第36話「デートの予定を立てます」
さて、ついにあおいたんとのデートの約束をすることに成功した訳だが。
ただ、その…うどん食べ行くだけなのはデートとしては少々味気ない。
ましてや、俺にとっては告白という一世一代のイベントが控えているのだから。もっとデートデートしたデートがしたい。
実は俺はロマンチスト日向なのだ。
だから"うどん食べるだけってのはねえ…"というのをあおいたんに匂わせてみたのたが、かといってどこかへ行きたい場所もない。
さて、どうしたものか。
誰かに相談するのはアリだ。
こういう時は高本や神崎、女神アカリンに相談してみようか?
いや、待て。
イマドキ女子のラブリーマイシスターなら、何かいい感じのデートスポットを知っているかもしれない。
あー、いや、待て。
言うほどイマドキ女子か?ただのブラコンっ子な気がしなくもないのだが…いや、お友達ともしかしたらそういういい感じの場所に行っている可能性もある。
何も、いい感じのスポットには恋人同士以外は行ってはいけないなんていう決まりはない。そんな決まり事があったら、うちのクラスの陰木田くんはどうなる?
あ、陰木田くんというのは教室の隅っこでラノベを読んでいるやつのことだ、同じラノベ友達として斎藤とはそこそこ仲が良さそうな印象がある。
教室の隅っこでラノベを読むという特徴が完全に斎藤とキャラ被りしまくっているが、実は陰木田くんが読んでいるラノベは斎藤の好きな作品以上に挿絵の女の子の露出度が高かったり、そういう際どいやつばかり読んでいることを俺は知っている。
陰木田くん、斎藤と同じパターンで"なに読んでるの?"と気軽に話しかけてしまった俺を許してくれ。
でも、教室でそんなとんでもないラノベ読んでる方にも非があるぞ。電車の中でわいせつなビデオを見てニヤニヤしている社会人のおじさんほどではないが、TPOは弁えるべきだ。
俺は陰木田くんとは話が合わず、仲良くしていないのだが、斎藤は陰木田くんとそこそこうまくやっている。
ちなみに最近、斎藤はちょこちょこ陰木田くんと話している時間が増えている。
ちなみに俺や雨宮と話していない時は基本的に陰木田くんと一緒にいがち。故に最近の斎藤はあの一件以降、雨宮と気まずそうにしているから陰木田くんと一緒にいがち。
唐突に新キャラについて言及してみたところで、本題に戻るとする。
深央の部屋のドアをノックする。
ノックもせずに年頃の女子の部屋に入るなんて例え、兄であろうと許されることではない。例えその時は妹の合意があろうが、後から実は嫌だったと告発されてしまったら俺は確実に負ける。いや妹に鍵ってそんなことしないだろ。
うーん、大事な人を相手にすると、何故かこういうネガティブな妄想をしてしまうのは俺の良くないところだ。あおいたんとの関係がいつまで経っても進展しておらず、斎藤やあの渡部にすら先行して告白することを許してしまったのは俺のネガティブな部分が悪さをしているに違いないのだが、そんな自分でもあおいたんをデートに誘うところまではきた。背中を押してくれてありがとう、女神アカリン。
ガチャッ。
部屋の中からドアが開けられる。
「お兄ちゃん、ノックしてからの無言はちょっと怖いよ」
おっと、妹の部屋の前で物思いに耽ってしまったことで、妹に不気味がられてしまった。女神アカリン、私はあなたを許さない。
「悪い、ちょっと神にお祈りしてたんだ」
「私の部屋の前でそういうことはやめて、というかお兄ちゃん、いつから特定の神を信仰するようになったの?」
「俺のクラスのギャル女神アカリンをだな」
「あ、じゃあもういいです」
深央がドアを閉めようとするので、慌てて引き止める。
「ちょっと待って!用があって来たんだよ」
「お兄ちゃんなら用がなくてもウェルカムだよ」
「ならなんでドア閉めようとした!?」
「お兄ちゃんが知らない女の話しだしたから」
「ほんのジョークやんけ〜。で本題なんだが」
「せめて部屋に入ってから本題入ってよ。ほら」
チョイチョイと手招きされたので、ホイホイと深央の部屋にお邪魔させてもらうことにする。
「それで、どうしたの?」
「来週の土曜日、久遠さんとデートなんだけど、久遠さんにどこ行きたいか聞いたらうどん食べたいってだけ言われて、それだけはちょっと味気ないよなあと思ったんだけど、どこに行けばいいか分かんなくて。あと俺その日に告ろうと思ってるのよね。斎藤が告って俺が告らないままでいるのも変な話だし。そこで、告白イベントにも向いているそこそこいい感じのデートスポットを知らないかをお前に聞きたかったんだけど」
「ちょ、ちょちょっと待って!情報量!情報量!!1個1個整理させて!」
経緯と要件を簡潔に伝えたつもりなんだが、そんなに情報量が多かっただろうか?
「お兄ちゃん、久遠さんとデートするの!?」
「誘ったらOK出してくれた」
「久遠さん、デートでうどんが食べたいって言ったの!?」
「食べたいなら仕方ないよな」
「お兄ちゃん、まだ久遠さんに告白してなかったの!?今まで何してたの!?」
「何もしてなかったんだよ」
「斎藤さん、久遠さんに告白したの!?」
「斎藤のことを好きな後輩女子の雨宮が斎藤に告るも"好きな人がいるから"とあえなく振られ、その斎藤も久遠さんに告るもなんやかんやで振られたらしい。詳細は知らん」
「あ、雨宮って!?斎藤さんのこと好きな人が他にもいたの!?」
「いたよ。ちなみに俺と雨宮は不仲だ」
「で、おすすめのデートスポットを私に教えろって!?」
「そう。どこか良いとこ知らないかな〜と思って」
「お兄ちゃん」
「はい」
「彼氏いない歴=年齢の女子がおすすめのデートスポットに詳しいわけないでしょ」
「いやお前、学校じゃモテてるだろ。デートくらいしたこと」
「ないよ」
「いやでも」
「ないって」
「いや流石に」
「ないから」
「はい」
うん、ないらしい。妹のことが心配になる。
こんなに可愛いのになんで彼氏が出来ないんだ?ブラコン拗らせてるからか?俺も大概シスコンだが普通に好きな子もいるし、恋愛願望もめっちゃあるんだがなあ。
「じゃあ、友達とそういういい感じの場所に行ったりは…」
「それならあるよ。この時期だといつも、女の子たちと一緒にみたらし駅のクリスマスマーケット見に行ったりしてるね」
なんだそのお団子にかける美味しいやつみたいな名前の駅は。
「みたらし駅周辺はオシャレなカフェとかもちょこちょこあって、デートに向いてるよ。カップル多いし」
うへ、デートじゃなかったら近づきたくねえ場所だ。
「ありがたい情報だ。ありがとう!愛してる」
「私も愛してるよお兄ちゃん」
「お前はほどほどにしなさいよ」
妹に感謝を述べ、部屋を後にする。
いくら仲が良いとはいえ、お年頃の女の子の部屋に俺みたいなクソオスが入り浸るのは宜しくないからな。実は妹には彼氏がいて、彼氏とイチャイチャLIMEを送りあっているかもしれない。いやそれはないか。まあ実際は妹の部屋が割と女の子女の子してるから、耐性のない俺が長時間いると被ダメでダウンしてしまうからだ。
さあ、妹のおかげでみたらし駅のクリスマスマーケットといういい感じのデートスポットを提示できるぞ。
というわけで、約束の時間になったので久しぶりにあおいたんとの通話を開始する。
震える指で通話ボタンに触れ、恐る恐る携帯を耳に近づける。
コール音が何回かすると、向こうからかわいい声が聞こえてきた。
『…もしもし?』
「どうも」
『…何してた?』
「晩飯食べて、妹とお話してた」
「…妹さんと、仲良いんだね」
「まあね〜。そっちは何してた?」
「…晩御飯食べて、お姉ちゃんとお話」
「お姉さんと仲良いんだね」
「…まあね。ふふ」
なんだこの中身のない会話は。楽しすぎるだろ。好きでもなんでもないヤツが相手なら苦痛でしかないくだらない会話も、好きな人相手だと無限にできる気がするから恋というものは不思議だ。付き合いたい。ただちに付き合いたい。
『…来週の土曜日、他に行ってみたいところ、あるの』
「おっ、聞かせてみ」
『…みたらし駅のクリスマスマーケット、なんだけど』
「…プッ」
『…な、なに?』
「いや、俺もさっき妹と話しててさ」
"デート"というワードを使わず、さっきの会話の流れを軽く説明した。
『…そうだったんだ。実は私もお姉ちゃんに同じようこと聞いたんだよね』
「マジ?」
『…うん』
うどん以外特に思いつかなかったのかよ。
そんなにうどん食べたいのかよ。かわいいから全て許される。
「じゃ、行こうか。クリスマスマーケット」
『…うん』
「んーじゃ、もう夜遅いしそろそろ終わろうか」
『…ん。また明日、学校で』
「んじゃあ、また明日ー」
来週の土曜日に早くならないかな。
楽しみ半分、緊張半分って感じだ…




