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毒殺再現

あの日何があったのか?

お父様は不気味な笑みを。

王子は何かを感じ取ったのか震えている。

おかしい。二人の様子がおかしい。

あれ? そう言えば何だか私まで体調が……


「ちょっと待ってくれ! それまでは何の関係もなかったと言うのか? 」

王子は信じられないと。未だに心のどこかで許せずにいるのでしょう。

気持ちは痛いほど。ですがもう仲間。それくらいでよろしいのでは?

「はい。元々国王様に恩義が。裏切るような真似など絶対にしない。

それは家族が一番よく知っています。そうだろクレーラ? 」

またお父様は巻き込んで。これでは私まで疑われかねないではありませんか。

自分でどうにかして頂かなくては困ってしまう。

仕方ない。ここは事実をありのままに。


「毎日のように国王様に感謝の言葉を述べてました。王子の悪口はよく…… 」

「悪口だと…… それは本当か? 」

「冗談ですよ。さあお父様。お続けください。一体あの日に何があったんです?」

王子は感情的に。ただお気持ちもよく分かる。

王宮では常に陰謀が渦巻き裏切りが当たり前の世界。

そこで信頼していたお父様に裏切られたんですからね。

人間不信にもなるでしょう。心を閉ざしても不思議はない。


「これはとても恥ずかしいことなので他言無用だぞクレーラ?

特にお婆様の耳には絶対入れてはいけない。いいな? 」

しつこく何度も念押しをするお父様。約束ぐらいしますが面白ければつい。

どこかの吟遊詩人にでも。

「ほら続けよ。明日は早いぞ! 」

王子に促され再び語りだす。


「その日は国王様が皆を招いてのお茶会を開く予定だったのです」

「そうだった。私が中止にしていなければ恐らく…… 」

どうやら毒殺するつもりだったらしい。

無駄に血を流さずにスマートに。


「待ってくれ! まさかその茶に毒が? 」

怯える王子。それはそうでしょう。九死に一生を得たのだから。

お父様を追放したその判断は間違っていなかった。そう言わざるを得ない。

「はい。器ではなくポットの方に毒を仕込むことに」

「しかし国王には毒見係はいたはずだが? それは王子である私にも」

あり得ないと切り捨てる王子。それは確かに私だってそう思う。

どうやったって失敗するに決まってる。ただ毒見係が命を落とすだけ。

しかも閉ざされたお茶会では外部の犯行は不可能。

犯人だってすぐに。陰謀もその日のうちに暴かれる。

そんな愚かしい選択はしない。誰だってそう思う。


「それは…… 機能していなかったと言いますか無駄なんですよ。

予定ではまず毒見係に茶を振る舞う。

そして大丈夫と判断されたところで隙を見て私が毒を入れることに」

「どう言うことだ? もっと分かりやすく頼む」

「ではここで再現して見せます」

お父様が不穏なことを述べる。

再現って何? 毒殺ですよね……


「まさかこのホットチョコに毒を…… 」

王子は椅子から転げ落ちる。

「王子! 王子! そんなお父様…… まさか嘘でしょう? 」

ついに陰謀の全容が明らかになるそんな時に思ってもみないことが。

絶体絶命の大ピンチ。

お父様が裏切った。可愛い可愛い末娘に手を掛けようとするなんて……

 

「悪いなクレーラ。これも国のためだ。悪く思わないでくれ」

「でも…… 私は一応この物語の主役のはずですが…… 」

「なるべく苦しまずにしてやるからな。ほら王子も往生際が悪い」

「お父様! 主役…… 」

「心配するなって。主役が私でまずければマッギ君にでも任せようかと」


こうしてお父様はついに目的を達成する。

王子以下二名がその犠牲に。


「ふふふ…… ははは! 」

大笑いのお父様。どうしてこんなことを? どうしてこんな目に?

もう誰も信じられない。


その頃ボスバーチュン家は。

「ああ心配だわ。どうして行かせてしまったのか? 」

「今は王子を信じましょう」

「しかし…… 」

「大丈夫ですよお母様。ほらお父様もついてますから」

「だから尚更心配なんです」

「心配。心配ってもう今更遅いさ。それよりも早くここを出る支度しな! 」

「お義母様! クレーラが! 」

「分かってるよ。確かに心配さ。でもどうせ王子と仲良くやってるんだろう。

危険がないようにしてくれるはずさ」

「ですが…… 」

「我々のできることをしようじゃないか。だから準備だ。

祈りも忘れるんじゃないよ! 」

「分かりましたお義母様」

「それでいい。二人が戻って来たら出発だ。いいね? 」

「はい! 」

「だったら今日はもう寝るよ! 」


裏切りのボスバーチュン家は一致団結する。


                  続く

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