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最終回後編 運命の一戦

王子に無理やり連れて行かれる。

「お待ちください。まだ他にも行列が! 」

「それは後にしろ。国王へ挨拶してもらう」

あまりにも強引な王子。一体どうしたのでしょう?


国王へ挨拶。

「おお何をしていた? お客様を待たせるでない! 」

昨日まで閉じ込められていた人物とは到底思えない元気で溌剌とした国王。

「それよりも…… こちらがあのボスバーチュン家のクレーラです。

今回の戦いの一番の功労者です。

彼女の協力がなければ今の我々はいなかったとそう承知しています」

王子が褒め称えてくれる。

もう大げさなんだから。足を引っ張ったのにそこまで評価されては逆に辛い。

王子の優しさが痛いほど。ですがここはもう少し厳しくして頂かないと。


「うむ。それはよくやってくれた。では改めて爵位を授けたい。

すべて落ち着いたら二人で来るがいい」

国王はお父様をお許しになると言ってくださった。

すこぶる機嫌がよろしい国王。それに対してなぜか苛立つ王子。

「ですから彼女を…… 」

「ははは! 何を言う。せっかくだから君にも紹介しよう」

そう言うとついてくるようにとだけ。

仕方なく王子の後に続く。


「国王様! 」

煌びやかなドレスの女性が立ち上がる。

「ははは! そのままでお願いしますよ姫」

国王が気を遣う。姫って何?

「彼女はクレーラ。王子の世話係でこの度の戦の功労者です。

こちらはアーノ姫。お忍び諸国巡礼中にたまたま通りかかったので挨拶に。

お国は確か…… 」

「申し訳ありません。事情がありまして伏せております。どうかご勘弁ください」

まさかどこからか逃れて来た? この女何だか秘密があるみたい。

王子にしろ国王にしろ彼女に関わっていいことはない。


「私はクレーラ。王子の婚約者です」

「そうですか…… それはお幸せに。ボクはアーノ。それでは失礼します」

少々変わっているなと思ったがボク? 姫様でボクはさすがにないのでは?

服も宝石もそれは眩しいほどですがお忍びでこれ? あり得ない格好。

顔だって大したことない。たとえ名のある姫だとしても負ける気がしない。

このクレーラ様に比べたら見劣りする。

ああつい対抗心が。


「待ってくれ! 彼女は冗談で…… 

ぜひあなたのような完璧な方を我が王子の妃に! 」

国王はなぜか取り乱してる。私の冗談がまずかったのでしょうか? 

でも私たちはどうせ結ばれるのだから別に。

「ボグ! ボグ! 」

どうやらお怒りになったらしい。我慢できずに珍妙な声を上げる。

これ以上引き留めては可哀想。ボロが出るとも限りませんからね。


「姫! 」

「それではまた来月にでも。これで失礼いたします」

アーノ姫は別れの挨拶をして行ってしまう。

マイペースな姫様。これでは先が思いやられる。

王子は大喜びで国王はムスっとしている。

これは一体どう言うこと?

私の知らない間に何かあったのでしょうか?


何だか雲行きが怪しくなったのでここは離れるとしましょうか。

こうしてよく分からないうちに国王挨拶を終える。

「済まないなクレーラ。実は国王がアーノ姫を気に入ってしまって。

いきなりだからこっちも困ってさ」

下手な言い訳に終始する。何て情けない。

大体の事情は察しましたが私を無理やり連れてきて何がしたかったの?

まったく見えてこない。ただの自慢ではありませんよね?

そんな風に考えてるとどこからともなく歓声が。


やああ!

気合が入った声。どうやら戦ってる模様。

そこにまた歓声が飛ぶ。

「おお始まったのう。よし行ってみるとしよう」

国王は機嫌を直し歓声の上がる方へ。


「王子…… 」

「あそこの人だかりを見てくれ。今回の目玉の一つらしい。

何でもタルも出場するつもりだそうだ。

「あのタルシム様が? ならば私たちも早く行きましょう」

応援に駆け付けることに。

「慌てない。タルは強いんだから大丈夫。やられやしないって」

王子は自信満々。これなら安心して見ていられるかな。


「済まんが通してくれ! 」

「おお王子様。今いいところです。間もなく決着しますよ」

王子は人を掻き分けて最前列へ。私も一緒に。


おおお!

大歓声が再び。どうやら決着したらしい。

勝敗は? タルシム様は?


何とタルシム様は膝をついておられるではないですか。しかも血まで。

「勝者はマキシミン! これにてすべての戦いを終える」

一人一戦方式らしい。

タルシム様対マキシミンの白熱の一戦はマキシミンの勝利。

王子の見立てでは両者の実力はほぼ互角だったとか。


これですべての対戦を終える。後は国王様一言述べればそれで終了。

ですがどうも観衆はそれでは満足が行かない様子。

もう一度と再戦を望む者が多数と言った熱狂ぶり。


「タル大丈夫か? 」

王子が助けに入る。

「ああ…… 大したことはないさ。しかしマキシミンはやはりすごいな」

相手を称えることを忘れないタルシム様。

何て立派なお方。さすがは私が見込んだだけのことはあります。


「よし行くぞ! 」

「待ってください王子! ぜひあなたと一戦交えたい。いかがでしょうか? 」

マキシミンが懇願する。

「しかしな…… 」

王子ははっきりしない。それも当然でしょうね。

相手はあのマキシミンですからね。自由同盟の中でも随一の剣士。

しかもタルシム様を倒した実績まで。これでは王子も慎重にならざるを得ない。


うわあああ!

観衆はマキシミンの一言で制御不能になりつつある。

彼らのためにも王子自身のためにも。この戦いは避けられそうにない。

「分かった。では受けて立つ! 」

「よし分かった。ならばこの国王が直々に見届けてやろう」

本来止めるべき国王が聴衆に乗せられ調子に乗ってしまう。


「では始めよ! 」

右にマキシミン。左に王子。


互いが剣を構えて一言ずつ。

「国王の名のもとに! 」

「自由の名のもとに! 」


こうして王子対マキシミンの運命の一戦が始まる。


            

            エピローグ<前編>に続く

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