2, 季節のオススメはオレンジジュース!!
「イヴちゃん、そういえば大通りの方、たくさん人居たけど大丈夫?今日って確か凱旋の日でしょ?」
「おや?ハーディが自分から凱旋のネタ出してくるとは。珍しいねぇ。」
「いや、だってイヴちゃんの家って私の家からそれなりに遠いし、大通り挟んでいるでしょ?」
私の住んでいるこのお店兼家は街と外をつなぐ北の街門に近く、大通りより少し離れている。憲兵などの軍部の詰所に近い。しかし、イヴちゃんの家は少しだけ、東の街門寄りなので、歩いて行くなら20分は確実に必要だ。
「まぁねぇ、人の波を掻い潜って来たよ。そしてバッチリ凱旋見てきた。にしてもさぁ、最近仕事が立て込みすぎて凱旋見れてなかったんだけど、今の凱旋って面白いんだねぇ。」
「?」
「イケメンばっかりで若い女性がキャーーって叫びまくってた。」
「イヴちゃんは叫ばなかったの?確かイヴちゃんもイケメン好きでしょ?」
「今は家業で忙しいからいらないね。」
そう言うとイヴはハーディの差し出したジュースを勢いよく呷った。
「めっちゃ美味しい!!」
「そうでしょ?果物園のオーナーさんすごく優しいもの。果物もわが子のように扱っていて⋯。」
果物園のオーナーさんは老夫婦で、初めてお店を作る私にこんなことしたら良いよとか、こういうレシピ良いんじゃない?と、色々教えてくれるとても良い人達だ。
「扱うね⋯、そういえばさ、さっき凱旋見たって言ったでしょ。」
「うん。」
「なんかさ、魔法騎士団だけ一番後ろだったのよね〜。荷物の後ろ。でさ、何故かそこの団長ローブ被ってるの。」
「出遅れたとかじゃないの?」
「も〜そんなわけないでしょ?凱旋の順は戦績の順。功績を多く挙げた隊から先に行進するの。出遅れたりなんてしないでしょ。⋯、にしても荷物管理の部隊より後って」
イヴが後ろを振り向けば、家に帰ろうとする人達が歩いているのが見えた。
「そうだ、せっかくだし客寄せしよっと。」
「え!?」
「ちょっと行ってくるわ!!」
「イヴちゃん!?」
イヴがトタパタと走って外に出たのを見送り、ハーディは思わず苦笑した。
「元気がいいなぁ。」
凱旋。この国に住んでいる人なら知らない人は居ない。魔物の討伐に向かった彼らの不定期な帰りを皆でお迎えする。素晴らしい行事。
「私も、行ってみたいけどなぁ。」
チリンと鈴の音がして、ハーディは扉の方を見た。
「すまないが少しだけ匿ってくれ。」
そこには、黒いローブを深々と被った男の人が居た。
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