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突破!

隠れ橋を渡った先に番人が待ち構えていた。

王子を慕う謎の大男・トニー。

二人はどういう関係?


「まさか王子がそのような格好を…… 」

「単なる変装だ。この者の提案でな。どうもこの格好は…… 」

恥ずかしそうに否定する王子。でも実際は違うでしょう?

無理やりプレゼーヌの格好をさせたのではない。

これがいいと言うから敢えて反対しなかっただけ。

「気に入っておられるんですよね王子? 」

照れる王子に代わって補足する。

「いやまあ…… そう言うことだな。ははは! 似合わないか? 」

「いえ。滅相もございません。とてもかわいらしいです」

トニーは褒めるが無理矢理感が拭えない。


「お前もそう思うか? ははは! 俺はマッギ。よろしくな」

調子に乗って肩を組もうとするマッギ。

「こら引っ付くな! 」

「うわちょっと…… 」

ふざけ過ぎてマッギは空中を舞う羽目に。


「ではこの方たちは敵ではなく王子のお知り合いだと? 」

「そうだトニー。仲間だな。大切な仲間だ」

「それは大変失礼しました」

忠臣のトニーが非礼を詫びる。

済んだことは気にしない。彼も必死だったのでしょう。


「それでトニーって? 」

「小さい頃からの私の良き理解者だ」

「そうではなくて! ご紹介願いませんでしょうか王子? 」

二人だけで楽しそうに喋ってないで私たちにも分かるように紹介すべき。


「では私から。トニーか…… ようやく思い出したよ」

ちっとも要領を得ない王子に代わりお父様が説明する。

「トニーは親子でこの王宮内のお世話を任されている。

要するに庭師だな。ボスバーチュン家にも立派なのがいるだろ? 」

お父様が王子に代わってトニーを紹介。

さすがはお父様。国王の側に仕えていただけのことはあります。

ただ我が家の庭師はもういませんが。お父様が追放されてからすぐに姿を消した。


「おいおい俺はあんたを知らないんだがな」

トニーはお父様を侮辱する。

「トニー忘れたのか? 彼は私が追放した男だ。そしてこの方のお父様だ」

「ああ! そう言えばこんな間抜け面だったな。すっかり忘れていた。

あんたも苦労したんだな。でも仲間と言うよりも敵ではないのですか王子様? 」

侮辱し続ける困ったトニー。


「いやあの追放劇には誤解があったのだ。彼らには協力してもらっている」

「そうですか…… 何だかよく分からないな」

難しいことはトニーには理解できないらしい。

「だから俺たちは今仲間だって話だぜ」

マッギがそう言って馴れ馴れしく肩を叩こうとするが届かずに腰を掴む。


「さっそくだがトニー。父上の…… 国王様の安否を確認したい」

二メートル越えの大男のトニーを案内役にして王宮を攻略することに。

「分かりました王子様! ついて来て下さい! 」

王子の頼みとあって張り切るトニー。


「本当にいいのかトニー? 悪い噂が流れているだろう? 」

王子が何かしら気にしてる様子。

「ああ王子様が謀反を犯した大悪人だと大臣たちが噂を流していましたね。

しかしそんな事実はどこにも。国王様だってまったく信じておりません。

これは王子様を騙って反乱を起こそうとしてるとしか思えない」

トニーは最後まで王子を信じるつもりらしい。

どんなことがあってもそれは変わらないと豪語する。


無理な噂を流したところで誰も信じやしない。

だとすれば今は流した者の報復を恐れて従っているに過ぎないのでしょう。

ただこのまま行けばいつの間にか根も葉もない噂が真実へと変わってしまう。

その前に何としても首謀者を見つけこの陰謀を終わらせなければなりません。

それにはまず何からすればいい?


「よしではトニー。改めて協力を要請する」

「はい王子様! お任せください! 」

こうしてトニーの案内を受けることに。

トニーを先頭に王子、お父様の順に歩き出した。


「王子様もご存じのようにこの門を超えれば国王様のお住まいとなっております」

と言うことは王子の住まいでもあるのね。

問題はこの門をどう開けるか。


鍵穴発見! ここに差し込めばいいのでしょう。

「頼んだぞトニー」

鍵の一つを庭師であるトニーが厳重に管理。

ただ偽王子が脱出した時に持ち出していたので鍵自体はある。

そうでなければ侵入は難しい。


「お待ちください王子様! その前に着替えた方がよろしいかと」

トニーは神聖な場所だからと譲らない。

「しかしここまで変装してきて今さら着替えろと言うのか? 」

「たとえ王子様でも…… いえ王子様であるからこそきちんとした格好で」

プレゼーヌではなく王子として振る舞えと要求する。

「分かった。分った。しかし着替えなど用意してないが」

「着替えでしたらこちらです」

コーコが念のために用意したものがあるとのこと。


「これですか王子様…… 」

「不満か? 」

「いえ滅相もございません。大変立派なお召しもので」

こうして準備完了。後はこの固く閉ざされた門を開くだけ。


「皆少し下がってくれ! 」

ガチャと音を立てるとギイーと嫌な金属音が響き渡る。

まさか聞かれた? 

念のために辺りを見回すが異変は感じられない。

それもそうか。まだ攻防が続いている。こちらに注意が向くはずない。


「よし開いたぞ! さあ続いてくれ! 」

ついに王宮内部へ。


                続く

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