作戦開始!
ついに動き出す。
先頭を自由同盟が。乗馬部隊がそれに続く。最後に我々C班が馬車で。
コーコまで連れて来たのはまずかったかな?
別に私の判断ではないのですがマッギったら興奮して。
早いところ静かにさせないと。
「おいクレーラ! 聞いてるのか? 」
「王子がそう言うから…… 仕方ないでしょう! 」
「はあ? コーコが戦場に? どう考えても無謀だろうが! 」
マッギには詳細を伏せてるものだから不安で仕方ないんだろうな。
今すぐにでもマッギにすべて話しておくべき?
でもそんなことしたらまた私のせいで救出奪還作戦が失敗に終わる。
ここは心を鬼にして黙っているしかない。
「大丈夫。何とかなるって」
「大丈夫なものか! 今すぐ降ろさせろ! 」
あーあどんどんエキサイトしていく。もう見てられない。
確かに今回の作戦は危険がつきものですが。
それでも王子が考えた華麗なる作戦。しかもピエール先生のお墨付き。
面倒だからここはコーコに任せる。
「ごめんねマッギ。でも心配しないで」
「だからお前が無理して行くことないだろ? 」
「私が頼んだの。お父さんが戦うんだからさ。私もじっとしてられない! 」
「おいコーコ! これは遊びじゃないんだぞ? 」
「分かってるって。でも王子も必要としてくれるみたいだし」
「クソ! もうどうなっても知らないからな! 」
そう言ってそっぽを向くと大人しくなってしまった。
あらあらマッギったら。さすがにこの状況でふざけるのもからかうのも忍びない。
ここは大人しく様子を見守るとしましょう。
「ねえクレーラ。馬車は三台あるみたいだけど」
コーコは鋭い。恐らくマッギはそのことにも気づいてないんだろうな。
「うん。私が集めて来た人たち。覚えてるでしょう? 筋肉自慢の人とか。
彼ら素手部隊にもどうやら役割が与えられてるみたい」
ほとんどが私の美しさの虜になった哀れな方たち。
もはや戦力になるか微妙なところではありますが王子の目に狂いはない。
「へえそうなんだ。ねえこれって似合ってる? 」
コーコはすぐに興味を失い話題を変える。
まるで舞踏会にでも行くようなひらひらしたドレス。
これで戦えるとはとても思えません。それは私も似たようなもの。
本当にこれでいいの王子?
「そのドレスって確か…… 」
「そう王子様に選んでいただいた思い出のドレス」
マッギと親しくしてるのにまだ王子に未練があるらしい。これは困ったな……
コーコを巡っての醜い争いが勃発しそう。
特にコーコのことになると感情的になるマッギ。
私としては一番弟子のマッギには幸せになってもらいたい。
でもコーコのことを考えると複雑だな。
コーコは王子に相手にされずマッギはそのコーコから相手にされていない。
おっと今は余計なこと考えてる時ではない。
どうせなるようにしかならないので放っておくのが一番。
こうして予定通り王宮のある城下町へと入った。
今のところ察知された気配はない。でも決して気を抜いてはいけない。
見えない相手だけに不気味さが増す。
さあここからが本番。
前を行く自由同盟を追い越し乗馬部隊が先頭に立つ。
うんうん予定通り。
後は王宮に繋がる橋が落とされなければいい。
ただよっぽどでもない限り間に合わないはず。
今から橋を落とそうとしても通り抜けられてしまう。
それに王宮内は国王も王子も不在で指揮系統が混乱。
迅速に対処できるとは到底思えません。
もちろんそれだけではなく橋を落とす決断はそう簡単にはできない。
なぜなら……
王宮内。
「おい! 何だあいつらは? 」
「それがどうやら王子が結成した部隊のようでして…… 」
「よしすぐに橋を落とせ! 奴らを中に入れるな! 」
「しかし…… そんなことをすれば我々も閉じ込められることになりますよ」
「だが奴らが侵入したら一巻の終わりだ! 早くしろ! 伝達を送れ! 」
「ですが…… 」
「口答えをするな! 手遅れになったらどうする? 」
「はい。仰せのままに」
「いいか。ここで捕まれば間違いなく処刑されるぞ!
我々はもうすでに国王を裏切ってるのだからな! 」
「念を押さずとも分かっております。ではさっそく」
「うん…… 」
「どうされましたか? 」
「いや待て! 何も閉ざすことはない。
王子をおびき寄せ始末すればいいだけだ。よしこのままにしておけ。
儂はもしもの時に備えて国王に挨拶へ。お前は時間を稼ぐのだぞ」
王宮へと繋がる橋に異変は見られない。
橋の向こうには門番が構えている。
まずは第一関門と言ったところだろうか?
「よし突っ込むぞ! 」
「おう! 」
隊長の号令で乗馬部隊と自由同盟が橋へ。
命懸けの突撃を開始する。
「ははは! どうやらうまく行きそうだな」
マッギがほくそ笑む。
「もうマッギたらここからが本番でしょう? 」
「そうだったな。さあ俺たちも…… あれどこに? 」
馬車は橋の直前で左に曲がる。
「おいどうしたってんだ? 」
見ごとにマッギを騙し切った。
「そうよ。何か聞いてないのクレーラ? 」
ついでにコーコまで。これならきっと敵も騙されるに違いない。
王子とマキシミンとピエール先生によって練られた作戦。
アイデアは王宮をよく知る王子に寄るもの。
マッギとコーコを騙すのは忍びないが騙すならまず味方からと言いますからね。
この作戦は漏れても読まれてもダメ。そのため限られた者しか知らされていない。
続く




