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好きな子が友人に告白した。だが友人は好きな子を振った。そして俺は…  作者: 替玉 針硬


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第34話「冬の花火大会!後編」

「…もういいか?」

「グスッ、ええ。大丈夫です」

「なんか、飲むか?奢るぞ」

「…お気遣いありがとうございます。ではお言葉に甘えて…暖かいお茶でも買ってください」

「はいはい」

近くの自販機で暖かいお茶を買ってきて、雨宮に手渡す。

まあ、今日くらいはいつものノリは抑えて優しくしてやることにする。


「…ありがとうございます。美味しいです」

「するならお茶のメーカーに感謝しとけ」

「…素直じゃないですね。日向先輩のそういう所は直した方がいいと思います」

「ほっとけ」

全く、なんで俺がコイツの慰め役をせねばならんのだ。


「おーい湊斗〜」

「あ、お前ら…せっかく2人きりにしてやったのに」

「いや、そうは言うけど売店そんなに広くないし、花火まで待つしかないしで暇になっちゃって…って、雨宮さんどうしたんだ?」

「ああ、まあ…ちょっとな」

「どうしたの?まさかアンタ、雨宮ちゃんに何かしたんじゃないでしょうね?」

「ああ、実はからかいすぎて泣かせちゃったんだよ。イジリがブラック過ぎた」

「全く何してるのよ…ってあれ、葵と斎藤は?」

「神社の方で斎藤が話があるんだってさ」

「…そっか」

「雨宮さん、湊斗に泣かされたのか?これは久遠さんに報告だなあ」

「やめてくんない?好感度めちゃくちゃ下がりそうだから」

雨宮の目が赤い理由、久遠さんと斎藤が今この場にいないこと、などからいろいろ察しがついているかもしれないが、永松と高本さんもそこは配慮して、俺の適当な嘘に付き合ってくれている。

まあ、慰めムードになりすぎても雨宮の居心地が悪いだろうから、これでいいのだ。



「…斎藤くん、話って?」

「久遠さん、"あの時"は本当にごめん」

「…"あの時"?」

僕は、あの時のことを思い出していた。

そう、久遠さんが僕に告白してくれたあの時。

そして、僕が久遠さんを傷つけたあの時。


『…私、実は…斎藤くんのことが、好きなの。もし良かったら私と…付き合ってくれませんか?』

『あ、ありがとう…でも、僕と君じゃ釣り合わないと思う』

『…そう。分かった』


「あの時、久遠さんは自分の気持ちを伝えてくれた。勇気がいったと思う。でも僕は、"釣り合わないから"なんて理由でそれを断った」

「…そう、だったね」

「あんな断り方をすれば、相手を傷つけるだけだった。不誠実だった。本当に申し訳なく思う。遅いかもしれないけど、謝らせて欲しい。本当にごめん」

「…うん」

「ここからする話は、本当に自分勝手な話になるんだけど、それでも聞いて欲しい」

「…?」

「久遠さんが告白してくれてから、僕は久遠さんのことを異性として意識するようになった。久遠さんのことをもっと知りたいって思うようになって。気が付けば、僕は久遠さんのことを好きになっていたんだ」

「…うん、気づいてたよ」

「君さえ良ければ、僕を君の彼氏にしてもらえないかな?」

なんて自分勝手な告白なんだろう。

我ながら、嫌になる。


「…雨宮さんは、知ってるの?」

「実はさっき、雨宮さんに告白されたよ」

「…」

「ほかの人を好きなのに、そんな状態で雨宮さんを好きになっても彼女は幸せにならないと思って、断ったけど」

「…斎藤くんらしいね」

「それで、僕の告白の返事なんだけど…」

「…私、斎藤くんのことがずっと好きだった。目立たないけど実はとても優しい斎藤くんのことを素敵だと思ってた。そんな斎藤くんに私のことを好きになって貰えて、告白もしてくれて、嬉しく思う」

「うん…」


「…でも、ごめんなさい。今の私じゃ、斎藤くんの気持ちに応えることは出来ない」

「…理由を聞いてもいいかな?」

「…私は、あれから斎藤くんのことがよく分からなくなっちゃった。"釣り合わない"っていう言葉の意味ばかり考えてた。多分、斎藤くんの意図とは違う解釈をしたりしちゃってた時もあると思う」

「本当に、ごめん」

「…それと、今の私には他に好きな人がいるの。それが一番の理由」

「言わなくても、分かるよ。それが誰なのかは」

「…だから、ごめんなさい」

「いや、いいんだ。分かってたことだから」

「…斎藤くん」

「話はこれで終わり。みんなの所に戻ろう」

予想はしていた。

今の久遠さんはきっと、僕じゃなくて"彼"のことを好きなんだろうというのは分かっていた。

だから悔いは無い。

不思議な感覚だが、彼女への気持ちに整理がついたし、意外とスッキリとした気分だ。


「あ、戻ってきた」

斎藤と久遠さんが戻ってきた。

どうやら話は終わったらしい。

ど、どうなったんだ…?

斎藤はなんだか晴れやかな顔をしている。

ま、まさか付き合ったのか…?

い、いや…なんかそんな感じもしない。


「斎藤、ちょっといいか?」

「…ああ、いいよ」

「私もちょっと、斎藤先輩に聞きたいことがあります」

「…なら、雨宮もついでに来ていいぞ」

俺は斎藤と雨宮を連れて、久遠さんたちに会話がギリ聞こえないくらいの距離の場所に移動した。


「お前、久遠さんに告ったのか?」

「…ああ」

「結果はどうなったんですか。一応聞かせてください」

「…ダメだったよ。やっぱり振られた」

「にしては、晴れやかな顔してるな。振られて喜ぶドM体質なのか?」

「そんな特殊な性癖はないよ!ただ、気持ちの整理が着いて少しスッキリしたというか、そんな感じだよ」

気持ちの整理、ねえ。

「斎藤先輩は、これからどうするんですか?もう久遠先輩のことは諦めるんですか?」

「最初から僕が入り込める隙なんてなかったし、そもそも最初に告白を断ったのは僕の方だからね。流石にここからもう一度好きになってもらう、とかはないかなって思うよ」

「…じゃあ、私と付き合ってくれたり」

「ごめん。しばらくは…そういう気分にはなれないや」

「…そうですか」

雨宮はしゅんとした態度だが、目は全く死んでおらず、イキイキとしている。

メラメラと燃え上がる炎が目に浮かんでいるようだ。

この子、絶対に自分に振り向かせてみせる!くらいの気持ちでいるんだろうな。

いやはや、本当に強い子だ。尊敬する。


「それはそれとして、振った相手に告白するのは勇気がいったろ?それは素直に凄いと思うわ」

「…そうかな」

「俺は…未だに告れてないからな。その時点で俺よりすげえよ」

「日向は…誰か好きな人がいるのか?」

「わかってる癖に」

「やっぱりそうなんだな。自分の気持ちを伝えようとは思わないのか?」

「お前がしたのに、俺がしないって訳にもいかないしな。まあせいぜい頑張るさ」

「そうか」

「話は終わり。戻るぞ」

結論としては、斎藤は久遠さんに告ったけどどうやら振られたようだ。

理由はあえて聞かなかったが、どんな理由で振られたんだろうな。

他に好きな人がいる?今はそういうのは考えられない?まあ何にしろ、俺が知らなくてもいいことな気がする。

そんなことよりも、斎藤でさえ自分の気持ちを伝えたのだから、俺も頑張らないとな。


久遠さんも、高本さんも、雨宮も、斎藤も。

みんなそれぞれ好きな人に思いを伝えている。


凄いことだ、みんなとても勇気がある。

俺も思いを伝えなければならない。


彼女に、俺の気持ちを知ってもらいたい。

その気持ちに対して、どう返事をするかは彼女次第だが、それでも俺は知ってもらいたい。


だから、伝えることにする。

今日は伝えないが、今年中に必ず伝えようと思う。


そんなことを思いながら久遠さんたちの元に戻ると、花火が打ち上がり始めた。


今日、勇気を出した雨宮や斎藤たちを褒め称えるかのような花火の嵐。


夜空にキラキラと打ち上がっていく花火を、俺はただじっと眺めていた。



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