3, 疲れたあなたにはぶどうジュース!!
「か、匿っ、え?!」
「⋯追われているんだ。」
そう言うと男性は外を見る。ハーディもつられて外を見るが、怪しい人は見つけられなかった。
(追われているって、大変だ!?)
「ど、どうぞこっちへ、カウンターから先は外から見えないと思うので。」
ハーディはカウンターの扉を開いて男性を招き入れる。男性はハーディの横に来ると、その場に座り込んだ。
「数分したら店は出る。本当にごめん。」
「いえいえ、追われているんだから、助けるのは当たり前です。」
ハーディはちらりと男を見下ろした。何の素材でできているのかはわからないが、分厚い漆黒のローブ。光の加減によって何かの刺繍が施されているのが見えたり見えなかったりしてとても興味深い。
(追われているって、何か反社会組織みたいなのにいたのかなぁ。それか借金とか。いや、そしたらこんなに綺麗なローブなんて着れないだろうし。)
少し肩が上下しているが、まさかずっと走って逃げていたのか。
(いや、逃げているのだから走るのは当たり前ね。疲れてるだろうな。⋯そうだ!!ぶどうジュースは疲労に"気持ち的に"効くって果物園のおじいちゃんが言ってた!!今が旬だしって、仕入れていたのよね。)
ハーディは保管庫に入り、ぶどうジュースの元(前日仕込んでいた)を必要量持ってまたカウンターに戻る。
「コップの大きさは、大きいのと小さいのどちらが好きですか?」
「え?⋯小さいの??」
「ありがとうございます。」
「??」
ハーディはカウンター下の棚から備品の中で比べたら小さめなコップを手に取る。
(これを凍らせてみても面白そうだな。)
名前は⋯、何と言うのだったか。忘れたけれどそんな感じのものがあった気がする。
「どうぞ、良ければ飲んでみてください。美味しいはずですよ。果物園で食べたときはとても美味しかったです。」
「あ、それでコップの大きさ⋯。ありがとう。」
ローブから伸びた細い腕がジュースを受け取った。