03 れのちゃん
あの日、公園で出会った一色伶音はすっかりあたしと仲良くなった。
今では出会った公園で放課後おしゃべりする仲だ。
「ねえ、れのちゃんってさ」
呼んでみたら、
伶音は一瞬だけ目を丸くした。
「……なに」
「その、れのちゃんって呼んでいい?」
少し間があって、
それから、口元がゆるむ。
「別に。好きに呼べば」
その笑い方を見て、
あたしは思った。
あ、れのちゃんって、こんなふうに笑うんだ。
なんか、可愛い。
それから、少しずつ話すようになった。
自販機の前で財布を落として、
小銭を全部ぶちまけたときも、
れのちゃんは黙って一緒に拾ってくれた。
「案外、抜けてるよね」
そう言って、
小さく笑う。
その「くすっ」が、
かわいかった
あたしが男の子だったられのちゃんのこと好きになるなーって思った
その流れで、
元カレの話をした。
「記念日とか、全部あたし任せでさ。
忘れてたって言えば許されると思ってるし」
「へえ」
「浮気してたくせに、
問い詰めたら逆ギレだよ?」
言いながら、
自分でも笑えてきた。
「ほんと、
汚ねえ川の土の中に帰ればいいと思う」
一瞬の沈黙のあと、
れのちゃんが吹き出した。
「……言い方」
肩を揺らして、
くすって笑う。
それにつられて、
あたしも笑った。
ああ、もう大丈夫だなって、
そのとき思った。
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「れのちゃんさ」
ある日、
元カレ——悠馬が、
軽い調子で声をかけた。
「彼氏いないんでしょ」
れのちゃんは、
少し首を傾ける。
「悠馬は?」
「俺?
まあ、今はいないみたいなもん」
そう言って、
距離を詰める。
れのちゃんは、
否定もしないで、
ただ曖昧に笑った。
「ふーん」
それだけ言って、
目を逸らす。
その態度が、
どこか思わせぶりで。
悠馬は、
それを都合よく受け取った。




