第1話「赤髪の男」
初めまして。この小説の作者「クレーヴ」です。
最初に言っておきますが自分の小説は喋っている人物の名前を表記してあります。
これは物語のテンポを重視したいからです
ナレーションで「何々がこう言った」などと書いているとどうしてもテンポが悪くなってしまうのでワザとこういうやり方をとらせていただきます。
自分の小説に目を通してもらうにあたって、このことだけご了承ください。
内容は誰にでも楽しめる作品にしていこうと思っているので是非1度、目を通していただけると幸いです。
また読んでくださったら感想等いただけると嬉しいです。
では物語スタート。
いつかの時代。
とある島「ララライ島」
周りを海に囲まれた孤島だ。
潮風吹く波打ち際に人影が1つ。
何かを造っているようだ。
場所は変わって森の中にたたずむ家の中。
1人の女性の叫び声。
「キャー!」
それを聞き波打ち際の男がつぶやく。
「ハァ〜、また母さんか。しょうがねぇな」
そういうと男は声の場所へと走って行った。
・・・
「いつもの事だろうけど、どうした?母さん」
「ラルク! 見てちょうだい。またこのコンロが壊れたのよ」
ラルク「だからいつも言ってるだろ。そんなのウティを使えばいいじゃねぇか」
「嫌よ…あんな物、悪人が使うもんだわ」
ラルク「悪人て…まぁそういう風に使うやつらも増えてきてるらしいけど、それなら俺も悪人って事か?」
そう問いかけながら、どこからか火を出すのだった。
「…ありがとう」
男の名は "フラーム=ラルク"
年は18歳。身長170前後の体系はいたって普通。
赤みがかった髪と首に巻いてあるハチマキが特徴的な青年だ。
ラルクの母さんの名は "フラーム=トレン"
長い黒髪がトレードマークとも言えるだろ。
ラルクがさっき火を出したのは、ラルクが持っているウティに宿りし力。
ラルクのウティは 「宿・ハチマキ タイプ・火」
つまり、ハチマキに宿った火の力だ。
そのハチマキを身に着ける事で自由自在に火を出すことができる。
ウティとは様々な物に宿りし不思議な力。
宿る物も宿る力も様々で徐々にこの世界に現れ始めた。
・・・
時間帯は昼時。
さっきトレンが作っていたのは昼食だろう。
食事中。トレンが問いかける。
トレン「ラルク、またイカダを造ってたの?」
ラルク「ん?…ああ。ご馳走様」
トレン「待ちなさい、ラルク! 全く」
ラルクは逃げるように家を飛び出した。
ラルク「全く母さんはいつまで経ってもウティを毛嫌ってるな…まぁしょうがねぇよな。 父さんがこの世界に溢れ出てきたウティに疑問を抱き、それを止めようと島を出て行っちまったからな。 世界のどこかに封印する場所があるとかホントかよ? 確かこの世界が崩れ始める前に止めなければとか何とか言って母さんの反対を押し切って行っちまったんだよな…元気なのか? 父さん」
最後にそうつぶやいたラルクは一軒の店へと入っていった。
・・・
ラルクが店に入る少し前、ララライ島の人が賑わう商店街。
人々はおろおろとしている一人の女を見ながらヒソヒソと話しているようだ。
「ちょっと見てみ、あんな子この島にいたかしらね?」
「いや…あたしは見た事ないよ」
「おい見ろ、えらい可愛い子がいるぞ」
「お! 声かけて見るか?」
そんな島人たちの会話をよそに女は何か言っている。
「ここまでくれば流石に……でも人が居ないところに」
そういうと女は商店街を急いで抜ける為に走り出した。
それに続けて一切目線を外さず見つめていた人影もまた歩き出した。
「逃げられやしないさ」
・・・
ラルクが入った店、木造建築の酒場のような喫茶店という所だろう。
店には似つかない派手な外装、色様々な電灯が飾り付けられている。
看板には大きく「ラッチョハウス」と書かれている。
ラッチョ「お〜らっしゃい、ラルク」
ラルク「ヨッ。 相変わらず元気だな~ラッチョ」
ラッチョは40代のオジサン。
顔は…まぁ置いておこう。
目は開いているか疑うほどに細く髪はオールバック。
顎にうっすらと髭を生やしている。
本人曰く恋には無縁らしいが前に結婚をした事があるらしい。
ラッチョ「飯は?」
ラルク「大丈夫、食ってきた」
ラッチョ「そうか」
少しの会話の後の少しの沈黙。
それを嫌うようにラッチョが話し出す。
ラッチョ「お前の親父が島を出て3年って所か? ウティは使えるし、まだ封印は出来てないって事だろ? こっちは店の役にも立ってるし封印なんてゴメンなんだが…もしかしたらもうくたばっちまったか?」
ラルク「…どうなんだろうな。 まぁ父さんは大丈夫さ、それよりいつも言ってるだろ? 俺が封印してきてやるって! ちゃくちゃくとイカダも出来てきてるんだ。 俺は外の世界を見るのが夢。 そのついでに封印も父さんも見つけてきてやるよ」
ラッチョ「へいへい。 知ってるって…期待してるよ」
そう言いながらラッチョは軽く微笑んだ。
ちょうどその時。
「キャー!!」
店の外からの大きな叫び声に二人は驚き顔をあげる。
ラルク「母さん?…じゃねぇよな。 ちょっと行って来る」
ラッチョ「おお…気ぃつけろ」
店を出て声の方へと走っていくラルク。
それを見送るように反対側から足音が。
「ラルク?」
不安そうな顔で店へと入るトレン。
ラッチョ「らっしゃい」
トレン「今、ラルクが走っていったけど何かあったの?」
ラッチョ「あ、ああ…いや何でもないよ」
トレン「…そう」
ラッチョ「それより…」
・・・
森の奥、1人の女が座り込んでいる。目の前には1人の男。
「さぁ大人しく渡してもらおうか」
ラルク「あそこか」
叫び声の場所を発見したラルク。
走りながら叫ぶ。
ラルク「おい、お前! 女の人に何やってんだ! 変態か?」
「変…誰だお前は? 部外者は大人しく消えろ」
続けて座り込んでる女も怒鳴る。
「あんた、危ないからどっかいって!」
ラルク「嫌だね、人が困ってる時は助けろって言われてるんだ」
(チッ…面倒なのがきたぜ)
座り込んでる女にラルクが問いかける。
ラルク「どうしたんだお前?」
「一緒に走って」
困った顔の女は少し悩むとラルクの手を取り森の奥へ走りだす。
「だから逃げられやしないさ。 ここは孤島」
・・・
ラルク「お、おい…もういいんじゃないか? どうしたってんだ?」
「ハァ…ハァ…あんた名前は?」
ラルク「俺はラルク」
「ラルクね。 私の名前は "エレク=トリスィテ"。 とりあえず 宜しく」
ラルク「ん? ああ…ヨロシク。 エレク」
エレク「で、さっきの男の名前は "コルト" " 闇の心魔団〜テネーブル・ウティ"の一員よ」
ラルク「テネーブルウティ?」
エレク「テネーブル達は謎が多い組織。 何が目的かは分からないけど、一つ分かってることは白いウティを狙っているということ今も私が持っている、この白いウティを狙っているの」
ラルク(…白?)
エレク=トリスィテはラルクと変わらない年だろう。
黄色と黄緑が混ざりあった肩まである髪。服は汚れているが高価そうな感じだ。
左手の中指につけている指輪を見せ説明したところを見るとそれがウティだろう。
「宿・指輪 タイプ・風」
先ほどのコルトという男は中年の黒髪。
痩せ型で身長が高いヒョロっとした感じだ。
ラルク「その白いウティは何か特別なのか?」
エレク「私も詳しくは良く分からないの。 ただ家では丁重に扱われていたし何か色々と謎があるんだと思う。 だから私は逃げてきた…一人。 一人だけで」
ラルク「一人だけってどういうこ…危ねぇ!」
間一髪でエレクを引っ張り火の玉をよける。
コルト「ほ〜よくよけたもんだ。 しかしもう追いかけっこは止めにしようぜ。 さっさと渡してくれねぇか? その白いウティを」
エレク「…」
ラルク「おい、おっさん。俺は強いぞ」
コルト「自分で言ってちゃ世話ねぇな。 じゃあつまりそういうことか?」
ラルク「ああ、ぶっ倒してやるよ」
・・・
ラッチョハウス。
ラッチョ「それより…ラルクの事だけど」
トレン「…夢の事?」
ラッチョ「ああ。トレンさんも知ってるんだろ? 俺が言うのもなんだけど、あいつはもう立派に成長した。 だから、そろそろ旅立たせてやってもいいんじゃないか?」
トレン「…分かってる。 分かってるけど、あの人みたいに帰ってこなかったら…」
ラッチョ「それもラルクは任せろだってよ。 あいつがいつも言ってること知ってるか?」
トレン「いつも言ってること?」
ラッチョがそう言うとトレンは首をかしげた。
・・・
場面は森の奥
ラルク「行くぞ!」
そういうとラルクはコルトに向かって走り出す。
パンチを出しては防ぎ、出されては防ぐ。
一進一退の攻防がしばらく続く。
コルト(成る程…口だけじゃないみたいだな。 しょうがない)
コルトの手首に巻かれているハチマキが光、手の平から火がラルクの腹めがけて飛んだ。
ラルク「グッ…熱ぃ!」
コルト「どうだ? 俺のウティの力は?」
コルトのウティ「宿・ハチマキ タイプ・火」
ラルク「火の力? さっきの火の玉もウティだったのか。 しかも俺のと一緒ってことか?」
コルト「ほ〜お前も火のウティか。 だが実践経験ってのを知ってるか?」
そういうとコルトは両手を広げラルクに向ける。
その手の平からラルクへ向かって火の玉を連続して打ち放つ。
ラルク「うわ! 危ねぇ…うわ!」
ラルクも火を出し、相殺をしているが数が多すぎて避ける事ばかりだ。
コルト「ほらほら。 ククク…自分ばっか避けてていいのか?」
そういうとコルトはエレクの方へと火の玉を飛ばす。
すぐさまラルクの方へも。
ラルク「しまっ! クソッ!」
エレク「キャッ!」
何としてもエレクの方は守る。
その強い想いに反応したかのようにラルクのウティが白く輝きエレクの前に白い火の壁が現れ、そこに火の玉はぶつかり消えた。
「白!」
エレクもコルトも驚き、同時に同じ言葉を発した。
エレクを守ることしか考えていなかったラルクに火の玉が直撃する。
ラルク「ガハッ!」
その場に一瞬、倒れるが何とか立ち上がりエレクの方へと。
ラルク「お、おい。大丈夫か?」
エレク「…ええ。それよりラルク。 今の白い火」
ラルク「ああ…俺のも白いの出るぞ」
コルト「ハーハッハ、丁度いい。 2つも持って帰ったとなると俺は大手柄だ。 お前らを倒して俺がありがたく貰ってやるよ」
ラルク「(倒す?) 何言ってんだ、お前。 俺は…」
・・・
ラッチョ「あいつはいつも、こう言ってるよ。俺の…」
トレン「俺の?」
・・・
ラルク「俺はこんな所で倒されねぇ! 俺には自分に誓った目標があるから。 それを達成させるまで死ねないんだよ。 誰にも俺の夢は邪魔させねぇ!」
コルト「こいつ…」
・・・
ラッチョ「夢は邪魔させねぇってな」
そういうとラッチョは微笑んだ。
トレン「…夢」
・・・
エレク「ラルク! あんたの白いウティと私のこの風の力の白いウティ」
ラルク「何だ?」
エレク「謎だらけの白いウティだけど分かってることもある。 ウティは心の強さが大事。 だから2つ以上同時に使うと、気持ちのこもっている物から順に段々と力が弱くなってしまう。 だけど白いウティ同士は気持ちが分かれない。 想えば想うほど全てに反映される!」
ラルク「よく分かんねぇけど、つまり思いっ切りやればいいんだよな?」
呆れ顔したエレクが言う。
エレク「つまりそういうこと」
ラルク「OK。 火と風の融合だ」
コルト「ごちゃごちゃとおまじないでも唱えてたか? じゃあそろそろサヨナラだ」
そういうとコルトの手のひらに巨大な火の塊が作られていく。
ラルク「…そうだな。 サヨナラだ」
エレクに渡された指輪が光る。
するとラルクの周りに風が漂い始める。
それは目に見える白い風。
コルト「ハーハッハ。 じゃあ…死ね。 "巨大火玉"」
コルトが放った巨大火の玉の周りを白い風が包むと同時にラルクが消える。
風に包まれた火の玉は一瞬で消えてしまった。
コルト「なんだと! どういうことだ…どこいった!」
ラルク「心の融合…」
次の瞬間だった。
気づけたのは一瞬…一瞬だけ気づけたコルトの顔が恐怖に歪んだと同時にラルクは目の前まで来ていた。
風をまとった事で風の速さを手に入れたラルク。
白い火と白い風を体全体にまとったラルクが頭からコルトに突っ込んだのだ。
コルト「は…や」
ラルク「"風速の火人"」
コルト「ガハッ…」
ぶっ飛んだコルト。
木を何本か突き破って気絶した。
ラルク「じゃあな、変態」
そういうとラルクは力尽きたように倒れた。
エレク「ラルク!」
駆け寄るエレクはしばらく呼んだ後、呼ぶのを止めた。
ラルクから小さな寝息が聞こえてきたからだ。
エレク(疲れただけか。 そりゃあ急にこんな事があったんだもんね。 それにしてもあれだけの威力。 心の強さが大きければ威力もあがる。 ラルク、夢は邪魔させないって言ってたけど、相当、強い気持ちなんだろうな)
ラルク「スースー」
エレク「…ありがとう」
・・・
場面はラルクの家。
ラルク「ん、ん〜」
トレン「ラルク! やっと起きたわね。 エレクちゃんから話は聞いたわ。 あんたは無理して」
ラルク「い! 母さん!」
エレク「ラルク、ちょっといい? 時間がないから単刀直入に話すわ」
ラルク「ん? どうした?」
エレク「私、さっき一人で逃げてきたって言ったでしょ? 私の家に白いウティがあった事で私の家は狙われていたの。 何とか私だけ白いウティを持って逃げるように言われたんだけど、街が家族が心配で。 今日逢ったばかりの貴方にお願いするのも悪いんだけど他に頼める人もいない。 だからラルク、私を助けてくれない?」
どことなく涙声のエレクをよそにラルクは即答する。
ラルク「いいぞ」
エレク「え? ほ 本当に!」
ラルク「ああ。 だけど…」
そう言いながらトレンの方を見る。
トレン「…いいわよ」
ラルク「え?」
トレン「いいわよ。 あんたの夢、私が邪魔するわけにもいかないでしょ? ウティの封印、父さん探し、エレクちゃん助け、全部片付けて帰って来なさい。 だけどいい? 無茶だけはしないでね?」
ラルクの顔がゆるみだす。
ラルク「ありがとう! 母さん。 全部、俺に任せとけ」
トレン「調子いいんだから」
トレンは呆れ顔だ。
エレク「ありがとうございます。お母様」
トレン「いいのよ。 ラルクを宜しくね」
エレク「はい!」
ラルク「よし、そうと決まったら早いにこした事はない。 さっさとイカダ作るぞ!」
エレク「私が乗って来たのがあるわよ」
ラルク「何? ホントか! よし出発!」
エ&ト(いくらなんでも早すぎるって)
こうして夢・目標・野望、多き男の冒険が始まろうとしている。
冒険の始まり!
ここまで読んでいただきありがとうございます。
第1話ということで切り良く話を終わらせたかったので長くなりましたが次回からは1話1話はもう少し短くする予定です。
ではまた次回「旅立ち」へ