第5話「城へ飛べ」
城へと渡る壊れた橋の前。
エレクは腕を組み険しい顔を、ラルクは辺りをキョロキョロと見渡している。
エレク「だけどどうやって城の中に行けば」
エレクがそういうとラルクが壊れた橋のすぐ目の前まで走っていく。
そこには壊れた橋の残骸、どうやら石で造られた頑丈なものだったらしいが粉々だ。
それの側には木の板も落ちている。
何やら書かれているが字は読めない。
看板だったのだろう。
それを手に取るとラルクは再びニヤついた。
ラルク「おい! 俺とお前のウティで…」
ラルクがしばらく話すとエレクは驚いて声をあげる。
エレク「そ、そんな事できるの?」
ラルク「前によく遊んだことがある。 俺1人なら俺のウティだけでも出来るけど2人ならお前の力も借りたほうがいいな」
エレクはあまり乗り気ではないが他に方法もない。
ラルクの自信に賭けてみようと思ったのだろう。
エレク「分かった」
エレクが返事をするとラルクは拾ってきた板を地面に置きその上に立った。
エレクはそのラルクに前から抱きつくようにしがみつく。
エレク「密着してるからって変なことしないでよね」
ラルク「変なことって何だ?」
エレク「ゴメン。 あんたにきっとそんな気は微塵もないわね」
ラルク「よく分からねぇけどまぁいいや。 それよりいいか? 思いきり風を出せ」
エレク「大丈夫なんでしょうね?」
ラルク「ああ、大丈夫だ」
エレク「それにしてもあんた身軽ね。 荷物は?」
ラルク「ん? 船に置いてきた」
エレク「ハァ~まぁいいけど」
ラルク「じゃあいくぞ!」
そう言うと同時にラルクの足元から火が出始める。
木の板を包み込むようにエレクの風も出始めた。
ウティは使用者が調節はできるうえ、例を挙げると火を出すだけで燃やすことはしないなど言った調節も可能だ。
まさに今、ラルクの足元から火が出てるが衣類諸々や木の板は燃えはしない。
しかし火の勢いはどんどん上がっている。
ラルク「よし…動き出した。 一気に行くぞ! 心の融合…」
エレク「バカ! ちゃんと前、注意して」
ラルク「"風纏う火板"」
その合図と共にラルクの足元から出ていた火が後ろに向かって思い切り吹き出した。
すると木の板がまるでエンジンをつけたスケートボードのように走り出したのだ。
しかし車輪はついていないのでガガガと地面をこする音が響いてはいる。
そのまま壊れた橋の方へと走り、上空へと飛び出した。
橋が架かっていれば道はあるが今は何もない。
飛び出したはいいがこのままでは当たり前だが重力によって落下するだけだ。
ラルク「今だ!」
エレク「分かってるわよ!」
すると今度はエレクが思い切り、風を木の板から下に向かって出すのだった。
何とも不思議な光景かもしれない。
まるで火に乗った男女が橋を飛んでいるかのように飛び越えてきているのだ。
それに気づいた城の前に居る兵士達がざわつき始める。
「ん~何か来たぞ」
「何だ! あいつら」
「どうする?」
「どうするも何も侵入者なんて入れたら俺たちが怒られる。 何処の誰だか知らないが打ち落とせ!」
兵達は大砲の準備に取り掛かる。
ラルク「ん? 向こうで何かやりだしたぞ」
エレク「向こう? ちょっと…大砲撃とうとしてるじゃない! 着地した瞬間を狙われたらよけられもしないで死んじゃうわよ!」
ラルク「大砲なんて喰らったら大怪我だぞ!」
エレク(怪我ってあんた…)
ラルク「よしまかせろ。 着地したらお前は先行ってろ」
エレク「え? え…ちょっと何する気?」
「今だ! 撃て!」
橋を超え地面へと着地した2人。
と、同時に兵達が大砲を撃つ。
ラルク「"炎上壁"」
ラルクの前に出来た大きな火の壁。
大砲の弾はそれにぶつかり爆発した。
ラルク「ったく、危ねぇな」
エレク「あんな怖いことよく出来るわね…」
着地と同時に走り出していたエレクはその光景を見ながら城の扉の前までついていた。
エレク「急がないと」
・・・
一方、城前。
「誰だお前!」
ラルク「俺は旅のものです。この城を見学しにきました」
「そうですか、そうですか。 それじゃあ中に」
「バカヤロー! そんなわけにいくか。 追い出せ!」
ラルク「ハァ~早く城ん中、見てぇな」
ラルクは兵など眼中になく城だけを見つめていた。
到達!
ここまで読んでいただきありがとうございます。
ここの話は丸々、当初の構想案と変えましたね。
前のは無理があったかな(笑
ではまた次回「侵入者」へ