第21話「後輩女子に絡まれた」
翠ちゃんを書くのは楽しいですね。。。
ツッコミ担当の舞華とは別の楽しさがあります。
斎藤先輩にお叱りを受けてしまった。
あの行動は良くなかったか。
以後、気をつけなければならない。
しかし、有益な情報もあった。
斎藤先輩と久遠先輩はまだ付き合っていない。
そして、久遠 葵には仲の良い男子生徒がいる。
日向 湊斗という2年の先輩。
斎藤先輩からも話を聞いたことがある。
日向先輩は斎藤先輩、久遠先輩の共通の友人なのだろう。
しかし、久遠先輩には日向先輩と付き合っているのではないかという噂がある。
斎藤先輩に振られ、別の相手を見つけたのであれば願ったり叶ったりなのだが、実際はどうなのだろう?
その真偽を確かめるべく、私は再び2年1組の教室へ来ていた。
今回は人気の少ない放課後を狙った。
斎藤先輩もおらず、久遠先輩もいない。
永松という先輩と一緒に帰ろうとしている日向先輩が見えたので、後ろから声をかけることにする。
「日向先輩、ですよね」
「…あ、この間。斎藤の部活の後輩の」
「雨宮です。今日は日向先輩にお話があります」
「それ、今じゃないとダメなやつ?明日の昼休みとかじゃダメ?」
「私としては別に構いませんが、また斎藤先輩に見つかってしまってはいろいろと面倒なので」
「…ふーん、そう。まあいいけど。何?」
「すみません、話をする前に永松先輩はお引取りをお願いしたいのですが」
「コイツ口硬いから大丈夫だよ」
「ですが、万が一にでも斎藤先輩にこの件がバレてしまうとまたお説教されてしまいます」
「雨宮ちゃん、安心してくれ!俺は斎藤の友人でもいるが、一番の親友は湊斗だから!斎藤に何か情報を漏らしたりなんてしないから安心しろ!」
「…日向先輩、永松先輩は先輩のことが好きなんですか?」
「いや、多分違うと思う…けどな」
「そうですか、まあいいです。では本題ですが、日向先輩は久遠先輩と付き合っているんですか?」
なんかそんな質問だろうと思ってたよ!!!
「いや、まだ付き合ってません」
「ふむ。『まだ』ということは、日向先輩は久遠先輩とお付き合いしたいと考えているということですか?」
「アッハイ」
「では精々頑張ってください。私としても日向先輩と久遠先輩がくっついてくれる方が都合が良いので」
「都合が良い?なんで?」
「そ、それは…私が…斎藤先輩のことを…」
あ、あーなるほど。理解した。
雨宮さんは斎藤のことが好きなのか。
アイツ、永松ほどじゃないにしてもなかなかモテるなあ。
「皆まで言うな!状況はだいたい分かったぞ雨宮ちゃん!」
「な、永松先輩?」
「雨宮ちゃんは斎藤が好き、湊斗は久遠さんが好き、斎藤は久遠さんを好きになりつつある、この状況をどうにかしたいんだろ!」
「…え、ええ。それはそうですが」
「湊斗が久遠さんと付き合えば、斎藤は久遠さんを諦める。そしてその失恋のショックを雨宮ちゃんが慰める、そういう思惑なんだろう!」
「…そ、そこまで具体的に説明されてしまうと少々恥ずかしいですが、概ね合っています」
「それで、雨宮さんは俺にどうしろと…?」
「湊斗、お前は難しいことを考えるな!ただ久遠さんと付き合うだけでいいんだ!」
「簡単に言うなよお前…交際というのは相手の合意を得てだな」
「俺が思うに、久遠さんは脈アリだと思う!」
「いやいや、久遠さんは斎藤のことを…」
「日向先輩。久遠先輩は斎藤先輩よりも日向先輩と話していることの方が多いと聞きました。頑張れば可能性はあるかもしれません」
「誰に聞いたのそれ」
「それは秘密です」
だ、誰かクラスに内通者でもいるのか…!?
「それとお願いがひとつあります」
「お願い?」
「斎藤先輩に、その…私のことを先輩がどう思ってるのか、聞いてはもらえませんか」
「異性としてアリか聞けってこと?俺が?」
「はい、ダメですか?」
「いやダメじゃないけど。俺がそんなこと急に聞いたらキモくない?」
「日向先輩が誰にキモがられようと私の知ったことではありません」
「ひどい」
「それと、もうひとつ。斎藤先輩と私が上手く行くために協力をして欲しいです。なので、LIMEを交換しましょう」
「え、まあいいけど…」
「雨宮ちゃん、俺も交換していい?斎藤の協力するからさ」
「構いませんよ。あ、言っておきますが私のことを狙ったりはしないでくださいね。いくら私が文学系美少女だからといっても、私にとって斎藤先輩以外はジャガイモ同然です」
ジャガイモになんか恨みでもあるのかなこの子。
なんか知らんけど永松が珍しく女子に振られる場面を見た後、俺たちはLIMEを交換した。
どうでもいいけどこの子自分にめちゃくちゃ自信持ってるな。いや実際かわいいとは思うけど。
神崎、久遠さんを含めればこれでLIMEを交換した女子三人目だ。
だからといってどうする訳ではないが、ちょっとテンションは上がるよな。
ちなみに母や妹はカウントしてないぞ。
その日の夜。
『斎藤先輩に聞いてくれましたか?』
『どうなんですか?聞いてくれましたか?』
『返事をしてください』
『私のこと無視してるんですか?』
『無視を続けるのなら明日、久遠先輩に日向先輩が好きだってバラしますよ』
「う、うるせェーーーーッ!!!!」
「お兄ちゃんこそうるさいよッ!!」
翌日。
雨宮さんがしつこすぎるので、もう今日聞くことにした。
「斎藤、ちょっといい?」
「ん、日向。どうかした?」
「お前、雨宮さんのことどう思ってる?」
「…え?雨宮って、僕の部活の後輩の?」
「そう、その雨宮さん」
「…面白い子だと思ってるよ。話していて楽しい」
「異性としてはどう?かわいい?」
「うーん、そうだね。確かに顔立ちは整った方だと思うよ。よく同級生からもアプローチを受けるって言っていたからね」
「お前としてはどう思う?恋愛対象としてあり?」
「え?そ、そうだね…。雨宮に対してあまりそういう意識をしたことは無かったかな」
罪深い男だなお前…久遠さんに夢中ってか!?
許さねえぞ!?お前は雨宮ちゃんいっとけよ!!!!頼むから!!!!
「そうか。参考になった」
「な、なんの参考に!?」
「日向のやつ、斎藤とどんな話してるのよ」
「…日向くん、もしかして雨宮さんのこと」
「いや、日向に限ってそれはないわよ」
「…そうなの?」
「そりゃそうよ〜だって日向はあo…」
「…?」
「あ、青いリボンの方が好みなんだから!」
「…日向くん、リボンの色で相手を見てるの…?」
「(許して日向、口を滑らせそうになった私が悪いの…)」
「…日向先輩はそんな特殊な癖をお持ちの方ではないと思いますよ」
「ひゃっ!雨宮ちゃん!?アナタいつからそこに」
「自分で聞くのは恥ずかしいので、日向先輩にしつこくLIMEでお願いして、斎藤先輩に私のことどう思ってるか聞くようにお願いしたので、その内容を確認しに」
「そ、それで日向のやつがあんなことを聞いてたのね」
「…なかなか厳しい結果です。私は先輩に異性としてそこまで意識してもらえていないようです。もっと精進せねば」
翠はいつの間にか現れ、あっという間に帰ってしまった。
「…なんだったのかしら、アレ」
「…」
「葵?どうしたの?」
「…日向くん、いつの間に雨宮さんとLIMEの交換してたの」
葵はどこか、むっとした表情をしていた。
「…あら、葵。アンタ焼きもち?」
「…ち、ちがう」
「あら本当かしら?ふふ、葵ったら」
「ちなみに永松先輩ともLIME交換しました」
雨宮は最後に燃料を投下して去っていった。
「永松くん…!!!」
「…ふふ、舞華。焼きもち?」
「そうよ!!!!」
「久遠さん、高本さん、何楽しそうに話してるんだ〜?」
「フンッ!!!!!」
「久遠さん、高本さんなんか怒ってるんだけど」
「…なんでだろうね」
その日、優希は舞華にずっと冷たくされた。
焼きもち焼いてそうな葵ちゃんかわいいですね。




