第15話「対面式のその後、そして翌日…」
更新漏れてた分です。
前回のあらすじ。
久遠さんと二人でCDショップに行った。
帰り際にツーショット撮ってもらった。
そして現在。
楽しすぎたので部屋で余韻に浸っていると、妹がドアをノックしてくる。
「お兄ちゃん!お兄ちゃん!どうだったの!」
「そんなに知りたいか、マイシスター」
「知りたいよ!何かいいことでもあったの?なんであんなほわほわした状態で帰ってきたの!?ねえってば!」
ドアを開けると、話を聞きたそうにうずうずしている妹の姿がそこにはあった。
とりあえず、妹を部屋に招き入れる。
「お兄ちゃん!今日はどんなことがあったのか報告してください!」
「なんで?やだよ」
「じゃあなんで部屋に入れたの!!」
「かわいい妹が兄貴の部屋にやってきたんだぞ、無条件で開けるだろ普通」
「前々から思ってたけど、お兄ちゃん大概シスコンだよね!!嬉しい!大好き!でもお兄ちゃんとは結婚できない!」
「求婚してもないのに振るのやめてくんない?」
「まあそれはそれとして!なにがあったの!」
「話さないと今日は終わらなさそうだな…」
「その通り!さあ吐け!何があったんだ!」
これ以上粘っても仕方ないので、妹に今日あったことをだいたい話した。
永松と高本さんを仲良くさせることに成功させたこと、永松が恐らく空気を読んで高本さんと二人きりになることで俺と久遠さんを二人きりにさせてくれたこと、久遠さんとCDショップで永遠にバンドの話したこと、そしてまさかの不意打ちツーショットの話をした。
妹は目を輝かせていた。
なんなんだ、どうしたんだこいつ。
「お兄ちゃん!青春してるね!!」
「確かに」
「てか!久遠さんの写真!見せなよ!!撮ってくれたんでしょ!!」
「え、やだ」
「なんでー!!!見せてよ!!気になる!気になる!気になって夜しか眠れないんだけど!」
「夜に眠れてりゃ十分だろ」
「誤魔化さないで!写真見せて!」
チッ、誤魔化せなかったか…
仕方が無いので、写真アプリから久遠さんとのツーショットを妹に見せる。
最悪だ、俺が最高に間抜けな顔してるから見せたくなったのに。
「え、この人が久遠さん!?めっちゃかわいくない!?嘘でしょ!?本当はここにいないのにAI加工かなにかで実在しない美少女を追加したとかじゃないとおかしいよ!」
「おいそれどういう意味だよ!!俺がこんなかわいい子と一緒にいた事実が信じられないってか!?」
「そうだよ!?」
「ひどい!」
「私には素敵な彼氏がいないのになんでお兄ちゃんにはこんな素敵な彼女がいるの!」
「やめろまだ付き合ってねーよ!」
「まだ、って言うの付き合う気満々でウケるよお兄ちゃん!無理寄りの無理だよ!」
「なんてこと言うんだよ!てかお前が彼氏出来ないのはブラコンこじらせてるのと俺以外の男相手だと死ぬほど愛想悪いからだろ!!」
「え!ちょ、なんでそんなこと知ってるの!!」
「お前、同級生の男の子に冷たすぎだろ!アレは誰でも凹むぞお前!」
「ねえなんで見てるの!?いつ!?いやー!恥ずかしい!」
「お前はもうちょっと愛想良くしなさい」
「好きな人相手なら多分!多分!!」
「可能性の自分に期待しすぎんなよ!普段から気をつけて根本から自分を見直しとけよ!気をつけないとボロが出るぞ!」
「正論やめてよ!!!!!!」
はい論破。
妹の精神的HPをゴリゴリ削った俺の勝ち。
ゴリゴリに正論浴びせて妹を追い詰める兄貴なんてろくでもないが、俺はそういう人間だ。
翌々日。
あの後、永松たちは何をしたのかをそれとなく聞いてみることにした。
「おーい、永松ー」
「ん、ああ、湊斗!悪い!今ちょっと!」
永松はいつも通り、女子たちに囲まれていて身動きが取れずにいる。
しばらくしたら剥がれていくだろうが、もう少しかかりそうだな。
『昨日、あの後高本さんと二人でどっか行ったりしたの?』なんて聞けばこの女子たちが阿鼻叫喚をキメてくれること間違いなしだろう。
慌て、焦る様が滑稽そうなので見てみたいが、永松の後処理がめんどくさそうなのでやめておく。
それまで、暇つぶしに斎藤にでも絡むか…とと思っていると、永松ファン代表みたいな立ち位置の中村さんがこちらへやってきた。
え、何?怖いんだけど
「アンタさあ」
「?」
「永松くんの友達、やめてくんない?」
「は?」
何言ってんだこいつ?
なぜ、他人に友達をやめろだの言われなければならないんだろうか。
というか、友達になってきたのは永松の方だから永松に言えよ…『わかりました!』って応じられたらそれはそれでショックだけど。
「アンタみたいなのと仲良くしてると、永松くんのイメージが下がっちゃうの!」
「はあ」
「アンタみたいな陰キャは斎藤とでも仲良くしてなさいよ!同じ陰キャ同士!」
「まあ、確かに斎藤は友達だけど」
「じゃあちょうどいいじゃない!永松くんのためを思って縁を切りなさい!」
別に俺が永松から距離を置こうが、永松の方が付きまとってくるんだから意味ないと思うんだけどなあ。
てか、どういうタイプのだる絡みなの?
非常にめんどくさい。
やっぱりコイツのこと、好きになれんわ。
大事にしたくもないし、どうしようか。
どうしようどうしようと悩んでいたところに救いの女神は現れた。
「…永松くんが誰と仲良くしようと、永松くんの勝手」
女神・久遠 葵様!!!!!
至極真っ当な指摘で中村を黙らせる!!!
「…は?何?久遠さんには関係なくない?」
「永松くんが誰と仲良くしようと、あなたには関係ない」
はい正論〜はい論破〜はい中村言い返せない〜
久遠さんのありがたいお言葉に言い返したり、なにか失礼な態度をとったら速攻しばき倒すけどな。
今の態度も正直グレーゾーンだ。
しばきたい。
そんな中、囲いからセルフ剥がしを行った永松がこちらへやって来る。
「久遠さんの言う通り!俺の友達は俺が決める、ってな!」
「な、永松くん!私は永松くんのために言ってあげてるのに!」
「いや自分のためだろ」
「…何?何アンタ?なんか文句あるの?」
しまった、声に出てたーーーー!
まずい!どう誤魔化そう!!
「中村さん、俺の友達にあんまりきつく当たるのやめて欲しいんだけどな〜」
永松による中村さんへの注意が入りました!
中村さん!顔を真っ赤にしてどこかへ去っていく!
囲いたちも中村さんを追って去っていく!
なんなんだこいつら。
「全く、俺から湊斗を取り上げようとするなんてなんて人だ!許せん!」
「重」
「湊斗だって俺のこと好きなくせにな」
永松と久遠さんが俺を見た後、二人で笑っている。
お前ちょっと久遠さんと距離近くないか?
しばくよ?
「うるせ!感謝するなら久遠さんにだけしとけ」
「そうだ!久遠さんも、湊斗を庇ってくれてありがとな〜!」
「…別に、お礼を言われるようなことはしてない」
そう、思ったことをただ口にしただけなのだ!
先程うっかり口を滑らせた俺のように!!
しかし、久遠さんの場合はうっかりではなくナチュラルに言ってるからかっこいいんだ!!
高本さんが廊下からこちらをちらちら見ているのが目に入った。
後ろのドアから出ていって、油断している高本さんの背後に周り…
「永松と話したいのなら教室へ入りなさい」
「ひゃーーーーー!!!!!」
高本さんが間抜けな悲鳴をあげる。
ひゃー、て。
ひゃー、てあんた…。
「ちょっと日向!アンタ、何するのよ!」
「なんかじーっと見てて面白かったから」
「だからってなんでおどかすのよ!」
「ごめんって」
「もう最悪!永松くんに聞かれちゃったじゃない!」
「永松〜今の聞いてたか?」
「聞いてたぞ〜!かわいい悲鳴だったな!」
「…プッ」
久遠さんが吹き出す。
よっぽど面白かったんだな。
「ちょ、ちょっと永松くん!
や、やめてよそんな…」
「…プッ」
「葵!アンタさっきから何コソコソ笑ってるのよ!」
朝から元気だなあ、この人は。
「あ、そういえば湊斗」
「ん?」
「俺に何か用だったんじゃないのか?」
「あ、そうだった。
昨日、アレからどっか二人で行ったのか?」
「…高本さん、言っていい?
まあ別にやましいことはないけど」
「…構わないわよ」
「えっと…」
永松と高本さんのデート話がようやく聞ける。
妹の深央とのやり取り、舞華ちゃんとの会話は楽しく書いてます。




