1, 祝!開店 『居座り亭』
「看板よし、窓もピカピカ。」
金髪をふわふわと揺らしながら女は次々に確認を行っていく。
「お花にお水はあげたし、果物も在庫はあった。掃除もやったし。完璧⋯だよね?」
全身を見回して、自分がエプロン着ていなかったことに気付いた女は慌てて店の中に戻り、テキパキとエプロンを着る。
「よし、今度こそ!!」
女はまた外に出て⋯、そして盛大に滑って尻もちをつく。
「いたた⋯。良かった、エプロン汚れて無い。」
ちょこちょこと動く姿は見ている人に小さなリスを連想させる。
「よいしょ、で、ここのプレートを裏返せば良いんだったよね?」
裏返せば、『open』という文字と少しの花の彫り込みがある友人の力作が姿を現した。
「ふふっ、お客さん来たら良いな。」
「なんせ子供の頃からの夢だものね。
『来た人に居座りたいと思わせるお店。』
居座り亭って、そのまま呼んだら願望が丸出しなセリフになるし。」
「どわっ!!」
後ろを振り向けばそこには、プレートの作者が居た。
「イヴちゃん!!」
「はいは~い、イヴですよ~?」
「どうしたの?こんな朝早くに。」
「え?開店時間が分かんなかったから待ち伏せしてたの。知らない人にハーディのお客さん1号を取られたくなくて。」
「ありがとう!!」
「で、これが開店祝い。」
ハーディはイヴに渡されたカゴを見て驚く。いかにも取れたてのフルーツだった。リンゴの皮に数滴水が付いている。
「え?でもこのプレート」
「そっちは備品よ、び・ひ・ん!!」
イヴは「店に入るよー」と言ってズンドコと中に踏み込んでいく。
(嬉しいな。嬉しいな。)
初めてのお客さんが友人なんて、嬉しくない人が居ないだろう。
「イヴちゃん、何のジュースがいい?」
「オレンジで。」
「了解!!」
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