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茜色の幸せをあなた達がくれた〜招待された先の元家族達は追い出されたらしい〜

作者: リーシャ
掲載日:2025/07/26

本当は笑いたい。


友達とくだらない話で盛り上がりたい。


でも、どうすればいいのかわからない。


「役立たずの出来損ない」


冷たい声が、十四歳のユナーナの背中に突き刺さった。


広大な屋敷の中庭で、ユナーナは膝をつき、俯いている。


周囲には、豪華な衣装を纏った家族たちが、冷たい視線を浴びせていた。


名門伯爵家の長女として生まれたが、生まれつき魔力が極端に低く。


家族からは、家の恥と蔑まれてきた。


妹のミルシーは才色兼備で、魔法の才能にも恵まれ、両親の愛情を一身に受けて育つ。


ユナーナは常に日陰の身だ。


そんなユナーナに、突然の宣告が下された。


ミルシーが王国の王子に見初められ、婚約が決まったのだ。


その祝賀の宴の席で、父である伯爵は、こともなげにユナーナに言った。


「お前は、今日限りでこの家を出て行け。お前の低い魔力は、王家との縁談に不要だ。むしろ邪魔になる」


ユナーナは言葉を失う。


信じていた家族からの、あまりにも残酷な宣告。


反論する気力も湧かず、ただ涙が溢れた。


長年、家族の冷遇に耐えてきたユナーナにとって、この言葉は決定的な終止符。


夜になり、ユナーナは最低限の荷物を持って屋敷を後にした。


冷たい夜風が吹きつけ、心細さが募る。


行く当てもなく、ただひたすら歩き続けた。


森の中を彷徨い、飢えと寒さに震えながら、ユナーナは何度も意識を失いかけた。


数日後。


ユナーナは深い森の中で倒れていたところを、一人の男性に助けられた。


男性は、黒曜石のような瞳を持つ、精悍な顔立ちの青年。


彼の名は、アゼフト。


辺境の小さな村で薬師をしているという。


アゼフトは、ユナーナを優しく介抱し、温かい食事と寝床を与えてくれた。


初めて受ける優しさに、凍てついた心が春の花のように、溶けていくのを感じる。


アゼフトの村での生活は、ユナーナにとって驚きの連続。


村人たちは皆、分け隔てなくユナーナに接してくれた。


彼女の低い魔力など、誰も気にしない。


ユナーナは、薬草の知識をアゼフトに教えたり、村の雑務を手伝ったりするうちに。


自分の居場所を見つけていった。


アゼフトは、ユナーナの聡明さや優しさに気づき、惹かれていった。


ユナーナもまた、アゼフトの温かさと誠実さに心を奪われていく。


二人の間には、静かで穏やかな愛情が育まれていった。


それから三年。


ユナーナは、アゼフトの助手として、薬師としての才能を開花させていた。


彼女の調合する薬は、村人たちの間で評判となり、遠方からも患者が訪れるほどにまでなる。


かつて「出来損ない」と呼ばれた少女は、自分の力で助けることができるようになったのだ。


ある日、村に不思議な知らせが届いた。


ユナーナの妹、ミルシーが婚約者の王子と祖国で盛大な結婚式を挙げるというのだ。


その招待状が、ユナーナの元にも届けられた。


首を傾げる。


招待状を見た瞬間、ユナーナの胸には複雑な感情が湧き上がった。


かつての家族への恨み。


今の幸せな生活への感謝。


アゼフトは、ユナーナの不安そうな顔を見て、優しく手を握った。


「ユナーナ、無理に行く必要はないんだ」


アゼフトの言葉に、ユナーナは静かに首を横に振った。


「いいえ、行きます。今の私を見てほしいのです」


結婚式当日。


王宮は、華やかな装飾と祝福の声に満ち溢れていた。


ユナーナは、アゼフトと共に、招待客の一人として会場に足を踏み入れた。


久しぶりに会う家族は、ユナーナの姿を見て驚愕の表情を浮かべた。


招待状を送ってたくせに。


かつてのやぼったい見た目な少女は、見違えるほど美しく成長していた。


落ち着いた物腰。


知的な眼差し。


自信に満ち溢れたオーラが、彼女を輝かせていた。


ミルシーは、ユナーナの姿を認めると、露骨に嫌悪感を露わにした。「なぜ、あなたがここにいるの?父上は、あなたのような出来損ないを招待した覚えはないと言っていたわ!」


ミルシーの言葉に、会場の空気が凍り付いた。


なにを言っているんだろうか。


こちらは威厳を保ち、優雅に微笑んだ。


「お祝いに参りました。ミルシー様、ご婚約おめでとうございます」


ユナーナの堂々とした態度に、ミルシーは言葉を詰まらせた。


父である伯爵も、変貌ぶりに言葉を失っている。


その時、アゼフトが静かに口を開いた。


「ユナーナは、私の大切なパートナーであり、この村になくてはならない薬師です。彼女の調合する薬は、たくさんの人々の命を救っています」


アゼフトの言葉は、会場に緊張を引き起こした。


出来損ない、と呼ばれていたユナーナが。


人々から感謝される薬師として、活躍しているとは、誰も想像していなかったのだ。


さらに、アゼフトは続けた。


「そして、ユナーナは、私が心から愛する女性です」


アゼフトの真剣な告白に、ユナーナは色んな感情で胸がいっぱいになった。


会場からは、驚きと祝福の声が上がる。


ミルシーは、信じられないといった表情でユナーナを見つめた。


「そんなっ、まさか、あなたが」


父である伯爵は、慌てて取り繕おうとした。


「ユナーナ、お前……一体、どういうことだ?」


ユナーナは、威厳を保ちながら、ゆっくりと語り始めた。


「私は、あなた方が私を追い出したおかげで、今の幸せを手に入れることができました。アゼフト様、そして村の皆様との出会いは、私にとって何よりも変え難い宝物です」


かつての家族の、冷酷さを鮮やかに浮き彫りにした。


会場の人々は、同情と驚きの表情でユナーナを見つめる。


王子の顔には、不快感が浮かんでいた。


ミルシーの家族が、ユナーナのような。


やぼったい見た目になるような扱いをしていたとは、想像もしていなかったからだ。


王家との縁談に傷がついたことを恐れた伯爵は、必死に弁解しようとした。


けれど、王子の冷たい視線に言葉を失う。


最後に、静かに言った。


「過去の恨みを抱き続けて、生きるつもりはありません。ただ、あなた方には、私が今、幸せであることを知ってほしかったのです」


そう言って、ユナーナはアゼフトと共に、王宮を後にした。


背後には、騒ぎが残っていたが、ユナーナの心は、驚くほど威厳に満ちていた。


満足だ。


村に戻ったユナーナとアゼフトは、村人たちの温かい祝福を受けた。


二人は、これからも共に生きていくことを誓い合った。


「ここで生きていくの」


ユナーナは、薬師としての腕を磨きながら、アゼフトと共に。


たくさんの人々の笑顔を、守っていくことを決意した。


数ヶ月後、祖国から不思議な知らせが届く。


ミルシーの婚約が、破棄されたというのだ。


王子の心変わり、伯爵家の悪事が明るみに出たことが理由らしい。


没落した伯爵家は、祖国から遠く離れた地へと移り住んだという。


はて、となったがすぐに忘れるだろう。


知らせを聞いても、ユナーナの心は静か。


彼女にとって、過去のものとなっていた。


今の彼女には、愛するアゼフトと、温かい村の人々。


自分の手で助けることができる、という自負があった。


「ユナーナ、そろそろ休憩しようか」


茜色の夕焼けが、二人の未来を優しく照らしていた。


「はい、今行きます」


ユナーナは、アゼフトの温かい手に己の手を重ね、静かに微笑んだ。

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― 新着の感想 ―
面白かったと思いますが、細部の詰めが荒いかと思います。 村人が王子の婚約を祝う席を勝手に退出したら、斬り捨てられるのではないでしょうか?
2025/07/27 14:58 コペルニクスの使徒
妹かもしくは王子視点もあった方が良い。 それが無いと結果だけが分かるだけで話(結末)が唐突に感じる。 要望致します。
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