第44話「みんなに報告するぞ!」
先日のデートにより、俺は『好きな子に告白した。好きな子は告白を受け入れてくれた。そして俺は…』状態となった。あらたな『そしおれ』となった所で、この物語は終わりを迎える…。
と思っていたのか?
付き合ったら終わりな訳がない。世の中には付き合うまでがピークなんて論調があるが、俺は全くそうは思わない。むしろ、カップルというのは付き合ってからが本番だ。ここからが俺たちのステージだということで、俺とあおいたんの花道オンステージはまだまだ続くのである。
今思えば、青春ラブコメにしては王道シチュエーションをあんまりやってこなかった気がしている。体育祭、文化祭、修学旅行エトセトラ。
体育祭も修学旅行も特に恋愛イベントは皆無でクソつまんなかったが、一応何があったかダイジェスト形式で報告しておこう。
体育祭は永松がやたらやる気を出してウザかったし、組体操アンチの俺はダンスを選択して校内全生徒にダンスを踊っているのを見られ、あおいたんには可愛いダンスだとしばらくいじられた。
なお、持久走や綱引き、二人三脚などで俺は全く活躍することなく、障害物競走では特に面白いパートもなく無難にこなしてしまい、クラス中から哀れみの目線を向けられた。
借り物競争にも参加していないため、借り物のお題が"好きな人"とかそういうのであおいたんを連れていくみたいな王道イベントも発生せず。ちなみにうちのクラスは優勝しなかった。
修学旅行は東京に行ったが、当時は高本さんと付き合ってない絶妙な関係値だった永松と、まだ久遠さんに振られておらず雨宮とぎこちない関係になってもない斎藤、そして修学旅行を楽しむ気が全然ない陰木田くん、そして俺という変なグループになったおかげでデズモンドランドもそんなに楽しめなかったし、いちばんの思い出はデズモンドランドでスペースウォーズのライトソードを購入できたことだ。1000円もいかないくらいの価格だったので光らないし音も鳴らないが、伸縮ギミックを搭載している優れものだ。
ライトソードはトイザマスとかで買おうとすると、数千円はするし、大人向けのものはとんでもねえ値段だからな。お財布に優しくて助かった。
ちなみにアレは今でもたまに振り回して遊んでいる。妹にも1個買ってお土産として渡した時は微妙な顔をされたが、なんだかんだ気に入ってるみたいで、時折リビングで遊んでは母さんに怒られているのを見かける。
文化祭に関しては説明は不要だろう。謎の告白大会で永松と高本さんがくっついて、渡部はあおいたんはアッサリと振られ、女神アカリンは渡部に愛想を尽かした。うちのクラスのメイド喫茶は女子のメイド服姿を見に全校生徒が集まったので、そこそこ人気でなんと優勝…することもなく、普通によそのクラスのお化け屋敷が優勝した。
まあいい。冬休みに入る前に、俺と葵ちゃんは付き合い出したので、友人たちに一応報告しておこう。
え?クラス中に大々的に報告することはしない。なんでそんなことしなくちゃならんのだ。
そんなことをするのはクラス1の美少女と付き合っているということになっているが実は付き合っておらず、ニセの彼氏を演じさせられている妙なカップルくらいだろう。
「おはよー湊斗ー!」
駅まで登校中の俺に何者かが話しかけてきた。
俺の最寄り駅周辺に住んでる友人なんてどうせアイツだ。
そう、ソイツの名は…
「ナンガマッツ!」
「俺、そんな名前じゃないぞ」
我が友人、ナンガ・マッツだ。
「湊斗〜この間のデート、どうだったんだよ〜!なにか進展あったか!?あったか!?なかったか!どうせお前はないだろうな!これだから湊斗はダメなんだ!俺と舞華ちゃんを見習え湊斗!」
「俺と葵ちゃんがいなかったら付き合ってもないくせによく言うわ」
「ん、"葵ちゃん"…?お前、久遠さんの呼び方変えたな!何故だ!何故変えた!?」
う、うるせえ…声デケェ…。
ちなみに呼び捨ては違和感がありすぎてしっくり来ないとあおいたんから言われてしまったのでその後、"葵"と"あおいたん"の間をとって"葵ちゃん"と呼ぶことにした。あおいたんと呼んだら別れると脅されてしまったので、妥協せざるを得なかったんだ。
「その件でご報告があります」
「ま、まさかお前…お前ェッ!!」
「俺たちは、付き合っている!」
「な、なにィィィィィィィッ!!」
なんだろう、この茶番は。永松のノリが朝から鬱陶しすぎて友達やめたくなってきた。コイツ、登場して間もない頃はモテまくりのイケメン親友枠だったはずだが、いつの間にこんなわけのわからない奴になってしまったんだろうか。1年間で変貌を遂げすぎだろ。
「しっかし、ここまで長かったなあ?」
「43話くらいかかってしまった」
「何の話だ?まあいいや、舞華ちゃんに
も報告するのか?」
「あおいた…葵ちゃんがしてるんじゃないかな」
永松のニヤニヤした目線が非常に不快だ。LIMEの名前はナンガマッツにしておこう。
「他には誰に報告する予定なんだ?」
「神崎と…あと…斎藤」
「斎藤?久遠さんに振られた相手に勝利宣言するためか?」
「雨宮からの逃げ道を塞ぐためだ。葵ちゃんが俺と正式に付き合いだしたことで、奴の片思いは完全に終わりを迎える。そして雨宮 翠に対して抱いている気持ちに素直になるという流れだ。見事だろう…フハハハハ!」
「黒幕の暴露タイムかよ」
「ちなみに今の話は雨宮と一緒に計画したぞ」
「俺より先に雨宮ちゃんに報告してる!?」
「いや、日曜日に『デートの結果はどうでしたか?』ってLIMEが来て、その流れでな…」
「デートのこと知られてたのか?」
「あ、あ〜…お前、知らないんだっけか」
そういえば、付き合いたてのナンガ・マッツとタカ・モットに配慮して斎藤と雨宮の仲直り大作戦にはあんまり2人を巻き込んでないんだったか。
「実はな…かくかくしかじか四角いムーヴで」
「な、なんだと!?そんな面白そうなイベントがあったのに俺たちをハブったのか!?」
「もう俺以外でも良いのかよお前」
「お前らくっついちゃったし、もうあんまり興味ないなあ」
「人の恋路をエンタメ消費しやがって」
「まあまあ。しかし、雨宮ちゃんの恋…上手くいくといいな」
「…ああ」
まあこれから先はあいつら次第だ。俺はもうサポートしてやらんぞ。俺にそんな暇は無いんだ。俺にはかわいい彼女がいるのだから。
ということで、ここからは登校後の話。
次に誰に報告しようか考えたところ、斎藤に報告することにした。
「というわけで、私も同席しますよ」
「何が"というわけ"なのか教えてくれ」
「…雨宮ちゃん、元気?」
「おや、これはこれは。日向先輩の可愛い彼女こと久遠先輩ではありませんか」
なんだその口調。お前日に日におかしな奴になっていくな。ところでおかしばっかしが最近、勢力拡大してるよな。いろんなところに出来てきてて俺はビックリしてるよ。
「…な、なにそのノリ」
「そうだぞ。葵ちゃんが困ってるだろ?俺の可愛い彼女なのは周知の事実だが」
「…み、湊斗くんやめてよ」
「ほらこの反応!照れている!可愛い!最高に可愛いだろ!雨宮もそう思うよな!?」
「久遠先輩と付き合い出したことで、久遠先輩大好きアピールを本人の前でするようになりましたね…」
「好きだという気持ちを伝えない男よりも、彼女への好意で溢れている男の方が俺はいいと思うんだ。葵ちゃんもそう思うよな?」
「…それはそう思うけど。好きって伝えてくれる方が私は嬉しい」
「ほら、葵ちゃんもこう言ってるし」
「限度がありますよ」
「限度とかないだろ。なあ、葵ちゃん」
「…限度とかない。思う存分私のこと好きって言っていいよ」
「ほら限度がないらしいぞ」
「こ、このバカップル!永松先輩たちより酷い有様じゃないですか!」
「そしてこれを今から斎藤に見せつける」
「すぐにでもやりましょう」
「態度が急変するの怖いからやめろ」
その後、斎藤にも報告したが、"まあそうなる気はしていたよ"というオーラをしっかり出してしてウザかったので、待機していた雨宮を召喚して後輩にグイグイこられて困っている斎藤くんになってもらった。
神崎にも報告したが、『これで私と葵ちゃんは湊斗の元カノと今カノね』などといういらんことを言ってくれたおかげであおいたんの機嫌が少し悪くなったが、お互いに好意などなくすぐ別れた話を思い出したのか、スン…と真顔になっていた。
ところで神崎はアホの彼氏のことが好きなのかどうか割と気になっている。ふたりがそういう雰囲気になってるの見たことない。そのうち別れるんじゃなかろうか…?
あと、俺たちの共通の友達である女神アカリンにも報告した。
俺たちがくっついてくれたことを祝福してくれた。おめでとうおめでとうとあおいたんに抱きついていた。俺が女神アカリンに恋愛相談していたように、実はあおいたんも女神アカリンに恋愛相談していたらしい。
あおいたんが時折見せる不意打ち攻撃の多くは、女神によるアドバイスを実行したものらしい。ありがとう、おかげで小悪魔可愛いあおいたんを俺は堪能できた。
陰木田くんには別に報告はしなかったが、先程の誰かとの会話を聞いていたのか、『このクソリア充め!日向燦斗!くたばれ!』と捨て台詞を吐いてトイレに向かっていった。誰か燦斗だ、俺は湊斗だよ。そんなクラス1の美少女に彼氏のフリをさせられるような間抜けな男みたいな名前はしていない。
ということで、皆に報告してみた…はこれにて以上となる。家族に報告はまだしていないし、あおいたんのご家族にもまた会ったことがないのでそれは追追やっていこうと思う。
とりあえず今回は友人たちに報告完了。




