第13話「湊斗、高本にバレるの巻」
またしてもこっちの更新漏れてました。
何話か連投します。
「…アンタ、葵のこと好きなんでしょ」
前回のあらすじ。
高本さんに俺が久遠さんが好きなことがバレた。
「…なんのことかな?」
「とぼけなくていいわよ。アンタ分かりやすいからバレバレよ。葵が気づいてるかは知らないけど」
「くっ、バレちまったか…」
「ふーん、アンタ葵狙いだったのね。まあ葵はかわいいし、モテる方だからわかるわ」
「俺をその辺の男と一緒にするな!かわいいだけで好きになってるわけじゃない!俺はあの自分の意見をズバッと言えるところも含めて好きなんだ!」
「な、なによその熱量。そんなことはあたしじゃなくて葵に言ってあげなさいよ。それともあたしが言ってあげましょうか?」
高本さんがニヤニヤしている。
なんだ、弱みを握っているつもりなのか?
よろしい、ならば戦争だ。
「久遠さんにバラしたら永松に高本さんがお前のこと好きだってバラすから」
「や、やめなさいよ!そういうことは自分で言わせてよ」
「じゃあ俺もそういうことは自分で言わせてくれ」
「わかってるわよ!本気にしないでよね」
「俺は久遠さんに対して常に本気だが?」
「そっちは本気じゃないと許さないわよ」
「言われるまでもない」
「…あ、アンタにも感謝してるのよ」
「なんで?なにを?」
「永松くんとああやって話すような機会、アンタがいなかったら来なかったわ」
「別にいいって。俺も久遠さんと休日に会いたかっただけだから」
「だとしても、よ。感謝しておくわ」
「なんだよ、ツンデレかよ」
「しばくわよ」
「すみませんでした」
その後、永松が戻ってきたが、久遠さんが女子トイレの列に並んでいてもう少しかかりそうなのが見えた。
「葵はもう少しかかりそうね」
「俺は彼女のためならいくらでも待てるぞ」
「「知ってる」」
永松と高本さんが声を揃えてツッコんできた。
「あら、永松くんも"知ってる"のね?」
「ほう、ということは高本さんも?」
「気になって聞いてみたらあっさり吐いたわ」
「コイツそういうところ素直だからな」
「そういえば永松は神崎と得体の知れない同盟を結んでたな」
「得体の知れない同盟じゃない、『湊斗を見守り隊』だ」
「なによその変な同盟は…って、神崎って誰?」
「俺の中学の時からの友達。そして日向 湊斗の貴重な女友達」
「…いま"女"って言った?」
「言った」
「…永松くん、私もその変な同盟に入れてちょうだいッ!」
「お!高本さんも応援したくなったか!」
「私はあくまで葵の友達として応援するだけよ!」
嘘つけ、神崎が女って聞いて慌てて入ろうとしてたろ!
変な不安を感じてそうなので、高本さんにこっそり追加情報を提供することにする。
「高本さん、ちょっと」
「…なによ」
「神崎、彼氏持ち」
「…彼氏って、まさか」
「違う違う。2組の佐伯」
「え?佐伯って彼女いたの?あのアホに?」
アイツ、向こうでもアホって認知されてるんだろうか…
「俺も神崎がなんで佐伯とかいうアホを彼氏にしてるのか本当に聞きたい」
「…そういうことは先に言いなさい。ライバルかと思ってアンタの変な同盟に入っちゃったでしょ」
「いやその同盟、別に公認してないんで」
「知らないわよ。責任取りなさいよ」
「いや知らん知らん」
「アンタねぇ…!!」
「湊斗、俺を除け者にしないでくれよ〜。
俺もその内緒話の仲間に入れてくれよ」
「永松くんなら大歓迎よっ」
「おー嬉しいねえ」
なんだこの茶番は。
永松と高本さんがわりと仲良くなってくれているので、今日の企画は成功と言っていいだろう。
俺と久遠さんが2人きりになる時点は全くなかったので、裏企画は失敗だがな!
「…舞華、永松くんと普通に話せるようになってるね」
いつの間にかお花摘みから戻ってきていた久遠さんが俺にそう呟いた。
まあ、お手洗いから戻ってきているのが見えてたから俺は別にビックリしなかったが。
「だねー」
「…永松くんも、舞華とはリラックスして話してる感じがする」
「お、気づいた?」
「…永松くん、いつも女の子との会話をすぐ切り上げて日向くんのところに行ってる気がする」
「モテる男にモテる俺、超モテ男では?」
「…謎理論」
「嘘ですモテません彼女いません」
「…知ってる」
久遠さんに俺は非モテ野郎だと認識されていることが明らかになり、なんかショックを受けていると、永松と高本がこちらをじっと見ていた。
「…葵、アンタいつ戻ってきてたのよ」
「…さっき」
「いつも思うけど、もうちょっとアピールしなさいよ…」
「高本さん、クネクネしながら"おまたせぇ〜"とか言って戻って来いってよ」
「言ってないわよ!」
「…舞華、さすがにそれは無理」
「だからそんなこと言ってないって言ってるでしょ!わかってるわよ!」
「久遠さんって、人をイジったりするんだな」
「俺よくイジられてるぞ」
「最近、あたしのことをイジるようになってきたのよ。日向、アンタのせいかしらね?」
「なんで俺のせいなんだよ」
「アンタのせいで葵が人をイジる楽しさに目覚めてしまったに違いないわ」
「…いじって一番楽しいのは日向くんだから安心して」
「別にそんなこと不安に思ってないよ」
「…強がらなくていいよ、私はわかってるから」
「何も分かってないよね?絶対変な勘違いしてるよね?」
俺のことイジられ大好きのドM野郎とか勘違いしてそうでめちゃくちゃ怖いけど、もうその話はしないでおこう。
そこからもしばらくウロウロしていたが、見る場所がなくなってしまい、もう帰ろうかという流れになった。
らんらんポートを出て、最寄りの駅まで向かっているときのこと。
「そういえば葵、アンタ今日CD買いに行くって言ってたわよね」
「…うん、この後に駅近くのファルコの中にあるパワレコに行こうかなって」
「アタシもファルコちょっと行きたいし、みんなで行かない?」
「お!いいじゃん!湊斗も行くよな!」
「し、仕方ないな〜特別だぞ〜ん?」
「アンタが一番浮かれてるじゃないの」
らんらんポートの次はファルコか。
まだ夕方くらいだし、遅くなりすぎなければ大丈夫だろう。
という訳で駅近くのファルコに来た。
よく分からない服屋だったり、なんかよくわからないポップアップショップだったりをみんなで楽しんだ。
次はパワレコ…と思いきや、高本さんが急用が出来たから帰るので、永松にひとりは不安だから駅まで送れなどと言い出した。
永松は恐らく俺たちを二人きりにするためにアッサリOKを出し、二人で帰ってしまった。
そんなこんなで永松&高本さんとはここでバイバイし、俺と久遠さんだけになった。
「…言わなくてもわかると思うけど、舞華に急用なんてない」
「知ってる」
「…永松くんと二人でぶらぶらして帰るってLINEが来てる」
「上手くやってほしいもんだ」
そして、そのおかげで俺も久遠さんと二人きりになることができた。
これは高本さんにもらったチャンスと言える。
高本さんには何か奢ってあげよう。
永松はきっと、高本さんが自分と二人きりになるために計画したことだとは思っていないだろう。
俺と久遠さんが二人きりになるために利用したと思っていそうだ。
「とりあえず、パワレコ入ろう」
「…うん」
さあ、パワレコデートの始まりだ。
湊斗:大ボケ
葵:小ボケ
舞華:ツッコミ
というお笑いトリオのような構図が出来上がってきちゃった。




