハーエネ、思ったより強い。ハーエネには『コア』と呼ばれる核部分があって、これを傷つけてやると生命活動を停止する。なかなか簡単に聞こえるが、そういうものでもない。これは逆に言えばコアを攻撃できない限り倒すことはできないということだ。ハーエネは実に多様な動きをする。同種でも、個体によってカチカチした動きをするものやら、うねうねした動きのもの、更には超機敏なものまである。そんな中コアを狙って攻撃することは非常に困難なのだ。俺でも最下級のハーエネ、クロボーを楽に倒せるようになるまでどれほどかかったことか。
ところがこの地球人はどうだ。
クロボー3体を自力で倒した!それも、この世界に来たばっかりで、しかも殺傷能力があるかどうかもわからないような木の枝を使って!!絶対にただものではない。地球でどのような死闘を繰り広げてきたのか…。
「おい、お前…何者だ?」
「あれ、まだ名乗ってませんでしたっけ、大久保雨月といいます」
「あ、『おおくぼうげつ』ね、わかった。俺の名前はバズー・フォンホルンってんだって違ああああああう!!!確かに名前は聞いてなかったけど違う!そういうことを訊いてるんじゃない!」
「バズーさんですね、わかりました」
「聞いてんのかお前。…聞いてたけど」
「はぁ…」
「いやだからね、名前じゃなくてさ。お前地球では何してたの?」
「何って…学生してました」
「嘘だろ」
「このタイミングで嘘つく理由ないですよってかどこが嘘なんですか」
「だってここ来たばっかりでクロボーを自力で3体も倒す奴なんて聞いたことねぇよ」
「知らないですよ…」
コイツ…本能で倒したやつか。いやしかし強過ぎるだろ…。
…待てよ、コイツなら、あるいは…。
「オイ、お前」
「名前教えたのにお前ってのやめてくださいよ。雨月でいいです」
「何その若干上から目線。まぁいいわ、雨月よ。お前、これからどうすんの?」
「え…そりゃ帰る方法を探しまs」
「行くとこないならこのギルドに所属しないか?」
「バズーさんこそ話聞いてくださいよ」
「お前の力が必要だ」
「は?嫌ですよ」
「あっさり断らないでっ!」
「僕は地球に帰る方法を探します。なんかいろいろ教えてくれてありがとうございましたそしてさようなら」
「待てええええええ!!話は終わってないだろおおおおお」
「終わりました」
「終わってないって!ちょっと君冷たいよ!」
「うるさいな…僕は行くって言ってるでしょ!?」
「そんな怒るなよ…。行くってどこにだ?あては無いだろうが」
「…」
なんか俺自分の意見を押し付けてる?ちょっと罪悪感的なものが…しかしここら一帯の平和もかかっているのだ。ここでは退けない。
「俺の意見を押し通し過ぎてるかもしれないが、聞いてくれ。行くあてがないならこのギルド02に所属して、少しだけこの世界のことを学んで行ったらいいと思うんだ。未だ成し遂げられていないことをするんだ、少しでも知識があったほうがいいだろう?それにこの世界は安全じゃない。エネミーに対する戦術も必要だろ」
「さっきから僕へのメリットばかりだけど…それはそっちにもメリットがあることですか?」
「ああ、ひとつな。最近ここいらに出現したハーエネの退治に協力してほしい」
「僕が!?できるわけないでしょ!!」
「さっきも言ったろ。ここへ来たばっかりのやつがクロボー3体を自力で倒せるなんて聞いたことがねぇ。お前は強い」
「本当にそれだけ…?」
「あぁ、俺が保証しよう。お前がいつか地球に帰る為に必要な知識を与えてやる!」
「…しょうがないですね、わかりました。協力します」
「だからその若干上から目線をやめていただきたい…」
久しぶりの更新です!
二人のやりとりを楽しんでいただければ幸いです。
次回もお楽しみに!