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好きな子が友人に告白した。だが友人は好きな子を振った。そして俺は…  作者: 替玉 針硬


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20/24

第20話「中学時代の話は恥ずかしい」

いつもの平和な感じに戻ります。

湊斗と葵のやり取りをお楽しみ下さい。

例の騒動、通称"中村事件"から数日後。

この日は珍しく、湊斗・葵・優希・舞華の4人で昼食を取っていた。


「…そういえば日向くん」

「ん?なに?」

「…この間、神崎さんから聞いたんだけど」

神崎?なんだ?何を聞いたんだ?

まさか久遠さんのことを好きだとバラし…


「…日向くん、中学の時神崎さんと付き合ってたってホントなの?」

「エッ」

おいなぜその話をしたんだ神崎!?!?!?

あの一週間はお互い黒歴史にするんじゃなかったのか神崎!?!?!?


「おい湊斗!なんだその面白そうな話は!初耳だぞ!」

「あ、アンタごときに彼女がいたなんて!しかも神崎ってあの美人の子でしょ!?いやらしい!」

「なぜそこまで言われなきゃいけないのか。まあ、ホントだよ。一週間だけだけどね」

「一週間は実質ノーカンじゃないかしら?」

「…それで」

「え?」

「…どこまでいったの」

「「「何その質問」」」

「…葵、アンタ…すごいこと聞くわね」

「湊斗〜神崎さんとどこまでいったんだよ〜」

「久遠さん、神崎から話聞いたんじゃないの?手繋ぎまでだよ」

「…わかってたけど、ちょっとからかってみた」

「意地が悪いなあ」

「なんだ手繋ぎまでか、つまらんな」

「そうね。期待させるだけさせといてそれはないわよ」

「勝手に期待したのそっちだよね?マジでなんでこんなに言われなきゃいけないの?」

「…それと」

「な、なんすか…?」

「…佐藤さんって人はそんなに可愛かったの?」

「ちょ、やめてマジで」

「なんだそれは!詳しく聞かせろ!」

「誰よそれは!教えなさい!」

「俺が告る前に秒で振られた相手のことはいいんだよ!てか神崎!お前なに色々話してんだ!」

割と近くで彼氏と一緒に昼食を取っていた神崎に苦情を言い渡す。


「あら、いけなかった?」

「いや別にダメじゃないけど結果すげーいじられてるからやっぱダメだわ!!」

「それは私の責任じゃないわよ。ちなみにさっきの葵ちゃんの質問だけど、佐藤ちゃんはかわいい子だったわ。そうね…ちょっと葵ちゃんに似てたかもしれないわね」

「…そ、そうなの?」

「いや…まあ…そう言われればそうかもな〜ウン」

「おいおいそうなのか〜湊斗〜?」

「あらあら。日向ったら…」

例の騒動以降、中村を始めとした永松ファンクラブの皆さんが永松に寄り付かなかったので、永松も伸び伸びと学生生活を送れていそうでなによりだ。

ただし、その分俺にだる絡みしてくる回数が増えたので非常に煩わしい。

そして、永松と高本さんだが、二人で出かけたり例の騒動があったりしてから、また二人の仲が縮まったような気がする。

二人して俺のことをいじってくるようになったので、ウザいことこの上ない。

仲が良いのは良いことなんだが。


あ、例の騒動といえば中村 友希那は担任に厳重注意をされ、事実無根の噂話はやめるようにとクラス全体にも再度、連絡があった。

一応は学校にも来ているが、取り巻きたちは中村を見捨てたらしく、独りで飯を食っていることが多い。

斎藤のやつだったら、もしかしたら中村のことをなんとか救ってあげようとするかもしれないな。

このまま孤立するのは可哀想だ、とか言って。

だが俺は斎藤のように優しい人間じゃないし、ああなったのはアイツが悪い。

まあ俺が原因とひとつといえばそうなのかもしれないが、そんなのは知ったことではない。

俺の行動は行き過ぎたものだったかもしれないが、久遠さんや高本さんが笑って過ごせる今を守れたのであればまあ、悪い気はしない。

あのまま徹底的に追い詰めて、中村のやつが学校をやめたりでもしたら、それはそれで胸にしこりが残りそうだし、久遠さんが止めてくれて本当によかった。

それはそうと、佐藤さんが割と久遠さんに似てるのはなんか生々しいからマジで言わないで欲しかったんだが?なんで言ったの神崎サン?


「…ふ、ふーん…」

久遠さんの様子がおかしい。

なんか…照れているように見えるのは気のせい?

「葵、どうしたの?顔赤いわよ」

高本さん!ニヤニヤして久遠さんをいじらないであげて!普段いじられてるからリベンジのつもりかもしれないけどやめてあげて!

あと永松!俺の方を見てグッドサインするのやめてくれ!口パクで『良かったな』じゃねーよ!

でも照れてる久遠さん死ぬほどかわいい!!


「…」

「…」

珍しく照れてる久遠さんを見ていると、なんだがこっちも恥ずかしくなってしまう。

これが本当の共感性羞恥というやつか…。


「私たち、何を見せられているのかしら」

「全くだ。なんなんだこれは」

俺と久遠さんは、そのまま昼休みが終わるまで黙々と昼食を取り続けるのであった。



放課後。

「…先輩、遅いなあ」

1年生の文芸部員、雨宮あまみや すいはとある先輩部員に思いを寄せている。


その先輩部員の名は、斎藤 泰成。

彼は、決してクラスの人気者というタイプではなく、言ってしまえばクラスの日陰者。だが、実は誰よりも心優しく細かい気遣いができる彼を慕う後輩は多く、雨宮 翠に関しては彼に対して特別な感情を寄せていた。


翠には悩みがあった。

それは、どうも斎藤 泰成に想い人が出来たということだ。

この間、部室に来ていた泰成に『自分が振った子のことが気になってきてしまった』というようなことを言ってきた。

非常にまずい事態だ。

まず、泰成が女子生徒に告白されるというのは想定外だったが、彼の優しい性格を好きになる女子生徒が他にもいてもおかしくない。

その相手は"久遠 葵"という2年生の女子生徒であることまではわかっている。

これはうかうかしては居られないと思った翠は意を決して2年1組の教室まで来ていた。


「あのリボンの色、1年か?」

永松が教室のドアの前でフリーズしている謎の女子生徒を見ながらそう言った。

確かにリボンの色が赤い。赤いリボンは1年生の証であり、2年になってもなお赤いリボンを手放さない奴でなければ1年生だろう。


しかし、1年生がこんなところに何の用だ?

年上の彼氏でもいるのか?なんて思っていると、予想外の名前を口に出した。


「1年の雨宮です。久遠 葵さんはいらっしゃいますか?」

久遠さんの知り合い…?

顔全く似てないけど、妹さんとかかな?

いやでも妹いたっけ…?

お姉さんがいる、ってのは聞いたことあるけど。


「葵、あの子誰?知り合い?」

「…初見」

「なんだろうな?」

久遠さんはトコトコと雨宮という後輩の元へ向かった。


「…私に何か用?」

「あの、久遠先輩。先輩って斎藤先輩と付き合ってるんですか?」

「「「「「「え?」」」」」」

俺、久遠さん、永松、高本さん、神崎、そして斎藤が同時に疑問の声を上げた。


「どうなんですか!付き合ってるんですか!」

「…付き合ってないよ」

「そうなんですか!でも久遠先輩って確か斎藤先輩にこk」

「おい雨宮!何言ってるんだ!」

斎藤が慌てて雨宮という女子生徒の元へやってきた。

あー、分かった。

この子、さては文芸部の後輩ちゃんだな?

本当にたまに斎藤から話を聞いたことがある。


「おい湊斗、どういう状況だアレ?」

「斎藤と葵って付き合ってるの?」

「俺に聞かれても!あと久遠さんに彼氏はいないはずだ!いるとしてもそれが斎藤なわけがない!そうであってくれ!」

「アンタ1回落ち着きなさいよ」


「久遠さん、ごめん!うちの文芸部の後輩が変なこと言っちゃって」

「…別に、大丈夫。その子、文芸部の後輩なの?」

「はい。私は斎藤先輩のかわいい後輩です」

「自分で言うやつがあるか!」

斎藤は後輩の雨宮さんにチョップをかました。


「ぐえ」

「ごめんね久遠さん!雨宮、ちょっと来るんだ!」

「ひー!先輩お許しを〜」

斎藤と雨宮さんは廊下へ消えていった。

しかし斎藤の後輩ちゃん、あいつが読んでるラノベに出てくるようなキャラの濃い後輩だったとは思いもしなかったな。

てかアイツ、後輩の女子と絡んでる時あんな感じなのね。

なんかラノベの主人公みたいだな。


雨宮ちゃん、顔はかわいいし齋藤と相性良さそうだしあの子とくっついてくれないかな?

そしたらライバルが一人消えるのによ…


「日向、アンタすごい悪い顔してるわよ」

「お前、あの後輩ちゃんを見てなにかよからぬ妄想を」

「ちげーよやめろよ」

「…日向くん、最低」

「ちょっ!?違うから!違うから!!」

斎藤の後輩女子、雨宮 翠。

彼女は一体、何が目的なのだろうか。


彼女の真意を、俺は近々知ることになる。

新キャラ登場!!!


雨宮(あまみや) (すい)

・文芸部員の1年生

・斎藤の後輩女子

・斎藤のことが好きで、葵をライバル視している

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