第10話 静かな企み
ー宿屋の部屋ー
論客「やむを得ません。我々の旅の為にも、世界の為にも、この街の為にも・・・」
ハロルド「だからって・・・だからって・・・」
「強盗はだめだろ!!」
論客「落ち着いてください。相手は奴隷商人です。それも町人に嫌われています。奴隷商人の富を根こそぎ奪い、奴隷売買をできなくさせるのです。大義名分はあります。」
ハロルド「ぬう。。確かに成功すれば今後、資金面で困る事は無くなるだろう。だが、越えるべきハードルが多すぎる。」
論客「そうですね。
第一に、捕まるリスク
第二に、顔が割れて悪名が広がるリスク
第三に、金庫の場所が分からない
第四に、盗み出す手段
これらをクリアーする必要があります。」
ハロルド「仮に逃げ切っても、マ・ヌーケの権力に追われ続けやしないか?」
論客「それは、マ・ヌーケの富を根こそぎ奪い切ってしまえば、解決出来るかと。金のない悪党など、誰も相手にしないでしょう。ましてや、相当恨みを買っていると思うので、後で誰かに暗殺されるかもしれません。」
ハロルド「しかし、どうやってハードルを乗り越えるか・・・」
論客「一から三までは、考えがあります。これは、傭兵のジェシーさんが変化魔法を使えた場合に実行可能な作戦です。」
ハロルド「なるほど、変装するわけか。金庫の場所はどうする?」
論客「ジェシーさんにメイドとして潜入してもらおうかと思っています。」
ハロルド「・・・果たしてジェシーが首を縦に振るかな?」
論客「・・・高額の報酬で釣れませんかね?」
ハロルド「どうだろうか。。。この件に関しては、もう少しじっくり、他のメンバーとも相談しながら考えた方が良い。」
後日
ー宿屋の部屋ー
ハロルド「皆、話がある。」(ヒソヒソ)
一同『なんだなんだ?』
ハロルド「この街には奴隷売買によって膨大な富を築き上げ、さらに販路を広げ、ますます私腹を肥やそうとする極悪人がいる。
これは勇者として、みすみす放っておく事はできない!!
そこでだ!その奴隷商人の資金を根こそぎ奪い、奴隷の売買をできなくしてやろうと考えている!!」(ヒソヒソ)
村人「その奪った資金はどうするので?」
ハロルド「・・・我々の旅の資金とする。」
廃業した武器屋「はっはっはっはっはっ!!!!つまり強奪するとwww」
ハロルド「だが、綺麗事だけでは旅はおろか、魔王討伐など到底不可能だ。」
金魚屋「で、でも道徳的に、ダメだと思います・・・」
ハロルド「もっともだ。だが、相手が相手だ。我々が奪うことで救われる人間がいるのも確かだ。」
金魚屋「うーん・・・確かに・・・」
ホームレス「俺は別に良いよ。元々拾い食いしてたぐらいだから。」
気弱な村人「ひぇぇ・・・」
ハロルド「そういえば、勇敢な青年がいないな?」
猫「にゃ・・にゃぁぁ!!(忘れてた!)」ガチャ
ハロルド「猫、何処へ行く!もしかして何かしっているのか? 皆、すまない!猫を追ってくる!後は任せた、論客!!!」
ーダ・イニの街 地下牢ー
猫「にゃぁぁぁぁ」
ハロルド「こんな牢屋に何かあるのか?」
看守「誰だ?面会希望者か?」
猫「にゃぁぁ!」
ハロルド「いや、この猫についてきたら、この場所に着いただけなんだが。」
看守「そうか。ここは地下牢だ。用がないなら帰りな。・・・おや?この猫は、もしかして虐待されていた猫か?絵で見た通りの見た目だ。」
猫「なう〜」
ハロルド「虐待だと? 誰に虐待されてたんだ?」
看守「あんたもしかして、飼い主か?実は先日、この猫が虐待されていてな、それをみた動物愛好家が通報して、虐待していた男を動物虐待罪で牢屋に収監したんだ。」
ハロルド「何!? おいまさか!! この猫は勇者パーティの戦闘員だぞ? 虐待されるようなタマではない。」
看守「猫だけにタマ?」
ハロルド「やかましい! 何かの間違いだろう。収監された男に会わせてくれ。仲間かもしれない。」
看守「いやいや、いきなりそんな事言われても・・・」
ハロルド「勇者証明書だ。」
看守「あ〜 そういう・・・ 仕方ないですね。こちらです。」
カツカツ コツコツ
勇敢な青年「よぉ!ハロルド!! いや〜 捕まっちまったよ! 全く警備隊も横暴だよな!!」
ハロルド「やはり捕まっていたか。一応何して捕まったか聞こう。」
勇敢な青年「それがよー 猫と戦闘訓練してたら虐待してると勘違いされてさー勘弁してくれよ全く!!! 大体、俺より猫の方が強ぇんだよ!!!!!今はな!!」
ハロルド「・・・だそうだ。」
看守「何という不始末。。すまない。直ぐに釈放しよう。」
ガシャン
看守「すまなかったな」
勇敢な青年「クソが。」
看守「・・・では戻ろう。」
カツカツ コツコツ
「おいおい!どうせなら俺も出してくれよー!!」ガシャンガシャン
カツカツ コツコツ
「無視すんなってー!!」ガシャンガシャンガシャン
カツカツ コツコツ
ハロルド「あいつは?」
看守「ああ、盗賊ですよ。長い事警備隊が追いかけていた男ですが、最近やっと捕まったんです。」
ハロルド「そうか(盗賊か・・・)」
カツカツ コツコツ
看守「出口ですよ。この度は、こちらの手違いで申し訳ありませんでした。。」
勇敢な青年「ケッ」
ハロルド「・・・所で、マ・ヌーケという男を知っているか?」
看守「この街で知らぬ者はいませんよ。悪い意味ですが。奴隷商人が外からやってきて馬鹿でかい屋敷を建ててふんぞりかえっているんです。
誰も歓迎なんてしませんよ。マ・ヌーケがどうかしましたか?」
ハロルド「いや、この街に来てからマ・ヌーケの噂を良く聞いてな。俺たちは勇者一行だ。マ・ヌーケに一度会っておくかどうか考えているんだ。」
看守「あ〜 会っても良い事なんてありませんよ!まぁ、勇者一行なら、向こうがすり寄ってくるかも知れませんが。関わると品位を落としますよ?確実に悪影響はあると思います。」
ハロルド「そんなにか?」
看守「ここだけの話なんですが、マ・ヌーケは最近貴族とのパイプを持つようになったらしく、権力を手に入れつつあるようです。あの強欲が富だけでなく権力をも手にしたら、まあ間違いなく、この街に政治介入してくるでしょうね。ゆくゆくは街の支配を考えるかも・・・
そうなったら、考えすぎかも知れませんが、街の若い娘が売られるなんて事も・・・いや、流石に考えすぎか・・・」
ハロルド「そうか・・・」
看守「俺には娘がいますんでね。マ・ヌーケに目をつけられないと良いのですが・・・」
ハロルド「そうだな。。」(・・・)




