3.捜査開始
ガールズバー・岬。
ここで店長の皆川 康志が何者かに殺害されるという事件が起こった。
「角田さん、山田さん、真倉さん、伊藤さん、あなた方四人の中で最後に店を出たのはどなたですか?」
私が四人にそう訊ねたところ、真倉が最後に店を出たという事実が分かった。
となると、怪しいのは真倉だが、真倉が出た後に別の第三者がやって来たということも考えられるか……。
「鑑識さん、もう一度確認しますが、害者の死亡推定時刻は何時ですか?」
「午前六時です」
午前六時ということは……。
「真倉さん、貴方が店を出たのは何時頃ですか?」
「閉店作業のお手伝いをしてからですから……、四時ですね。お客様がいなくなったので早めに閉めました」
「そうですか。──角田さん、犯行時刻のアリバイをお伺いしてもよろしいですか?」
「刑事さんは私を疑ってるんですか?」
「いえ、これは関係者全員に訊くことなんですよ」
「そうですか? その時間は、帰宅途中でした」
「それを証明出来る方は?」
「綾子、一緒に帰ったわよね?」
私は伊藤を見た。
「帰宅中は一緒でしたよ」
「そうですか」
二人のアリバイは証明出来る、と。
「山田さん、貴方は何をされていましたか?」
「それって答えなくてはいけないんですか?」
「どこで何をしていたんですか?」
「家で風呂に入ってました」
「そうですか。真倉さんは?」
「私も帰宅中でした。そう言えば、店を出た時、香奈子を見かけたような、見かけなかったような……」
はっきりしろよ。
「鮫島さん、貴方、犯行時刻の午前六時、どちらにいらっしゃいましたか?」
「刑事さんは私を?」
「いえ、そう言う訳では……。ただ、怪しいものは全て調べるというのが刑事でして、貴方が犯人だなんていうことは、ありません」
「そうですか。私は確かに、閉店業務の後、店長に会いました。早苗に目撃されたのも事実です」
「どうして店長にお会いされたんですか?」
「給料を受け取りに行ったんです」
「え? 給料日は月末の筈じゃ?」
「ああ、それは、昨日が最後の仕事でしたから」
「と、言いますと?」
「私、結婚することになったんです」
「だ、だだ、誰と!?」
「こんな公の場でそれを言えと言うんですか!?」
「あ、ごめんなさい」
「まあ、いいわ。記憶にないみたいだから教えます。貴方とですよ、河野 裕一巡査部長さん」
私は裕一の記憶を読み取る。確かに裕一は香奈子と婚約しているようだ。
「そ、そうだったね。三途の川に記憶を置き忘れちゃったのかな」
「三途の川? 裕一さん、何かあったんですか?」
「ああ、ちょっと毒殺されちゃってね。息吹き返したけど……。それはそうと、店を出たのは何時頃?」
「給料をいただいただけだから、一分もしなかったですね」
「店を出る時は被害者はまだ生きてた?」
「ええ……」
香奈子の次に誰か来たのか?
「先輩」
荻島が私の肩を叩く。
「何?」
「あれ」
荻島が指を差した。その先には防犯カメラがあった。
防犯カメラ? あったか?
「鮫島さん、あれはいつから?」
「今気付いたんですか? 刑事だから初めて来たときから知ってるのかと思った」
「鮫島さん、カメラの映像を提出していただけますか?」
「分かりました」
香奈子がスタフルームへと入っていった。
「これが防犯カメラの映像のデータです」
香奈子がスタッフルームから出て来るなり、SDカードを渡してきた。
「ご協力感謝します」
私はSDカードをしまう。
「荻島くん、署に戻るよ」
「はい」
私と荻島は署に戻った。