表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/101

戦線離脱? 麗しのプレゼーヌ

馬車は橋の前の道を曲がるとすぐに右へ。

王宮を囲むような小さな道を進む。

そしてすぐに道は消えてなくなってしまう。


ここでストップ。

辺りは雑草が生え放題。専属の庭師もここまでは気が回らないのでしょうか?

もちろんそんなはずないと思いますが。


「さあマッギ! ここからがあなたの出番よ! 」

「ああん! 何を言ってるんだよ? ただの戦線離脱だろうが。

あーあやる気なくしたな俺。もう嫌になるぜ」

国王奪還に向けて仲間たちが勇猛果敢に戦ってるところ。

それなのに我々は安全なところから戦況を見守っている。

そんな風に思ってるのでしょう。


「ほらマッギってば! 」

「やってられるかよ! なあコーコ? 」

コーコも茫然。すぐに笑顔を見せる。戦いに巻き込まれずに安堵してる様子。

でもそれは甘い。何も本気で戦線離脱する気はない。

「早くしなさい! 時間がもったいないでしょう! 」

ここに来てマッギのやる気が失われては計画が破綻してしまう。

代わりがいないこともないですが…… でもこれはマッギが適任。


「俺に何させようってんだ? 戦いが終わるまでどうせゆっくりしてんだろ? 」

駄々をこねる困った一番弟子。全然思い通りに動いてくれない。

今は一分一秒が大事なのに。遅れれば遅れるほど失敗する確率が上がる。

これが極秘作戦の悪い部分。

それでも何としてもマッギを説得しなくてはなりません。

仕方ない。ここは一つあの方に頼んでみますか。


「ねえコーコ。ピエール先生はどちらに? 」

まさかとは思うが一人だけ宿に残ってるはずはないよね?

馬車に乗っているものだとばかり……

「お父さんは自由同盟の後方で指示を送ってる。

王子たちとの連携もうまく行ってるみたい」

「そうなんだ…… 王子とね…… 」

「どうしたのクレーラ? 何か変なこと言った? 」

「ううん。何でもない。それよりマッギ…… 」 

「知るか! 」

マッギは頑なに拒み続ける。


その時だった。

「悪いがマッギ頼まれてくれないか? 」

そう言ってもう一台の馬車から降りてくる。

固まるマッギ。見覚えのある女の子?

「ええまさか王子? 王子様! 」

大声を出そうとするので無理やり口を塞ぐ。


「もう何やってるのマッギ? 極秘作戦なんだから大声出さない! 」

「へへへ…… 悪い。でもどうせ聞こえはしないさ。これだけうるさければな」

マッギの言う通り。自由同盟と乗馬部隊が激しく戦っている。

宮殿を守るのは全国から召集した精鋭部隊。相手に不足はない。


王子とは言ってるがきちんと変装していてかわいらしいプレゼーヌに。

人目を欺くように。ボスバーチュン家で通用したのだからここでだって。

王子にとっても皆にとっても安全なやり方。

そもそも王子も大変気に入られている。


「しかしよ。王子は乗馬部隊で指揮を執っていたのでは? 」

マッギの驚きもよく分かる。だから説明してあげたいけど後で。今は時間がない。

「もういいから早く手を動かす! 」

「へいへい。人使いの荒いお嬢様で。それでこれでどうなる訳? 」

マッギはまだ半信半疑だ。手よりも口が動く。

「いいから早く! いい? あまり雑草を抜かないこと。後が大変だから」

注文に渋々従うマッギ。彼もようやく自分の立場と役割を理解したのでしょう。


「ああもう疲れたな。しかしようこれくらいならお前にでもできるだろ? 」

冷静になったマッギ。意外にも頭が回る。

完璧な計画だと思ったのについにバレてしまったか。

そう本当は誰にでもできること。でもマッギが適任なのは言うまでもない。

「だからせめてあなたの活躍の場をと思って…… これも弟子を思う親心よ」

「そうかそうか」

どうにか説得する。


「もうそれくらいで良い。さあ先に進んでくれマッギ! 」

「ヘイ王子! 」

素直に従う。さすがは忠誠を誓っただけのことはある。効果抜群。

でも…… もう少し王子の存在は隠しておきたかった。

だからこそのプレゼーヌなのに。

「では王子参りましょう」

お父様も参戦。本来は偽王子の下で。ただこちらが手薄だと志願した。


マッギが開いた道をコーコ、王子、私、お父様の順に進んでいく。

うんすべて予定通り。順調。

「あれ他の奴はどうするんだ? 」

残り四人のうち二人はもしものためにここで待機。

「ほら急いでマッギ。あなたが引っ張るんでしょう」

「何だか訳が分からないけどまあいいか」

こうして生い茂る雑草を分け進む。


「ちょと待ってマッギ! 」

ここで止めに入る。これからが重要になってくる。

雑草を取らないのには理由がある。


敵が襲撃した場合常に真正面から突撃してくるように作られている。

なぜならそれ以外に外に出る方法がないから。

もちろん船で脱出も考えられるが水路は結局のところ正面の橋に繋がっている。

そもそも船では目立ってしょうがない。

だから敵も橋の周りは固めるがぐるりと包囲することはない。

それは一見無駄なことに見えるから。


この王宮が襲撃を受けたのは一度や二度ではない。

国王が若かりし頃には戦いは激化していたのだとか。

外国勢力や反乱軍に当時の有力者たちによる裏切りも。

そのたびに包囲され籠城せざるをえない状況。

そんな中で奇跡の脱出劇で劣勢を跳ね返し敵を退けて来た歴史がある。

王子が自慢するがどこまでが本当かは国王本人に聞くしかない。

今回も国王は狙われたがそれは内部でのこと。

一度は未遂に終わり偽王子によればすぐに国王は囚われたとか。


「ほらよく見て。橋があるでしょう? 」

「おいまさかここを抜けるのか? 」

マッギが怖気づく。


               続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ