決戦の朝
決戦前夜・パリリントン。
あれ生きてる? なぜか私も王子も無事。一体どういうこと?
何とか絶体絶命の大ピンチを切り抜けた。
これはただの毒殺再現で決して裏切りのお父様ではなかった。
どちらかと言えば王子の方。裏切りの王子と言っていいでしょう。
お父様から聞かされてるにも関わらず私に伝えなかった。
結局国王を亡き者にしようとした黒幕がはっきりしない。
これでは明日の決戦に不安を残すことに。
問題のお茶会。
王子とお父様は当然月に一度のお茶会に参加していた。
特にお父様は陰謀を巡らせた仲間を知る関係に。
そして王子も出席者には覚えがあるはず。
たとえ一人に絞れなくてもあの場にいた者は疑ってかかるべきで排除すべき。
「王子は本当に心当たりありませんか? 」
もうピンと来てる気がする。まさか慎重になられている?
ですが今はそんな場合ではない。もう戦いは明日なのですよ?
「それはもちろんあるがな…… 」
「ウソ? それなら早く言ってくださいよ! すぐ解決ではないですか? 」
まったくこのボンクラ王子は肝心なことを隠しておくんだから。
「私が思うに黒幕は恐らく…… この男だ! 」
お父様を指し示す。あーあ期待して損した。
「もう冗談は良いですから」
「冗談ではないぞ! 」
「いえ悪ふざけも充分ですから」
「そうか…… 」
どうやら悪ふざけだったらしい。もういい加減にしてよね。
「まったく王子も人が悪い。私が黒幕のはずないではありませんか? 」
そうやって笑うが王子は一切信用してないと睨む。
まだ当時のわだかまりがあるのでしょう。
それは王子だけでなくお父様にも。
「クレーラには悪いが一度裏切った者はまた裏切るぞ」
「それはあんまりです王子。私は王子を信じてすべての罪を被ったのですから」
王子は教訓じみたことを言ってお父様を困らせる。
うーん…… お父様にしろ王子にしろどっちもどっちな気がする。
「クレーラ…… 」
「我が娘よ…… 」
お互いが主張し合う面倒臭い展開。
「もう仲間割れはよしましょう。決戦前夜に何をやってるんですか? 」
二人の言い分を聞くのは時間の無駄。どちらも好き勝手述べるから信用ならない。
王子とお父様のどちらかを信じろと言われればそれはお父様。
お父様を最後まで信じる。それが娘の役目。正しいとかではない。
そもそも王子を信じてお父様を排除してどうすると言うのでしょう?
「そうだな。いつまでも拘って大人げなかった。許してくれ」
「何をおっしゃいます王子。こちらが悪いのでございます」
お互いが謝罪の言葉を述べる。
これで二人のわだかまりも消え関係も改善されると思ったのも束の間……
「いいや。王子である私の判断ミスだ! 」
「それは違う! どうであれ裏切った私が悪いのです! 」
「何を言う? 私だ! お前ではない! 」
「それは考え違いでございます」
今度はどちらが悪いかで揉める。
と言うよりどちらがより悪いかを競っているかのよう。
言い争いは第二段階へ。揉める時はどんなことでも揉める。
本当にいい加減にしてよね。
ただこういう時は楽だ。
「どっちも悪いんでしょう! もう静かにしてよ! 」
「娘よ…… そう言わずにほらホットチョコのお替りでもどうだ」
「飲めるはずないでしょう! 」
「では王子はいかがですか? 」
「その方の心遣い感謝致す…… って飲めるか! 」
王子まで怒り狂う。それは無理もない話。
もう少しで飲まされるところだったのですから。
それを回避する能力があるのが不思議でならない。
ただの情けない王子に見えるのですがね。
「さあもう疲れたから寝ましょう」
あの日何があったのか知ることができた。
まさか娘にウソを吐くはずもないので信用していいとして問題は王子。
まだ納得いってない様子。
「お休みクレーラ」
「しっかり眠るんだぞクレーラ」
こうして夜は更けていった。
ついに迎えた当日。
日が昇る前の五時に出発。
A班の国王奪還複合部隊は馬で。
B班の自由同盟は徒歩で。
C班のその他は馬車で。
まず自由同盟が行進を開始する。
遅れて乗馬部隊が。
残りの者が馬車に乗り込む。
さあついに国王救出奪還作戦が開始される。
まだ薄暗く気づかれる心配はなさそうだ。
「あれ王子はどこだ? 」
マッギが騒ぎ出す。
「さあ? たぶん部隊を率いてるのでしょう? ほらあそこに」
「どれどれ…… ああ本当だ! 大丈夫かよ王子は? 」
マッギが心配するように乗馬部隊を率いているように見える。
王子の作戦は確かに綱渡りの部分があって説明を受けても不安で仕方なかった。
でもここで私が邪魔すれば前回の二の舞のような気がして何も言えなかった。
それに王子の作戦はピエール先生によって修正されているのでより安全に。
「ほらマッギ落ち着いて! 私たちのやれることをしましょう」
「おい何でコーコまで連れて来たんだよ? 留守番じゃないのか? 」
心配性のマッギ。か弱いお嬢様の私たちを心配してくれるの?
「お前は良いがコーコはいくらなんでも可哀想だろうが! 」
いつの間にか私が無理やり連れて行こうとしてると誤解される。
続く




