事の始まり・・・
〈嵩峰学園……それは全ての生徒達の欲望を満たす所! 来たれ嵩峰学園!〉
女の子がポスターを見る。なかなか魅力的な女の子だショートカットそして白いうなじ、整った顔、活発的な印象がある、しかし今は表情がやや暗い、その原因はこのポスターに在った。
嵩峰学園のポスターだ。
嵩峰学園とは一昨年に出来たばかりの新校で、出来た年の倍率は四倍、別に就職率が良いとか、そんなのは無い(出来たばかりだから当然だが)。
では何故こんなに人気が有るかと言うと、それは学校自体の風習、そして制服の見栄えによる物だった。
当初のキャッチフレーズはと言うと、
〈皆で作ろう嵩峰学園! 我が校は生徒の自主性に焦点を合わせています。〉
だった(他にも書いてあったが忘れた)。
つまり、生徒の自治権を認めていたのだ。之によって修学旅行やその他諸々の諸行事も自由に決められる、それで倍率が二倍に増えた(初めは、宇宙旅行も視野にあったらしい、当然、無理だが)。
そして、残りはと言うと、さっき言った通り制服による物だった。
どこぞの、有名メーカーと設計者が作った特注品は、女子生徒の心を見事に掴んだ訳だ(それを間近で見ようという男子の心も)。
そして今のキャッチフレーズはこれである、一体どう言う路線で進んだのかは測り難いが、自治性は見失われて無いようだ。
――きっとキャッチフレーズを無視できる程の物が有るのだろう、でなければ、倍率が三倍を超えるなんて事がある筈が無い。
少女は心の中にそう呟いた、その時彼女を呼ぶ声がした。
声が聞こえる方を見ると男がこっちに向かって走ってきた。ここから見ただけでも背の高い事が判る、確りした身体、どちらかと言うと四角い顔、しかし決してブ男ではない、むしろスポーツマン的な雰囲気がある(実際そうなのだが)。少女はそれが誰だかすぐ解った。
「泉斗!」
「結、ここに居たのか」
男――『千葉 泉斗』が言った。
「うん、どうしたの泉斗? そんなに息切らして?」
少女――『園宮 結』が答えた。
一方、泉斗はと言うと、乱れた息を整えてからおもむろに話し出した。
「どうしたの? って、お前な今日は先生から合格発表が言い渡されるんだろうが、教室の前で待っていたと思ってたら、フラーっと、どこか行っちまうし、更にその直ぐ後先生がお前の名前呼ぶから、慌てて探しに来たって訳よ」
結は相変わらず、ポケーとしている。
「……お前まさか忘れてた?」
結が、はっと何かに気付く。
「あーー! 忘れてたー」
泉斗がぼやく、ヤッパリ……と。
「ほら、早く行くよ泉斗」
言った後には既に教室に向かって走っていた。
「おい、待てよ」
泉斗も慌ててついて行く。
これから起こる波乱万丈な学園生活に向かって……。
三月二十九日、嵩峰学園入学式。
この学校の入学式は他の学校より早い。
――入学式……退屈な物だ……、特にあの校長の話しなど訳が解らん、何故この学校の方針を話していたはずが効果的な銀行強盗の話に……? というか何でそんな事知っているんだ?
身長175,6、やや細目、蒼み掛かった髪、端正な顔立ち、竜崎 隆人はネクタイを緩めながら思った。
――思えばこの学校に来たのは間違いだったかもしれない、いくら嘆願書が来たからと言って、中学の校長め、私をあんな安い値段で売るとは……いやいや、問題が摩り替わっている、そう、とにかく変な所だ、先程会った変な二人組もそうだ、二人とも言っていることがめちゃくちゃだった。
たしか部活に入って欲しいとかナンとか……。
そんな事を思っていると、いつの間にか校長の話が終わっていた。
皆、順番に体育館を出て行く。隆人もそれに従った。
この学校は計四棟で出来ている。
一つは部活棟
この棟は各部活の部室やら用具室やらが置いてある、ちなみに生徒会室もここにある、つまり生徒の権力の中枢である。
二つ目は職員棟
この棟はその名の通り職員室や校長室、会議室がある教師達の権力の中枢である、生徒会と教師達の間には最近よく問題が挙がるらしい。……どうでも良いが。
三つ目は教室棟
これは生徒達が授業をする為の教室が設けられている棟だ。体育館なども之に属する。
四つ目は特別棟
寮や食堂などがある棟、この学校には遠くから来る生徒もいる為かそういうのが設けられている。
そんな事を説明している間に(誰に?)教室に着いた。
隆人はその教室の中―生徒―を見てため息を吐いた。
結と泉斗は1年2組の窓際、中庭に面している席に着いた。この学校の方針(生徒の自治権)で席は自由に決めて良い事になっている。
外を見ながら結がふと言葉をもらした。
「いい学校ー」
それを聞いた男――泉斗が言う。
「まぁな、確かにいい所だけどよ、周りの人間がおかしくないか? さっきの校長といい」
「うーん……そうだけど、特別悪いって訳じゃないし……。それに部活動の経営も任せてくれるんだよ」
「それも部長、副部長二人がいて初めて成り立つもんだろうが」
それを聞いて結がそうなんだよねーと困ったような笑みを見せる。
「さっき誘った人も何組か解らないしねー、せめて名前くらい聞いとけば良かった」
「っていうか、何であいつを誘おうとしてんだ?」
「ん? ああ、それはねぇー……」
その時教室の後ろ扉が開いた。遅れて体育館を出た生徒が来たのだ。
それを見た泉斗の口元に自然と笑みが出た。隣の結も気付いた様だった。
「おい、あれって……」
「うん、さっきミステリー研に誘った人だよ」
「どうやら運は尽きてないようだ……」
――まさか彼等も同じクラスだとは
窓際にいた二人がこちらに気付いて向かってくる。
二人が机一つ分の間隔をあけて立ち止まる。
男の方が話しかけてきた。確か『泉斗』と言われていたような。
「また会ったな、えっと……なんつたっけ?」
女の方が付け加える。こちらは『結』と言ったか……?
「竜崎君だよ……、ええと合ってるよね?」
こちらが頷くと笑顔を見せてくれた。良い笑みだと思う。
「『園宮 結』と言ったかな? 君は?」
言うと相手の顔がいっそう明るくなる。
「覚えていてくれたんだ?」
「ああ、また会えて嬉しい限りだよ園宮君」
「ああ、結でいいよ? 面倒くさいでしょ私の名字?」
「ふむ、解った。ではそちらの君は?」
男のほうに顔を向ける。
「俺か? 俺の名前は『千葉 泉斗』、っていうか俺の事は覚えてなかったのか?」
「すまないね、人の名前を憶えるのが苦手でね、頭のメモリが満タンでね……」
まぁ、いいけどよ、と、呟いたのが聞こえたが構わず質問することにした。
「ところで、何か私に聞きたい事があったのでは無いのかね?」
結が驚いた様子で言った。
「よく解ったねー?」
「朝の事を考えるとね……、『ミステリー研究部』の事だろう?」
隆人は頷いて見せた。
「成る程……、確かにこの学校の方針では三人以下は部活動、同好会に認められないな」
結、泉斗が訳を話してから既に三十分が経過していた(何故か担任が来ない)。
「――それで私に入って欲しいと……?」
結と泉斗が同時に頷く。
「しかし、私はもう入る部を決めていてね、否、決まっていてね、すまないが力になれそうに無い」
「? そうなんだー……」
結がさも残念という感じに肩をおとした。
「まぁ気ぃ落とすなよ、隆人っつたっけ?」
「そうだが? いきなり呼び捨てかね?」
「気にするな、呼びやすいから言ったまでだ、深い意味はねぇ・・・お前も俺の事は『泉斗』で……呼び捨てでいいぜ」
隆人が解ったと頷くのを無視して話を続ける。
「それで質問なんだが、どこの部に入るつもりだ?」
「ふむ……とりあえず格闘技系の部活に片っ端から当たって行くつもりだが?」
「何だそりゃ……?」
隆人は少し迷った後にあごに手をあて切り出した。
「ふむ、そうだな……、端的に言えば家の都合上といった所か?」
「もっと訳解らねぇぞ」
「家の者が五月蝿くてね、彼等に言わせれば『竜崎のモノは何よりも優れていなければならない』だそうだ……まったく迷惑な話だ……」
その言葉にさっきまで黙っていた結が反応した。
「でも竜崎君はそう思いながらも従ってるわけだよね? 『ソレ』に、どうして?」
泉斗が口をはさんだ。
「結、どうしてって、そりゃ仕方ねぇだろ? 家がそうしろって言ってんだぜ? そうゆう家にはそれなりのやり方があるんだぜ俺もな……」
「泉斗の言う通りだ。
私一人が反発したって直ぐに抑えられる……意味が無いのだよ、だから――」
隆人の言葉はそこで遮られた。結が手を前に出し止めてきたのだ。
「嘘だね? 君はそんな事を言ってるけど本当はどうにかできる『力』を持ってるんじゃないの? ――自分のやりたい事をするだけの力を」
「…………私は……」
――ガラガラガラ……
隆人の言葉はドアの開く音に阻まれてしまった。
やっと担任が来たのである、隆人達がはなしてから既に一時間が経過していた。
一時間目はHRだった。内容は覚えてない。
一人の少女が放った言葉が以外にも重かった。
――まさかあんな会ったばかりの女子に言われるとはな……まだ甘いという事か、しかし私にはそんな力は無い……いや、あってたまるか!
そんな事を延々と心の中で自己問答している内に放課後になってしまった。
――そういえば今日は三時間だったな、部活動は今日から見られるはずだったか?
席を立ち教室を出て行こうとするとそれを止める声が後ろから来た。
「竜崎君待ってよー」
結だ。
「そうだぞ、待つと俺に喜ばれるぞ」
泉斗。
そんな二人に隆人は内心で吐息し、
「一体何かね? 私はこれから部活を見に行こうと思っているのだが」
「うん解ってるよ、それに私達も付いて行こうこうかなーって」
泉斗も結の隣で頷いている。
「何?」
「いや、ほら、三人揃わないと部活設立できないからさ、それだったら他の部活みてみようかなぁーって思って」
結が『ダメ?』と首をかしげる、泉斗も真似している(単純にムカツク)。
「別に構わないが私が今日行くのは『格闘技系』だけだが・・・いいのかね?」
すると今度は結ではなく泉斗が答えた。
「ああ、その点なら大丈夫だ俺も結もそれなりの格闘、格闘技好きだ、結に至っては『蒼天槍術』の使い手だぞ……つっても知らねぇか」
「いや……」
驚いた『蒼天槍術』、あまり知られてなく一子相伝と聞いていたが、そうだとしたら目の前にいるこの少女が……?
「なんだ知ってんのか? ふーん、良かったな結ちょっとだけ有名人だ」
「そんな事言ったら泉斗だって似たような者じゃない」
それは一体……、
「どう言う事だ?」
疑問は言葉となって出た、そして待っていたかのように結が切り返してくる、
「うん、泉斗はね『空手四段』、『剣道三段』、あと中学では『喧嘩王』って呼ばれていたよね? 確か」
「ほう」
また驚いたこの二人が武術を修めているとは・・・
「ちなみに問うが、『喧嘩王』と言うのは?」
「うん、実際には喧嘩じゃないんだけど、泉斗に挑戦状を出す人が多かったの、ね」
「ああ、まぁな俺中学の時は部活やってなかったしな」
なるほど、確かに部活もやってなくてそれだけの成績を収めていれば回りの者達も放ってはいないだろう、
「おい、どうでもいいが部活見にいかねぇのか?」
「そういえば、そうだな」
「結局、俺達は付いて行っていいのか? ……駄目と言っても付いて行くけどな」
「なら、聞く必要はあるまい?」
苦笑し教室から出て行く。後ろに不思議な二人組を連れて。
空手部、
「ほう、我らに挑戦するか?」
「ああ、お願いするよ」
隆人と空手部部長が対話しているのを泉斗と結は道場の隅で聞く、話によれば竜崎家のモットーは『誰よりも優れる』と言う事らしい、だからこの様に手当たり次第に運動部(主に格闘技系)に挑戦して自分が負かされた部に所属する、そう言う決まり(?)らしい。
つまり勝てばそこから得るモノは無いから入る必要は無い、と言う事だ。
そうこう説明している内に(誰に?)試合の内容が決まったらしい。
空手部部長が説明する、何故か顔が引きつっている。
「ルールの説明をする!」
皆が注目する、
「『挑戦者』対『空手部代表五人』ちなみに五人は一斉にかかる」
辺りがざわめく、当然だ、明らかに空手部を馬鹿にしたルールである。
「静かにしろ!五人選抜するぞ!」
そう言って話を終わらせる。
隆人がこちらに向かって来た。
「ちょっと、竜崎君大丈夫なの? 何でまたそんなルールに?」
「と言うか、良くそんなルールーを相手が飲んだな」
隆人が立ち止まり言葉を返してきた、
「いやなに、一人一人相手にするのが面倒だったのでね、かと言って全員相手にするには道場が狭すぎる……そう言う訳で五人と言う数字になった、ルールはこちらが決めていいと言っていたしね。ちなみに適当に煽ったらこのルールーを承諾してくれた」
絶句、五人どころか全員相手にするつもりだったのだ。
「はっはっは、そう言う解りやすいのいいねぇー」
泉斗がはやし立てる、確かに泉斗は我体もいいし強いのも解る、が、隆人は泉斗とは違う、 確かに実力は判らないがいくら何でも無謀すぎないか?
そんな事を思っていると見透かしたか泉斗が耳打ちしてきた、
「まぁ観てろって、こいつなら大丈夫だよ、俺の知ってる『アイツ』ならな」
どう言う事だろう? 泉斗も今日が初対面のはずなのに。
そう思っていると空手部部長がこちらに向かって叫んだ。
「こちらは決まったぞ、そっちの準備はいいか?!」
「ああ、いつでもOKだ」
隆人が道場の中心に進む、同じく五人の傍から見ても屈強な男達が進む。
両者二メートルぐらいの間を置き向かい合った。
「いいか、我らは実戦を目的としている、それにこの状況だ、骨の一本、二本覚悟してもらうぞ?」
「ああ、構わない」
一拍、
「誰か合図を……」
隆人がそう言った瞬間だった、空手部の一人が唐突に動き出したのだ、高速と言う動きを持って隆人の方へと、
「竜崎君危ない!」
「竜崎君危ない!」
隆人はそれを聞いた。そして同時に正面から来る男の声も聞いた、
「実戦と言ったはずだ、実戦に合図は無い!」
隆人はその言葉に笑みを持って返す、失笑と言う笑みだ。
「解っている、隙でも見せれば飛び込んでくれると思ってね」
そう言いながら相手の正拳突きを落ち着いて自分の方に引き、相手の胸に肘を入れる、
「ぐぉぉ……」
自分の助走と隆人が引いたスピードが相成って男は堪らずその場に倒れた、
「さぁ、掛かって来たまえ」
隆人が不敵に言う。
「さぁ、掛かって来たまえ」
その言葉を皮切りにして残った男達が一斉に掛かる。
一人目(正式には二人目)が大上段からの回し蹴り、隆人の顔面直撃コースだ、が、隆人はそれに対して屈むことで回避、そのままちょうど一本足で立っている状態の相手に足元をすくう様な蹴りを放つ、バランスを崩し左に倒れかかった相手の側面にもう一度蹴りを放つ。その衝撃で相手が倒れかかった方とは逆に吹き飛ぶ。
残った三人が隆人の、正面と左右から攻めてくる、隆人は状況を一瞬にして把握、前に出る事で左右の敵の攻撃を回避する、避けられた二人は自分達が出した拳によって倒れている。
――愚かな……、そんな事を、前に体をだしながら思う。
正面の最後の一人、部長だ。さすがに落ち着いている。微動だにせず正面で拳を構えている。
隆人も自分と部長の間に二歩置き停止同じ様に構えた。
結と泉斗は見た、否、見えなかった。
二人が向かい合い構えたと思うと次の瞬間には隆人が動き全てが終わっていた、空手部部長は道場の床に大の字で倒れて動かない、気絶しているのだ。
「泉斗、今一体何が起きたの?」
結が口を開く、
「解らねぇ、隆人の奴が相手の体に密着したと思ったら相手が吹っ飛んでた、しかもあいつ、相手に密着した段階で一度停止しやがった、スピードで押し切った訳でもなさそうだ」
「うん……」
この二人がそれしか解らなかったのだ、他の部員には全く解らなかった事だろう、案の定他の者は皆文字通り『開いた口が塞がらない』と言った状況だった。
そんな中に動きを表す者が居た、隆人だ。
隆人はそんな中をそしらぬ顔でこちらに向かって来て言い放った、
「さて、次に行こうか?」
空手部を出た後結が唐突に切り出した、
「ねぇ、さっきの何?」
「何かねいきなり?」
結は、ああ、ごめんと一言、続けた、
「あの、空手部の人を吹き飛ばした技……」
「ああ、あれか、あれは『徹し』と『寸剄』と呼ばれるものだ、相手にインパクトを与えてその後に吹き飛ばす、ちなみに『呼ぶものだ』と言ったが正確には複合した技だ」
結が、ふぅんと頷く、泉斗も後ろで、ほぅと頷いていた。
その後は似たような感じでとどこうり無く進んだ。
「全部まわちゃったね」
「ふむ」
「結局お前、入る所決まらなかったじゃねぇか」
「しかたあるまい、そう言うものだ」
「そうか、じゃあ、それを踏まえた上で話すぞ?」
「何?」
隆人ばかりでなく、結も泉斗の方を見た、その視線を正面から受けながら泉斗は続けた、
「ミステリー研に入れ」
結が目を光らせる、
「そうだよ、入る所ないんだったら私達の所にきなよ? そうすれば私達も助かるし」
「しかし」
隆人が喋ろうとすると泉斗がそれを止めた。蹴りと言う形を持って。
「いきなり何をするのかね?」
冷静にそれを回避して隆人は泉斗を見た、
「そうだよ泉斗、いきなり蹴りだなんて……、せめてパンチぐらいに」
「正す方向、間違えてるぞ結」
え? っと言う結を無視して泉斗が言葉を続けた、
「隆人、お前の言いたい事は解る、つまり家からの命令で格闘技系またはそれに準ずる部活でなければ駄目と……さらに言うなら文化部の場合でも、もっとまともな所にしろと言われている、違うか?」
「解っているなら話は早い、その通りだ。文化部の場合は将来役に立つ物にしろと言われている……」
「あのなぁ、もうちょっと抗ってみろよ、お前はお前だろ?」
「私とて、やりたくてやっている訳ではない、しかし私一人が抵抗した所で、ヘタをしたら私など」
「それも解ってるよ、だから俺はお前を蹴ったんだよ」
「?」
――どう言う事だ?
結がその疑問を自分の変わりに泉斗に投げていた、
「どう言う事?」
「気付かねぇか? ……つまり隆人は家からの制約で自分より優れている者の所に行き自分をより完璧にしろと言われているんだぜ、だから俺は隆人に対して攻撃したのさ、俺と勝負しろ、とな」
泉斗が笑みを向けた。