第9話「対面式の前夜祭」
すみません、カクヨムの方は投稿済だったんですが
こっちに投稿するのすっかり忘れてました。
今回は湊斗と妹の会話メインです。
明日。
明日は休日に久遠さんと会える。
そう、つまりこれはデートなのだ。
久遠さんとどこかへ出かける。
紛うことなき、デート。
ああ、デート。
甘美な響き。
デート、素晴らしい。
永松と高本さんさえいなければデートだ。
いやある意味、ダブルデートのようなものか?
ダブルデートか?ダブルデートなのか??
妄想が爆発し、興奮が抑えられなくなった俺はベッドで枕に顔を伏せてもぞもぞしていると。
「…何してるのお兄ちゃん」
なッ!?
「み、見たのか」
見られたッ!?
というか、なぜドアがッ!?
いや、違う!
こいつ、またノックしなかったんだ!
ノックしろといつも言っているのに!
な、なんて醜態を見られてしまったんだ…
「…何、ストレス?」
「違うって」
「もしかして、学校でいじめられてる!?
誰がいじめてるの!?
私が許さないんだから!」
おぉーう、妹の愛が重い。
妹よ、気持ちは嬉しいが誤解なんだ。
「いじめられてねーよ」
「ホント?強がってない?」
「強がってねーわ」
「そう?なら…何してたの?」
「いや、ちょっと明日出かけるから…
テンション上がっちゃって…」
「出かけるからテンション…?
明日、どこに行くの?」
「永松たちとランランポートにな…」
「え、ずるい!私も行きたい!」
よせ、来るな!
お前がいると、久遠さんと2人きりになれるチャンスがゼロに等しくなるから来るな!
「いや、明日は永松以外の友達も来るから…
気まずいだろ?」
「それって?斎藤さん?」
「…いや、久遠さんと、高本さんって子」
「…ひょっとして、女?」
「…え?あ、ああ…そうかもな…」
「お兄ちゃんが、あたし以外の女の人と
休日に遊びに出かけるってこと…?」
「え、ああ、そうなるな」
「う、浮気だー!」
「はあ!?」
「お兄ちゃんがほかの女にたぶらかされた!」
「おい妹よ!愛が重いぞ!」
「お兄ちゃんが…デート…」
「あ、いやデートでは…」
「ねえ、この間友達と電話するって言ってたのって」
「ギクッ」
「アレ…女の人と、ってこと…?」
「ギクギクッ」
「お兄ちゃん…嘘だよね…」
「あ、いや…その…」
「お兄ちゃん…」
ヤバい、ヤバイヤバイヤバい!
妹の目がヤバい!おれは殺される!
人生のフィナーレ、今日だったのか!!
おれはヤンデレ妹に殺されるんだ…!
「というのは冗談で。怖かった?」
「おい、洒落になってねーぞ」
「ごめんごめん。
そっかー、お兄ちゃんがデートかあ」
「デートってわけじゃ…ない」
「あれ?ダブルデートじゃないの?」
「いや、なんというか…」
なんかもうめんどくさいので、
妹には本当のことを伝えてやることにする。
別に隠すようなことでもないし。
「なるほどなるほど。
つまり、お兄ちゃんは"永松さんと高本さんをくっつける"作戦を利用して久遠さんって人とお近付きになろうとしてるんだね?」
「はい、その通りでございます」
「確かに、その機会は逃せないねっ」
「だろ?」
「ねえ、やっぱ私も着いてっちゃダメ?」
「なんでだよ、ダメだよ」
「久遠さんってどんな人なの?ねえ気になる!」
「久遠さんは…大人しい印象だけど、言いたいことはズバッと言えちゃう強い子なんだけど、恋愛になると奥手だったりする。あと意外とゲラでよく笑うからかわいい」
「ベタ惚れじゃん」
「そうだよ?」
「は、恥ずかしげもなくそんなことを…!
あれ、恋愛になると奥手、ってなんで知ってるの?ストーカーなの?」
「ちげーよ!久遠さんは斎藤のことが好きで、告白したこともある、って偶然本人から聞かされたんだよ」
「いや、それどういう状況?」
「斎藤が部活の用事があるとか言って、俺を放置してたら偶然にも忘れ物を取りに来た久遠さんと二人きりになり、テンションが上がっていたら斎藤のことをいろいろ話され、ガン萎えした日があってな」
「情緒グチャグチャにされてるじゃん…
てか、久遠さんは斎藤さんが好きなの!?
これはなかなかの三角関係だねえ」
「で、斎藤に振られて泣いてたな」
「ふ、振られちゃったの!?
斎藤さんなんで振ったの!?」
「あいつ、自分に自信ないから…
自分と一緒にいると久遠さんのイメージが下がる、とか何かを気にしたらしい」
「はあ?なにそれ!そんな振られ方、私だったら絶対いやなんだけど!」
「だよなあ…。
しかも今度は斎藤のやつが久遠さんを意識し始めてさ」
「はあ!?自分が振って傷つけたくせになんなの!?」
「わかる〜まじそれな〜!
…まあ、あるあるだよな。
何とも思ってなかった子に告られた途端、
急に意識しちゃうやつ」
「お兄ちゃん、ラブコメの知識で恋愛語るのやめて。
そんな経験ないの知ってるんだから」
くっ、バレたか…。
ラブコメの知識で何が悪い!
お前だって部屋に大量の少女漫画があるの知ってんだぞ…
恋愛マスター面してるけど、お前に彼氏がいないことも知ってんだぞ…!!!
かわいそうだからあえて指摘はしないけど!
「でもさ、女の子の告白にそんな答え方する斎藤さんより、お兄ちゃんのがマシだよ!」
「俺、マイナスからのスタートなのなんなの」
「お兄ちゃん、久遠さんを奪っちゃいなよ!」
「何を言うんだ君は。久遠さんが斎藤のものだった瞬間なんか一度もないぞ」
「お兄ちゃん、斎藤さんに当たり強くない?
一応、1年からの友達だよね?」
「今のヤツは俺にとって、ただのライバルさ…」
「お兄ちゃんに分があるとは思えないんだけど」
「ひどい」
「私はお兄ちゃんのこと大好きだけど、
お兄ちゃんの魅力は万人受けしないと思う」
「あのな、俺のかわいいラブリーな妹よ。
好きだったら何を言ってもいい訳じゃないんだぞ」
「お兄ちゃん、そんなに拗ねちゃ…いや♡」
あざとい〜!!!
我が妹、あざとかわいい〜!!!
こんなことされたらこいつのクラスの男子はイチコロだろ!!
まあこいつ、実は俺以外には無愛想だからこんなこと他の誰にもしないだろうけどな。
半年くらい前にクラスの連中の一緒に歩いてるのを偶然見たことあるんだが、コイツ死ぬほど無愛想で頑張って話しかけてた男子の顔も死んでたのをおれは見ている!
そんな場面見られてたら恥ずかしいだろうからあえて言っていないが!
俺はかわいい妹のために気遣いができる良いお兄ちゃんなのだ!
「お前な。俺は長男だから、お前のあざとかわいいムーブにも我慢できるけど、次男だったら我慢できなかったぞ」
「それ使い方違うから。怒られるよ」
「俺は責任から逃げないから大丈夫だよ」
「ところで、久遠さんをいつお家に連れてくるのかな?」
ナチュラルに無視された。
某炭焼き屋の長男ごっこには付き合ってくれなかった。
ムカつくので竹筒を加えさせようかしら。
というか、何言ってんのコイツ!?
「は!?なんでそんなに話になるんだよ」
「久遠さん、だったかしら?
どんな子なのか、品定めをさせていただかないとね」
「お堅い家族の母親ムーブやめて」
「何言ってるの!恋に盲目なお兄ちゃんは久遠さんに対して客観的意見を述べることが出来ないのは見え見えだから、私が客観的にチェックしてあげるの!」
「兄の恋愛事情に過干渉気味のブラコン妹めっちゃめんどくさい」
「私はお兄ちゃんのこと大好きだから!お兄ちゃんの幸せが私の幸せなの!」
「嬉しいけど重いって」
「でもお兄ちゃんとは結婚したくない!」
「いやそこは現実的なのかよ」
「お兄ちゃんのことは大好きだけど、恋愛対象には決してなり得ないの。兄妹だし」
「現実的な線引きのできる妹、とてもえらい。
ちなみに俺、お前に彼氏ができたらお前の彼氏のことめちゃくちゃ品定めするからな」
「お兄ちゃんも大概私のこと大好きだよね」
「こんなお兄ちゃん子の妹、大好きじゃないわけないだろアホか」
「そういうストレートな愛情表現を私以外にもできるようにした方がいいよ」
「正論やめて」
「だから高1の時も彼女出来なかっ」
「やめてくれェーッ!!!!」
明日は、ついに永松と高本さんの対面式。
あわよくば久遠さんと二人の時間を…!
そして、あの後妹から依頼されたタスクの
"久遠さんの写真をゲットする"を果たさなければならない。
気が重い。
どういう流れで写真撮ればいいんだよ。
まあ、それは明日考えよう。
もう寝る!
てか楽しみすぎて眠れない!ヤバいかも!!
その後、俺はベッドしばらく眠れない夜を過ごし、ようやく寝付いたのは3時前くらいだった。
深央ちゃんのキャラに関してはブラコンでお兄ちゃんに甘いノリの良い子だけど、別にヤンデレ属性は持ってもなければ兄と結婚したがってるタイプの妹キャラでもない、というのは明確に線引きしています。
深央ちゃんは普通に彼氏募集中ですが、
お兄ちゃん以外の人にはドライなのでなかなか男を寄せつけません。




