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消えた黒幕

地下牢。

ついに国王救出へ。当初の目的を果たす。


国王と王子による感動の再会を一歩下がって見守る。

ここで少々気になることが。

国王以外誰もいない。鍵もどこにも見当たらない。一体どこに?

そもそも誰もいないのはかなり不自然。

国王が幽閉されてるにも関わらず誰一人つかないなどあり得ない。

普通一人は地下牢に配置されるはず。

それがいないと言うことは事前に人払いしたことになる。

人払いした者は一体どこに消えた?


「良かったなクレーラ。これで私たちも救われるぞ」

お父様はそう言うと二人の元へ。

もう王子にしろお父様にしろはしゃいで大人げない。

ふふふ…… 本当に困った人たち。


ああ疲れた。

緊張と恐怖と疲労で体はボロボロ。

それでも満足感が上回りどうにか立っていられる。

でももうそろそろ限界。特に何をしたと言う訳ではありませんが。


「王子もお父様もそれくらいで。急ぎましょう」

国王救出奪還作戦はまだ終わっていない。

国王の無事は確認できたものの衰弱が激しい。急いで脱出しないと。

もうお年ですから国王にもしものことがあってはなりません。


「本当に済まんな。この情けない国王と王子のためによくぞやってくれた。

お前たちには感謝しても感謝しきれん」

お褒めの言葉を頂く。これでお父様の言うように救われることでしょう。

国王が恩義に感じ爵位の復活まで考えてもらえたら完璧なのですが。

「ああ国王様! もったいないお言葉です。当然のことをしたまでです」

お父様が緊張して畏まる。さすがは国王だけあって威厳が違う。


「うん? お主の顔に見覚えがあるぞ。裏切った男に顔がそっくりじゃ」

当時の印象が強烈に残っているのでしょう。

何と言ってももう少しで毒殺されるところ。国王も気が気ではなかったはず。

「その通りです。彼はお茶会の席で毒殺しようとした者の一味」

王子は馬鹿正直に答える。これでは印象が悪くなってしまう。

もうこんなおめでたい時に余計なことばかり。本当に困った方。


「国王様…… それは昔の話。現在は王子に忠誠を誓っております」

「そうか。まあこの際どちらでもよい」

これでどうにか裏切り者の烙印を捺されずに済みそう。


「とにかくここから脱出しましょう」

「よしでは国王を…… 鍵はどこに? 」

ここまで来たのに肝心の鍵が見当たらない。

このままでは国王は地下牢に閉じ込められたままになる。

「王子はどこにあるかご存じないんですか? 」

「いや…… そもそも見張りがいないのが不思議なんだよな」

国王を一人にしどこかへ行くなど想定外。


「悪いが早く出してくれんか。硬くて腰に来るわ」

国王は呑気に腰をさする。王子も笑うのみ。お父様もつられて苦笑い。

もう安全だと気が抜けた状況。これはまずい。嫌な予感がする。

「お父様はどうです? 」

首を振るだけ。鍵の在り処など知る訳もないか。

これは困りました。国王が何か知っているかもしれない。


「鍵か…… そう言えば見張りの者がおらんな。それにあ奴もどこにも…… 」

国王はもう一人の存在を仄めかす。

「あ奴とは? 」

王子が追及するもただはぐらかすのみ。

「だから…… 黒幕の大臣が近くにいたろ? お前たちが来る直前までここ……」

「いえ見張り意外誰も…… 」

国王も王子も何か違和感を感じ取ったのか口ごもる。


「しかし国王様。実際我々は誰とも会っておりません。それはいつ? 」

お父様が話を引き取る。

「じゃからお前たちがここに駆け付ける直前まで奴と話していたわ。

お前たちが来ると分かり急いで逃げて行った。だから必ず会ったはずだ」

国王はそうだと頑なに譲らない。

「でしたらどこかに隠れたとか? 」

「それはあり得る話だが…… まあよい。それよりも今は鍵だ。

早く取って来るのだ。そこらで伸びてる者を片っ端から…… 」

「分かりました! さっそく取って参ります! 」


「待て! 鍵ならここにある」

すぐ後ろから声が聞こえる。

振り返った王子はいつの間にか顔が引きつっている。

「もうマッギ…… 」

あれ囮に使ったマッギが鍵の在り処を知るはずがない。

では一体声の主は誰? それは国王の話から推測できること。


「クレーラ! 逃げろ! 」

「やめろ! 」

お父様が叫ぶと遅れて王子まで。一体何事でしょう?

「きゃああ! 」

「おっとお嬢さんお静かに」

いきなり掴まれたと思ったら首元に光るものが。


「ちょっと何をするの? あなたは一体誰なの? 」

もはや訳が分からない。どうしてこうなったのか理解できない。

「おっと動かないで。一応は人質なんだからな」

国王救出で牢屋にしか視線が向いていなかったその隙を突かれた。


王子とお父様に任せて私は一歩も二歩も下がったところで大人しくしていた。

そこをチャンスだと見た男によって捕まってしまう。

ああ何てことでしょう? 一瞬の気の緩みを突かれた。

警戒していたはずなのに人質になってしまった。

情けない。またしても王子の足を引っ張り国王救出奪還作戦も失敗に終わる?

あれほど気を付けていたのにどうしていつもこうなってしまうのでしょう?

もう自分が情けなくて仕方がない。


「さあでは指示に従ってもらいましょうかな王子」

男によって一切の動きを封じられる。


                続く

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