第9話「エレクVSサンク」
壊れた橋から落下している袋。
その袋のヒモがほどけ、中から見えた白いもの。
さらに大きく袋が開くと中から白色の人間ではない何かが出てきた。
それは何かと問われると竜が小さくなったような生物。
尻尾があり耳があり牙がある。
「ギャッギャッギャッ…出れやがった。 外の空気なんて久しぶりだな。 あの野郎、俺をこんな所に詰め込みやがって。 しかし不思議だ…今まで出ようと思ったことは何回もあったが袋が開きゃしなかったんだが…まぁそんな事はどうでもいい。 何かが俺を呼んでいる気がするぜ。 ギャッギャッギャッ」
そういって竜のような生き物は城に向かって飛び出した。
・・・
王座の間。
サンク「リューム。 お前はトリスィテご夫妻と一緒に別の部屋で待機してろ」
リューム「了解です…」
サンク「それでは奪わせてもらいますか」
エレク(私はウティを使ったことなんてないけどやるしかないわよね…)
そういうとサンクは羽織っていたマントを手に持ち出した。
エレク(マントを? あれがウティってこと?)
サンク「"外套包み(オン・ザ・ヒマティオン)"」
そういうとエレクに向かってマントを投げた。
エレクの頭の上で大きく広がり、何やらバチバチと音がしている。
エレク「え?…何すんのよ!」
サンク「電気にご注意を。 "外套流し(ヒマティオン・オン)"」
エレク「え!」
そういうとマントはエレクへと覆いかぶさり、直後にバチバチと鳴っていた音が大きくなる。
どうやらマントの内側から電気が流れているようだ。
しばらくそれを眺めているサンク。
サンク「充分ですかね…」
そういうとマントがサンクの元へと戻る。
サンク「ほう…風ですか? あの一瞬でよく機転がきいたものだ」
エレクの体の周りを風が包み込んでいる。
その風が盾となり電気から身を守ったようだ。
エレク「ハァ…危なかった」
サンク「少しばかりやっかいですが、守ってばかりではどうしようもないですよ」
エレク「助けがくるまで耐えれば、あんたなんかすぐに終わりよ」
それを聞いてサンクは笑い出す。
サンク「フフフ…素人ですね。 なら試してみては?」
エレク「どういう意味よ」
サンク「すぐに分かりますよ」
そう言ってサンクは再びマントをエレクに向かって投げる。
マントは再びエレクの上空で止まると、今度は槍のような形へと変化する。
エレク(あのマント…好きなように形を作り変えられるの? まるで大きな折り紙)
サンク「さぁ…先ほどと同じ結果になるでしょうかね? "外套雷"」
エレク「不味い!」
電気を纏った槍先がエレクの方へと向くと、頭上から勢いよく降り注いだ。
間一髪、エレクは横へと転がり何とかかわしていた。
それはまるで実体のある雷。
床へと突き刺さっている。
サンク「判断力はやはり素晴らしい。 先ほどと同じ事をしていたら串刺しでしたね」
エレク(布が床に突き刺さるですって? あんなの喰らったら一溜まりもないじゃない)
サンク「さぁ…今度は守るのではなく逃げ続けるとでも言うんですかね?」
エレク「それはあんたの目で判断したら? 風ようねろ! "風波"」
サンク「足元を…」
波のように足元で吹き荒れた風によりサンクはバランスを崩し倒れそうになる。
エレク「風よ叩け! "風鞭"」
風で作られた目に見える鞭。
バランスを崩したサンクに向かって叩き落す。
ぶつかる瞬間、眩い閃光が発せられた。
エレク「油断してるから足元すくわれるのよ」
「油断など一切していませんよ」
エレク「な!」
一瞬の閃光がおさまると、サンクは何事もなかったかのように立っていた。
自分を守るようにマントを覆いかぶさっている。
どうやら先ほどの閃光は風と電気がぶつかり起こったようだ。
エレク「マントで…」
サンク「そして油断しているのはどちらでしょうか? 覚えておいたほうがいい…雷は何度も落ちるんですよ」
エレク「え…?」
いつの間にかサンクを包んでいたマントがなくなっている。
それはエレクの頭上、先ほどと同じように槍へとすでに形状を変え終えていた。
サンク「"外套雷"」
エレク「あ…」
エレクへと突き刺さろうかという時…。
「ギャッギャッギャッ。 やべ~止まらねぇ」
謎の竜が王座の間の窓を突き破った。
謎が乱入。
この生物については次回、詳しく説明をいれます。
一応、絵もありますので。
ではまた次回「ヴォレ登場」へ