第7話 特別な"ルール"
佐藤は、彼らが取った部屋の中に案内された。アールからの提案だった。彼はそれに乗ることにした。文献にはない、実際にその世界に住む者たちの情報も重要であるし、何より、「サトウ」の名を名乗ってはいけない理由を聞きたかった。
部屋の中は、佐藤が取った部屋とさほど変わりは無かった。ベッドが二つに、小さな丸テーブルと椅子が二つ。その椅子に佐藤が座り、その対面にアールは立っていた。体が大きすぎて、座ることが出来ないからだ。そしてベッドに、ローブを着た少女が座っていた。部屋の中であるにもかかわらず、2人は一切着ている物を脱ごうとしなかった。
「いやぁ、しかしこんなこともあるんだな。たまたま会った人間と、偶然再会するなんてよ」
ハッハッハ! とアールは豪快に笑った。甲冑がぶつかり合う音が部屋に響いた。
「アール。うるさい」ローブの少女が言った。相変わらず、抑揚の無い声だった。
「おっとっと。悪い悪い」
「えっと、そうですね。あの時はあまり話が出来なかったので、お二人には是非もう一度お会いしたいと思っていました」
「そうなのか。んじゃ、なんか話したいことがあるってことだよな? いいぜ。何でも聞けよ」
と、アールは自分を親指で指して言った。
「あー、その」佐藤が申し訳なさそうに後頭部をさすった。「聞きたいのはそちらのフェルムさんからでして……。その、サトウって名前を言わない方がいい理由を、伺いたくて」
「ああ、それか。そういや、あの後も結局聞けなかったな。――結局、何だったんだよ、あれは」
2人がフェルムの方を向く。彼女は無表情であったが、それ故に無愛想ともいえる表情だった。
「アールそれ、本当に言ってるの」
「まあ、本当だな」
「300年前のあの事件。初等学校で誰でも習うと思うけど」
「事件?」
「第一次世界大戦」
彼女が発したその単語に、アールは「あっ」と叫んだ。
「そうか……じゃあこいつは」
「そういうこと。ねえ、サトウ」
彼女は突然佐藤を呼びつけて、無表情で見つめる。その冷淡とも言える目に、彼は思わず身震いしていた。
「あなた転生者だよね」
「――え?」
特に隠していたわけでは無い。それでもこの国に来てからは、誰からも指摘されなかった。その事実をあっさりと彼女は言い当てた。
「……どうしてそれを?」佐藤は訊いた。いつの間にか顎に手を当てていた。
「その前に一つだけ。あなた、自分が転生者だって、誰かに言った」
「いえ、言ってません。必要が無ければ話さないようにしていました。なるべく、トラブルに繋がるようなことは避けたかったので」
「そう。運が良かったね」
フェルムのその言葉は、まるで皮肉を言っているようだった。
「それで、どうして俺が転生者だと分かったんですか?」
「アール、説明よろしく」
フェルムがそう言うと、「あいよ」とアールは返事をした。その声は少し低く、何かを決意したような様子であった。
「300年前、数多くの国々を巻き込んだ第一次世界大戦が勃発した。そして、その戦争が勃発した原因と言われているのが、とある一人の転生者で――そいつの名前が『サトウ』。だから、こいつはお前が転生者だって分かったってことだ」
「そうでしたか……」
佐藤は舌打ちでもするかのように、唇を震わせた。
「まあ、そっちはどうでもいいんだ。そこまで重要じゃない」
「どうでもいい?」
「重要なのは――」
煮え切らない様子のまま、アールは言葉を続ける。
「転生者が、国際法で死刑に定められているって事だ」
アールの傍らで、フェルムがつまらなさそうにあくびをした。
* * *
「え……? いや、え?」
佐藤はまず、自分の耳を疑った。何かの聞き間違いかと、そう思った。あるいはそれは、都合のいい願いだったかもしれない。
「噓じゃないんですか?」
「ああ。噓じゃない」
アールは力強く言う。そこでようやく、佐藤は事態を飲み込んだ。そしてそれは、彼にとってこの二人が敵になる事を示していた。
「俺の事、どうするつもりなんですか?」
足が震えていた。それに連動するように、声も震えていた。佐藤はそれらを必死に抑えて言ったつもりだったが、実際は間抜けとしか言えない声だった。それから息を呑んで、二人の言葉を待った。少女の方はともかく、2m近くある鎧の男から逃げ切れるとは思えなかったからだ。
「……そうだな」
アールは腕を組んで、少しだけ俯いた。そして――
「俺がお前を助ける」
そう、力強く言った。
佐藤の動きは、再び停止した。自分にとって予想外の言葉が、雪崩のように押し寄せていた。もごもごと、言葉にならない声を出していた。
「はあ、言うと思った。でたよお人よし」
佐藤より先に言葉を紡いだのは、フェルムだった。その言葉を、ため息と共に呟いた。
「アール」フェルムが声をかけた。「今回ばっかりは無理。こいつ助けたら、私たちまでどうなるかわからないよ」
「それは分かってるが……でも」
「どうしてもって言うなら、アール一人でやって」
「それは……」
アールは暫く唸って、やがて上げていた肩を大きく落とした。
「分かった。今回は俺が助けるのは諦めよう」
ひねり出すようなアールの言葉を聞いて、フェルムは無表情で佐藤に視線を向けた。
「そういう訳だから、出て行って。でも私たちはあなたに危害を加えない。誰かに言いふらしたりしないし、警察や軍に通達する事もしない。ここから出ていきさえしてくれれば」
「……分かりました」
力なく佐藤は言った。頼りない足で何とか立って、その部屋を出た。暫く廊下で立ち尽くして、別の宿泊者が傍を通った時に、ようやく体が動くようになった。
自分の部屋に戻って、ベッドに勢いよく倒れ込んだ。そして天井をぼんやりと眺める。自分の手足が震えているのが分かった。思考を巡らせようとしても、その根源のようなものが、落ち着くべき場所に落ち着いてくれなかった。
佐藤は起き上がって、洗面台へ向かい、備え付けてある鏡を見た。それはルーティンワークのようなものだった。鏡に映る自分の顔は、酷くおびえた顔をしていた。今までに見たことが無い、新たな自分の表情だった。
「はっ――。すげえ顔だな。俺」
そう呟いて、佐藤は無理やり口を緩ませた。まだ口は震えている。だが先程よりは、頭の中が落ち着いたような気がする。次に自分の両頬を全力で叩いた。痛みと熱が、自分の顔を埋める。余計な思考を除くのにちょうどいい感覚だった。
佐藤は洗面台を出て、ベッドに腰かけ顎に手を当て思考を巡らせる。一番安全なのは、今のうちに国を出て行ってしまうことだ。しかし佐藤がこの国にやってきたのは、元の世界へ帰るための情報を得るためだ。現状、この国で知れたことはいろいろあったが、どれも本来の目的を果たす程のモノではない。だが、アールの話では転生者は《《国際法》》で死刑だと言っていた。つまりそれは、転生者に対してのこの扱いがこの国に限った話ではないということだ。
ただ、これは唯一のチャンスでもある。転生者を死刑にする法律が無い国があるのかも定かではない。今の所、追手のような存在はないし、自分の名前を言うような機会もなかった。不気味な女がいるというリスクはあるが、今のうちに出来るだけ情報を集めるという手もある。
押すか退くか。ただ実のところ、佐藤の心は最初のうちからほぼ決まりかけていた。リスクを取ってでも、ここで集められるだけの情報を集めるべきだと、そう考えていた。この国をすぐ出るという選択肢は、ローリスクではあっても、《《ローリターン》》ではない。それなら、多少の危険がある方を選ぶ。彼は《《そういう人間》》だった。
そういう風に心を決め、立ち上がろうとした時だった。
「サトウくん」
そう、声が聞こえた。その声はシルワの寝言だった。彼女の存在に気が付いた時、佐藤は一連の自分の思考を恥じた。それは理性的な判断とは言えなかったことに気が付いたからだ。
――何考えてんだ俺は。さっさと逃げるべきだろう。
佐藤が捕まればシルワも仲良く絞首台、とまではならないとしても、少なくとも重罪に問われるだろう。今いるのは自分だけではない。そんなことすら気付かない愚かな自分を、助けるとあっさり宣言した優しく強い彼女を、どうして危険な目に合わせることが出来ようか。
「すみません」
佐藤はそれだけを、小さな声で言った。荷物の中から紙幣をいくつか取って、そして忍び足で部屋を出た。名残惜しさのようなものは全く無かった。ただ今は、彼女からなるべく早く離れることだけを考えていた。
宿の扉を、佐藤はゆっくりと開けた。陽はかなり傾いていたが、それでもかなりの熱気が通りには籠っていた。重い空気が、彼を包んだ。
暑い。と、佐藤は素直な感想を漏らした。シルワと森で過ごした時も、この国に来る前も来た後も、ここまでの物では無かった。一瞬の躊躇いがありながらも、それでも佐藤は次の一歩を踏み出した。そうするより他に無かった。
暑さのせいか、往来から人は殆ど消えていた。その道を佐藤は、なるべく速く大股で歩いた。これまでの事や、これからの事を考える余裕もなく、ただ顔を伏せ自分の足元だけを見て歩いた。時折自分とすれ違う人影に気を付けながら、そのまま門を目指して道を進み、角を二、三度曲がる。
特に迷うことなく、後はこの角を曲がって真っ直ぐ進むだけという所まで来た。一度しか通ったことのない道であったが、緊張と焦りの最高潮の中、背後まで迫っている死の影が彼の集中力を極限まで高めていた。
佐藤は、その角を曲がった。そこでようやく、伏せていた顔を緊張の面持ちで上げた。大通りと、少し遠くに、自分たちが入ってきた大きな門が見えた。後はそこを目指して歩くだけ――しかし、彼の体は、ある一つの事実に縛られ、次の一歩を踏み出せないでいた。
大通りには誰もいなかった。道のど真ん中で立っている、ただ一人を除いて。
「へえ。本当に人払いが効かないんだ。面白いね、君」
そこに立っていたのは女だった。白い布を一枚だけ羽織っていた。まるで古代ギリシャの偉人のような格好だった。
「……」
佐藤は言葉を発することが出来なかった。代わりに、足に力を入れていた。
女は、手のひらを佐藤に向けた。そして鋭い目つきで、彼を見据えた。
「一応、自己紹介しようかな。私はイグ。この国の賢者だ。でも君って転生者だし、賢者って何のことか多分知らないんだろうけど」
佐藤の判断は早かった。女の言葉には耳も貸さず、体を捻って一目散に逃げだした。彼女の目が、大きく開かれた。
「まじかぁ。ちょっとは面白い展開を期待していたんだけどなぁ」やれやれ――と、イグは首を振った。
「どうせ殺すなら、久々に戦いたかったのになぁ」
彼女の手のひらから、火球が生み出された。最初はピンポン玉程の大きさだったそれは、一瞬で彼女の体を超える程の直径になった。彼女の肌が、火球に照らされて赤みがかっていた。
「……まじか」
振り向きざまに、佐藤は呟く。火球は直ぐに彼めがけて発射された。彼は足に力を込めて、横に飛びのき、すんでのところでその火球を回避した。服と火球が触れた部分が、一瞬で黒く変色していた。
火球は暫く進んで、やがて石畳に衝突した。大きな音を立てて火球は爆発した。その爆発は、石畳を変色させ凹ませた。
「くそっ、やっぱあの時すぐ逃げるんだった!」
悪態をつきながら、佐藤は立ち上がった。考える余裕はあまりなかった。とにかく、走って逃げることだけに全ての意識を向けていた。
とん――。と、逃げようとした佐藤の目の前に、イグが現れた。それも空中からだった。
「転生者に会ったのは初めてだけどさ。転生者って、大体強いって聞くんだけど、君は違うのかな? ――っていうかさ、そもそも私たちの言葉が通じるわけないか」
「分かってますよ。あなたのおっしゃってることは」
佐藤が答えた。イグは目を見開いた後、愉快そうに口角を上げた。
「ははっ。面白いくらい流暢にレグム語話すじゃん。言葉が通じるなら早いや。今から君を殺そうと思うんだけどさ、正直、君が強くないというのなら、私がわざわざ殺してやる理由も無い。だから、投降してくれないかな?」
「……お断りします!」
叫んで、佐藤は反転して走り出す。その様子を見たイグはつまらなさそうにため息をついた。
「はぁ、めんどくさ」
そう言って、イグはまた手のひらを佐藤に向ける。先程と同じように、火球を生成し、彼の足元をめがけて射出した。彼の足元で火球が爆発し、体は宙を舞った。
「あぐっ!」
地面に体を打ち付けた佐藤が悲鳴を上げた。すぐに立ち上がろうとしたが、体が思うように動かなかった。その間に、イグは彼の目の前で仁王立ちをする。短く切り揃えられた金髪を、彼女は指先でいじっていた。
「捕まる気になった?」
「残念ながら!」
佐藤はそう言って、地面の砂を掴んで彼女に投げた。自分の中では優しく投げたつもりだったが、思いの外強かったというのが、彼女の仰け反り方で分かった。その事実に一瞬だけ動揺したが、すぐに逃げることに頭を切り替える。
佐藤が大通りから、裏路地へと逃げようとした時だった。彼の目の前を、巨大な炎の柱が通過した。彼はたじろぎながらも、両腕で顔を守った。炎の柱は、建物を焼きながら、彼の傍を通過しただけだ。それだけで、彼の腕にヒリヒリとした痛みが走った。炎が消え、腕を確認すると軽い火傷が出来ていた。
「せこい真似しやがって」
空いた穴の向こうに、イグが立っていた。先ほどの攻撃の影響か、服のあちこちが燃えてボロボロになっていた。その下から、綺麗な白い肌が見えた。
彼女が怒っていることが、佐藤にもはっきりと分かった。また彼は、逃げるように裏路地へと向かって走り出した。
「……なんか、面白くない仕事引き受けちゃったなぁ」
イグはそう呟いて、佐藤の後を追う。彼は裏路地に入って、角を曲がった。彼女も同じように角を曲がろうとした。その時だった。
角で待ち構えていた佐藤が、イグに飛び掛かって彼女を押し倒した。そのまま佐藤は、彼女に馬乗りになって動きを押さえつけた。
「手荒な真似をしてすみません」
佐藤が言った。本当に申し訳なさそうな顔をしていた。
「いてて……」イグが顔をしかめて呟く。「――まだ昼間なんだけど。それに私相手いるし。どういうつもりなわけ?」
「……あなたのその厄介すぎる能力を防ぐためです。あなたの火の魔法で、あなた自身の服が影響を受けていたので、自分の魔法の影響を受けるのだと」
佐藤がそう言うと、イグは不敵な笑みを浮かべた。
「確かに、魔法を使う者は魔法の影響を受ける。君の予想通りだよ。でも残念ながら、私にはそれは当てはまらない。私の祝福は熱への完全耐性。まあ普通は、魔力を伝えるような物質を使って離れたところに発生させるか、障壁魔法あたりで自分を守りながら魔法を使うかどっちかだけど、私にはどっちも必要ないからそうしてないだけ。残念でした」
イグが満足げに言った。
「……分かってましたよ」佐藤が口を開いた。彼は表情をあまり変えていなかった。
「分かってた?」
「近くにいるだけで軽い火傷が起きる程の火力。それに先程の攻撃であなたの服が多少燃えていました。それほどまでの高火力なのに、あなたの肌は至って綺麗なままです。もし、何かバリアのようなモノでその熱を防いでいるのだとしたら、わざわざ服と肌を分けて防ぐ必要は無い。――まあ、分けて防いでいたとしても、それはそれであまり問題が無いですけど」
「分かってたなら、何故こんなことをしたのさ? 私がここで自分の体を燃やしでもすれば、君死ぬんだけど」
「じゃあ、そうしたらいいじゃないですか。最も、俺は死んでもあなたから離れませんが」
佐藤がきっぱりと言った。そこでようやく、イグは彼の意図に気が付いた。
「なーんだ」イグはため息をついた。「私の目的が君を捕まえることだって、バレてたんだ」
「はい。殺そうと思えば、いくらでも俺を殺すチャンスはありましたから。その時点で違和感を抱えていました。俺に捕まってくれないかと提案したのも、あなたの強さを考えれば、うっかり殺してしまう可能性があったからですよね。まともに戦っても勝てそうにも、逃げれそうにも無かったので、こんな手段を。結構賭けではありましたけど」
佐藤がそう言うと、彼女は満足げに笑った。
「ふーん。まあ良かったよ。君がちゃんと面白くて。――それで、この後の君の計画は?」
「その前に、1つお尋ねしたいんですが、この周辺に人が全くいないのは、あなたが何かしたからですか?」
「そうだよ。具体的な説明は必要?」
「いえ、どうせ聞いたところで分からないと思うので。暫く、この状態は続くと考えていいですか?」
「続くね。少なくとも後2時間くらいは」
「なら、申し訳ないですが、このまま密着した状態でこの国を出て――まあ、出た後のことは行きながらでも。良いですか?」
佐藤がそう言うと、イグは暫く何かを考えるような目線の動きを見せた。
「はぁ。やっぱ引き受けたの間違いだった」やがて、彼女が口を開く。「あのさ、君の名前、訊いておきたいんだけど教えてくれない? さっき質問に答えてあげたから、お返しってことで」
「……リュウイチ」暫く迷って、佐藤は言った。「長いですし、リュウ。とみんなは呼んでいますが」
「そう。名前を訊いた理由だけど、君にとっては、あまり面白くないことをしようと思ったんだ。だから訊いた」
「面白くないこと?」
佐藤がそう、尋ねた刹那――彼の体が傾いた。彼はまだ、イグの体の上に乗っている。彼女は、彼の《《体ごと》》上体を起こしたのだ。まるで佐藤の体重など、感じていないかのように。
「私の得意な魔法について、1つ教えておこうか。リュウ」
バランスを崩し、地面へ倒れてしまった佐藤を、イグは鋭い目つきで睨む。
「火と――それから身体強化だ」
彼女の体が、歪に膨れ上がっていた。腕や足には、深い筋肉の筋が刻まれ、太い血管の筋が浮いていた。佐藤より少し低いくらいの身長は、いつの間にか彼と並ぶまでになっていた。
「……こんなのナシだろ」
佐藤が吐き捨てるように言った。
彼女が振るった拳が、佐藤の顔面を正確に捉えた。彼に反応する隙すら与えない程の速度だった。彼は後方に弾き飛ばされて、地面に背中を強く打ち付けた。鉄の味と匂いがした。鼻を手の甲で拭うと、赤く染まった。
「くっそ……」
呟いたのちに佐藤は立ち上がって、構えるような格好を見せた。
「構えてどうするのよ」呆れたように、イグが言った。
「俺が訊きたいくらいですけどね」
「はぁ。諦めが悪いんだね。君は。一応、降参したくなったらいつでも言っていいからね。すぐにやめる」
彼女はそう言って、佐藤に再び拳を振るう。
そこから先のことを、彼はよく覚えていなかった。




