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最果ての剣士

マッギとコーコのピンチを救った謎の剣士。

「あんたはまさか…… 」

マッギは男に心当たりがあると言う。

「ははは! 俺たちは初対面のはずだ」

そう言ってのけるこの男の正体は?


「本当にありがとうございました。ほらマッギも」

「そうだった。助かりやしたぜ」

まずは助けてもらったお礼から。

「気にするな。当然のことをしたまで…… 何だその目は? 」

「うーんやっぱりどこかで…… 」

「だから初対面だって言ってるだろ? 」

「そうよマッギ。命の恩人にこれ以上失礼なこと言わないの! 」

コーコが窘めるがマッギは上の空。

あーでもないこーでもないと考えを巡らせる。


「思い出した! 最果ての剣士…… 確かその正体は一国の王子だとか…… 」

「なぜお前がその名を知っている? いや何でも…… 忘れてくれ」

驚きの表情を見せるも何でもないと黙ってしまう。

「俺も吟遊詩人だからさ。その手の噂は敏感でね。確か二刀流だとか」

「吟遊詩人か…… おっと無駄話していられない。俺は助けに来たんだった。

それで姫はどこにいる? 」

男はすぐに冷静さを取り戻す。


「姫って…… 捕まってるのは国王でそれを助けるのは王子……

ああプレゼーヌですね? 」

マッギはようやく納得した様子。

「プレゼーヌ? 違う! クレーラだ! クレーラ姫を助けに来たんだ! 」

「クレーラってあの酷い女? どこがいいんだか…… 」

「何を言ってる? 俺は彼女を救出に来たんだ」

爽やかな謎の剣士はどこかおかしい。


「なあコーコ。あいつが何を言ってるのか分かるか? 」

「ホラ聞こえる! せっかく駆け付けてくれたのに失礼でしょう? 」

「でもよう。どうかしてるぜあいつ。ただの性格の悪い女を姫だって。

確か怖い婆さんとこの孫娘だったよなクレーラって」 

「知り合いなんでしょう。とにかくもう一度お礼を」

「もう充分だろう? あんまり関わりたくないな。強いがどうかしてるぜ」

二人がコソコソしていると痺れを切らした謎の男が動き出す。


「俺はそろそろ行く。お前たちは隠れてろ。それでどこに? 」

「待ってくれ! 俺たちも連れて行ってくれないか? 」

「悪いが足手まといになるだけだ。それにこれ以上は危険だぞ」

「頼むよ! 俺も戦いたい。ここまで来たら最後まで…… 」

マッギが無理やり頼み込む。これでは断れない。


「まったく仕方ない奴だな。案内は頼んだ」

「やった! ほらコーコはそこに隠れていてくれ」

「私も行く! 」

自分も行くと言ってきかない。

「よし分かった。二人とも付いてこい! それで武器は? 」

マッギもコーコも武器と呼べるものは所持していない。

その辺に落ちてるものでどうにか賄うことに。

「悪いが自分の身は自分で守ってくれ。予備の武器は一つ。後は敵の剣を」

こうしてどうにか形にはなった。


「いいか。お前のは本物だがもう一つはただの偽物だ。

要するに脅しの剣だ。ホラ鋭く見えるだろ? そう見えるよう作られているのさ。

これを見せると面白いように皆固まってしまい動きが一瞬遅れる。

または退散してしまう。そっちがほとんどかな」

警備隊から奪った剣をマッギが。コーコが偽物を。


「コーコ…… 」

「私どうしたら? 」

「大丈夫。使いさえしなければ問題ない」

こうしてついにマッギたちは国王が待つ地下牢へ向かう。

そこでは思いがけない事態に陥った王子たちが。


その頃。王宮入り口では前進と後退が繰り返されていた。

「ピエール先生! 」

「待て! まだ伝令がない。今は堪えるんだ。

もう少し。もう少しでこのバカげたお遊びも終焉する。

今は犠牲を出さないこと。奴らだって入り口で留めてる分には動きはしないさ。

何と言っても数ではこちらが圧倒的だから。防衛に心血を注いでるところだろう。

まあこちらの動きを不審に思ってるだろうがこれも想定内。

さあもうあと一時間もすれば命令が下るはずだ。それまで何としても堪えろ! 」

「はい! よーし行くぞお前ら! 」

「おーう! 」

こうして再び王宮入り口での攻防が繰り返されることに。


それから三十分が経過。

ついに動きがあった。

使者が王宮内へ走る。

警備隊長が応じることに。

「者ども手を出すな! 使者を通せ! 」

こうして無事に使者が到着。


「申し上げます! 我が軍は王子によって集められた複合部隊。

これ以上の無益な争いは望んでおりません。

間もなく撤退する見込み。どうぞその旨ご了承ください」

使者は読み上げると勅書を手渡す。

「何? 撤退だと? ふざけたことを抜かすな! 」

「しかし隊長! これ以上はこちらも…… もう限界です」

勅書によって混乱を来すことに。


「それで我々にどうしろと? 」

「王命が下るまでそのままでお願いします」

「王命? それは国王様が無事に姿を見せると言うことか?

確か大病を患って民の前に出てこれないとか何とか…… 」

「それは真っ赤な嘘。陰謀に巻き込まれて現在幽閉中です。

失礼。これは私個人の見解です。誤解なさらぬよう」

「分かった。そこまで言うのなら待つとしよう。

国王様が姿を見せ中止せよと命じたなら従うのが我々の務め。

歯向かう理由など何一つない」


こうして一時休戦となる。


双方にけが人は出てるものの幸いなことに犠牲者はまだ。

今の内なら引き返せる。取り返しのつかなくなる前に撤退するのがお互いのため。

王命とあって双方ともに動きが止まる。

もちろん王命と言っても王子によるものでしかも今出しているのは偽王子。

これもピエール先生の思惑通り。


すべては国王救出奪還作戦の結果次第。


                続く

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