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好きな子が友人に告白した。だが友人は好きな子を振った。そして俺は…  作者: 替玉 針硬


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第12話「適当に入った雑貨屋でする話じゃない」

葵と舞華が仲良くなるきっかけが知りたいあなたは、このエピソードを読んでください。

らんらんポートに着いた。

とりあえず、目に入った雑貨屋に入って、適当にウロウロする。


俺はあんまり使い道の無さそうだが、どこか味のある小さな小物を眺めながら、背後の永松と高本さんの様子をチェックする。


永松は持ち前のコミュ力で気さくに高本さんに話しかけている。いいぞ。


「そういえば高本さんは、久遠さんと何きっかけで仲良くなったの?」

何やら、久遠さんの話をしているらしい。

突然のあおいちゃん情報サービスに俺は聞き耳をさらに立てる。


「それは…。

ねえ葵、あの話、永松くんにしてもいい?」

「…いいよ」

え、なに、そんな深刻な話?

こんな雑貨屋で話すようなことなのそれ


「私はね…」

あ、なんか回想が始まりそう!

こんな場所で重そうな話始めちゃっていいのかよ高本ォーッ!!!



高本 舞華はあまり、人に好かれない。

目付きが悪く、言葉遣いも良い方ではないため、第一印象でほかの人たちから怖がられ、避けられてしまう。


実際に話してみると、全く悪い人間ではないことは日向 湊斗や久遠 葵がよく知っていることだが、それを知らない生徒は未だに多い。


1年生の時、舞華はクラスの女子たちとも良好な関係を築くことが出来なかった。


少し、正直すぎるのだ。

清々しいまでに自分の思っていることを隠さない。

不満を抱いていると表情に出てしまうし、言葉にもそれが出てしまう。


クラスの中で、無理やり何らかの委員会に入れられそうになった時も、舞華は悩む様子すら見せず、『なんで私がそんなことしなきゃいけないのよ』と言った。

面倒なことを高本に押し付けようとするクラスの女子たちのことが舞華は嫌いだった。

その感情を、オブラートに包むことなくハッキリと『自分がやりたくないからって面倒なことを私に押し付けて楽しようとしてんじゃないわよ』と言ってしまった。


舞華のその言い方や態度はクラスの女子たちから避けられる原因になった。

舞華は女子から陰口を言われるのが当たり前の存在になっていた。

本人に直接は言って来ないが、本人に聞こえるくらいの距離感とボリュームで嫌いという感情をぶつけてくる。


それにわざわざ言い返すのも面倒なので、舞華はそれを黙って無視していた。

だが、舞華も心が強い人間では無く、内心は傷ついていた。


『私も悪いのかもしれないけど、なんでそこまで言われなきゃいけないのよ』という悔しさが舞華の中に蓄積し続けていた。


一方、久遠 葵は舞華とは真逆だった。

クラスの中でも目立つ方ではなく、どちらかと言うと大人しいタイプの女子。


女子たちから怖がられ、避けられている舞華と違って、葵は避けられることはなかった。

葵も自分の思っていることはハッキリと言うタイプなのだが、舞華と違ってある種の"毒舌キャラ"として受け入れられていた。


真逆の立場にいるとはいえ、舞華と葵は似ているところがある。

それがきっかけで二人は親友になった。


その日も、葵はクラスの女子と話していると、高本 舞華の陰口が始まってしまった。

わざわざ、高本 舞華に聞こえるように言っているため、非常にタチが悪い。


「久遠さんも、そう思うよね」

クラスの女子は、葵に求めてしまったのだ。

『同意』という圧力を。


しかし。


「私は別にそうは思わない。それにこういう陰口は好きじゃない」

久遠 葵は同調圧力に屈しなかった。

それどころか、陰口を言っていることに批判的な態度を示した。


舞華は驚いた。

クラスの中心にいる女子たちに話を合わせて、自分の陰口に同意していればクラスで浮くことは無いというのに。

ほかの女子がそうしていることを責め立てたりはしなかったが、どこかで"そんなことない"と誰かが自分を擁護してくれないか、という縋るような気持ちがあった。


久遠 葵はそれをしてくれた。

舞華は嬉しくて胸がいっぱいになった。


それ以来、舞華は葵によく話しかけるようになった。

二人は共に毒舌なところがあるが、ボケとツッコミのような関係性を築いていき、率先して舞華の悪口を言っていた連中を除いたクラスの面々に"高本 舞華は話してみるとそんなに悪い人じゃない"と受け入れられるようになった。


こうして、高本 舞華と久遠 葵は親友になった。



「って感じ」

永松は真剣な顔で話を聞いていた。

やっぱり、なんとなく入った雑貨屋で謎の小物を見ながらするような話じゃなさすぎるだろとツッコミたかったが、さすがに空気を読んで何も言わなかった。


しかし、あの時悪口を言われていた女子は高本さんだったのか。

そして、久遠さんは高本さんの陰口に同調しないスタンスを見せた。


高本さんも相当バケモンだが、久遠さんもやっぱり強い人だ。


そして2人とも、好きな男子の前だと思っていることを上手く話せなくなってしまう乙女な部分を持っているので、本当に似たもの同士なのかもしれない。


久遠さんと高本さんの仲が良い理由が分かったし、高本さんの陰口を率先して言っていた女子には正直嫌悪感しかない。


やり方が陰湿すぎて気持ち悪い。

なぜそんな相手を傷つけるようなことを平気な顔してできるんだろうか。

頭いかれてるんでしょうか?


高本さんはたしかに第一印象ちょっと怖かったし、ストレートにものをいう人だというのは分かるが、俺はそういうところが嫌いではないし、こういう自分をしっかり持っている人だからこそ久遠さんと仲良くできるんだろうなと思う。


「高本さん、辛かったね」

永松は、高本さんに優しい言葉をかけた。


「…もう気にしてないから」

「今後、似たようなことがあるようなら久遠さんだけじゃなくて、俺たちだって味方になるよ。な、湊斗」

おい急に俺に振ってくんな!

何言おうか悩んでたんだから!


「そりゃ、もちろん」

「別にアンタが味方になってくれても嬉しくないわよ」

「え、ツンデレ?」

「は?」

「ひーん、高本さんが僕をいじめるー」

「あ、アンタねえ…!」

「それに湊斗とこうして仲良くしてくれるんだから、悪い人じゃないのは伝わってくるしね。

ちゃんと話してみれば、高本さんが悪い人じゃないなんてすぐにわかることだよ」

「…あ、ありがとう」

永松と高本さんの距離が少し縮まったような気がする。


「…成功だね」

いつの間にか俺の近くにやってきていた久遠さんが俺にそう呟いた。

そういう囁き声は本当に心臓に悪いからやめてください。いや嘘ですもっとしてください。


「微笑ましい光景だねえ」

「…舞華は私の友達。保護者面しないで」

「もう俺の友達でもあるよね?」

「…ダメ、舞華は私の友達。日向くんには渡しません」

「何の独占欲なの」

なんなの、めちゃくちゃかわいいじゃん。

高本さんのことめっちゃ好きじゃん。


「…日向くんは私と友達、で我慢して」

「それ以上の称号がありますかね?」

「…なにそれ」

久遠さんがまた笑っている。

本当にゲラなんだからこの子は〜

とってもかわいいッ!


その後もらんらんポートをウロウロした。

300円ショップに行ってみたり、服屋さんを適当に見て回ったり、ガチャガチャのお店に入って筐体数に圧倒されてみたり。


フードコートで各々好きなご飯を食べたりしたのもあって、今は永松と久遠さんのトイレタイム待ち。


近くの椅子で俺と高本さんが待機中。

高本さんと1 on 1で会話するのはこれが初だ。


「…ねえ、アンタ」

「はい、なんでしょうか」

「葵のこと、好きなんでしょ?」

…なぜバレたし。


まあバレるでしょうね。さあどうなる13話!

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