穢道にて
都市の喧騒は、廃棄された旧市街へ足を踏み入れた瞬間、急速に遠のいた。
崩れかけた建築物、割れた窓ガラス。空気には、湿ったカビ臭、腐ったゴミの酸っぱい臭い、そして何とも言えない気味の悪い臭いが漂っている。
旧市街の下水処理場の裏手にある、とっくに放棄された排水管。伝え聞くところでは、そこが迷宮への入り口だという。
迷宮の奥には、最底辺、新人すらまともに相手にしないゴミのような魔物──スライムとごく少数のゴブリン──が蔓延っている。
ここは命知らずと乞食の、最後の選択肢だ。
入り口は想像以上に隠れていた。巨大な錆びた鉄格子が無理やり壊され、かろうじて一人が潜り抜けられる隙間が空いている。
その下は底知れぬ闇。強烈な悪臭が鼻を衝き、息が詰まりそうになった。足元のコンクリート台はぬめり、滑りやすく、深緑の苔がびっしり生えている。
引き返す道はない。
深く息を吸い込む──その匂いで吐き気がこみ上げるのを押し殺しながら──ポケットの中の短剣を強く握りしめ、重い金属パイプを腰に差し、ロープをしっかりと体に結びつけ、携帯電話のほのかな明かりを点け、そのまま滑り降りた。
真の迷宮の内部は、ゲーム内の映像より、はるかに恐ろしく、息苦しいものだった。
光はほとんど闇に飲み込まれ、携帯の弱々しい光が照らせるのは、せいぜい前方二、三メートル。
ぬめり、得体の知れない粘り気のある物質に覆われた湿った地面を踏みしめる一歩一歩が、転倒の危険に満ちていた。高いところから冷たい雫が落ち、首筋に当たって体が震えた。
周囲は死の静寂に包まれ、ただ俺自身の足音、荒い息遣い、そして遠くでかすかに聞こえる水滴の音だけが響いている。
「はあ、やべえ…こんなに怖いのかよ!」
やれやれ…野生の迷宮なんだ。光がないのは当たり前だ。
「ぐる…」
突然、前方の曲がり角から、かすかながらも確かな音が響いてきた。即座に携帯の明かりを消し、冷たく湿った管壁に張り付き、息を殺した。
暗闇の中に、ぼんやりとした、かすかな青緑色の蛍光が浮かび上がる。
ぬるぬるとした、直径およそ半メートルのゲル状の生物が、蠢くような動きでゆっくりと前進していた。「スライム」──ゲーム中では最低ランクの雑魚モンスターの一匹だ。
だが今、その腐敗した湿気の匂い、そして蠢く異様な姿は、俺の心臓を凍らせ、手のひらに冷や汗をにじませた。体はこわばり、足はガクガクと震え続けている。
奴はゆっくりと蠢き続けているのに、俺はどうすることもできない。
早く! 動け!
強い生存本能が、本能的な恐怖と体の硬直を打ち破った。腰の金属パイプを抜き、左手に短刀を握り、右手にパイプを携え、携帯電話を胸に掛けた。
スライムは何かを察知したのか、蠢く方向を変え、俺が潜む隅の方へと「泳ぐ」ように近づいてきた。粘液が地面にぬめっとした跡を残す。
「今だ!」
俺は暗闇から猛然と飛び出し、フラッシュを焚きながら、低く唸り声を上げ、両手に握った金属パイプと短刀の柄に全身の力を込めて、蠢く生物を目掛けて叩きつけた!
ドッシュ!
パイプの先端と刃先から、吐き気を催すほどの異様な感触が伝わってきた。硬い物を打った感覚ではなく、むしろ粘り気の強い厚い泥沼に叩き込まれたようだ。
巨大な反動で腕が痺れた。打たれたスライムは「ブシュッ」という奇妙な音を立て、体全体が激しく震え、歪み、半メートルほど後退した。体の蛍光が激しく明滅した。しかしその体積は……ほんのわずかに縮んだだけだった!
はあっ! ゲームの中で軽く一撃で粉々になる感覚とは全く違う!
そのスライムは怒ったか、猛然と前に飛びかかり、粘り気のある膠質を撒き散らした!
俺の体は本能的な反応で後ろに跳びのいた。
ジュッ!
膠質は、さっき俺が立っていた場所に落ち、かすかな腐食音を立ててシューッと音を立て、白煙を上げた。
冷や汗が一瞬で背中を伝った。こいつ…腐食するのか!
考える間もない。スライムは再び蠢きながら迫ってくる。生存本能がすべての雑念を押し流した。
両手に武器を握りしめた俺は、一撃で叩き潰そうとはせず、もぐら叩きのように、一度、また一度と激しく打ち続けた!
ドッ! ドッ! ドッ!
一撃一撃が、粘つく感触を伴った。腕の筋肉が悲鳴を上げ、虎口は既に裂けてヒリヒリと痛む。
汗が目に入り、視界はかすむ。吐き気を催す腐敗臭と、スライムが放つ異様な臭いが混ざり合い、胃がひっくり返りそうだった。
「死ね! 死ぬんだ!」
俺はほとんど叫びながら、機械的に殴り続ける動きを繰り返し、すべての恐怖と絶望を手中の武器に凝縮させた。
奴の粘液が飛び散り、俺の肌を腐食する。ぐっ…痛い!
俺は叩く速度を速めていき、気づけば、ダメージがどんどん増していく気がした。
汗がボロボロのジャケットを染み込ませ、傷口がヒリヒリと疼く。
何度叩いたか。数百? 数千?
そしてついに──
ブシュ! …ぽたっ!
鈍い破裂音と共に、粘つきまとわる物体は完全に崩壊した。
青緑色の蛍光は急速に薄れ、大部分の膠質は汚水に溶け込んだ。残ったのは拳大のゼリー状の物体(おそらくスライムの「核」)と、粘液まみれの小さくて鈍い銅色の金属片だけだ。
俺は力尽きて膝をついた。金属パイプと短刀が「ガチャリ」と隣に落ちる。腕と肩は激しく震え、まったく言うことを聞かない。
喉には血の味が込み上げ、目の前が一瞬暗くなる。
殺した。
最弱のスライム一匹を。
そして俺は、ほとんど力尽き、傷だらけだ(腐食された手の傷、震えて裂けた傷口と裂けた虎口)。
これが現実だ。刃の上を舐めて生きるような生存競争だ。
休む? そんなことはできない! この物音はおそらく他の何かを呼び寄せたに違いない!
無理やり体を引き起こし、落ちた物を拾った。そのゼリー状の「スライムゲルコア」は慎重にビニール袋に包んだ(ゲーム設定では低級素材だ)。小さな銅貨はしっかり握りしめた──冷たく、小さく、これが、この世界で初めて俺自身の手で得た「富」だ。
パイプと刃を拾い上げ、携帯を照らし、かすかな光で闇に沈んだパイプを照らした。
暗闇の中、ついさっき戦った場所の先で、分かれ道らしきものが現れた:一方はさらに地下へと続き、濃厚な腐敗した硫黄臭が漂っている。もう一方は水滴が垂れる音がして、そこからかすかな風が流れてくる。
選択。
レベルアップ? 強くなる? この道は、まだ長い。