見えない敵
国王救出奪還作戦。
明日の奪還作戦に備え馬車で王宮の隣町へ。
隊長に就任したマキシミンから一言。
もちろん王子がこの作戦のリーダー。
ただ実戦経験がないのでマキシミンが盛り立てる。
「これは極秘作戦である。各リーダーと今度の作戦を話し合う。
お前たちは上の言う通りに動いて欲しい」
王子から各リーダーに極秘作戦が伝えられる。
マッギたちメンバーに伝えるのは決行直前。明日となる。
元々王子は誰も信用せずに明日の移動中に話す予定だった。
しかしチーム分けした以上仲間を信頼しない訳には行かない。
各リーダとピエール先生に私も同席させてもらうことに。
一時間後。
再度集まってもらう。
マキシミンは王子に目配らせ。ピエール先生が頷く。
まさか王子があそこまで考えてるとは思いもしなかった。
王子案にピエール先生が細かく修正を加えて詰めて行く。
この詰め作業こそが作戦成功の確率を高めることに。
「待たせたな」
うおおおお!
まだ何も語ってないのに大盛り上がり。自由同盟が勝手に盛り上げる。
これが彼らのやり方。
「いいかもう一度言う! お前たちはただ従えばいい! 」
「何だと? ふざけるな! 」
生意気な新入りの自由同盟の言うことなど聞かんと反発する面々。
とは言えそれをまとめるのが彼の役目。
「いいか! お前たちの頑張りに掛かっている。
恐らく今回の奪還作戦に成功すれば褒美もたらふく。
それこそ一生分の食糧あるいはバロンまたは爵位さえも。
何も私の指示に従えと言ってるのではない。
お前たちのリーダーにただついて行けばいいだけだ。
どうだ? やる気が湧いてきただろう? さあ楽しもうではないか! 」
演説を打つマキシミン。彼には群衆を惹きつけるだけの魅力がある。
彼らが何を求めているのかよく分かっている。
それもすべて冷静で鋭い分析力に寄るもの。
メンバーをその気に。それ以上に盛り上げるには弁の立つ彼にはもってこい。
しかも自由同盟がかき回すから雰囲気に流されてしまう面々。
おおお!
熱狂する者たちは今にも暴発しそう。
これはさすがにやり過ぎなのでは?
部屋ごと宿ごと熱気に包まれてるかのよう。
「よしでは国王の名のもとへ! 」
「国王の名のもとへ! 」
マキシミンがそう叫ぶとメンバーも続く。
「自由の名のもとへ! 」
「自由の名のもとへ! 」
こうして各リーダーのもとで準備に取り掛かる。
さあやることがたくさん。明日までに完了するでしょうか?
ついに国王奪還作戦が動き出した。
その頃王宮では……
「まだ王子は見つからんのか? 」
「はい。どうもすばしっこくて。逃げられてしまったようです」
「何だと? どこに逃げたと? 」
「それが不明で。しかもその王子はどうやら偽物だったようで。
王子は随分前から我々の裏切りを察知し入れ替わってたらしいのです」
「だから王子はあれほど非情だったのか。
国王を捨て忠臣の者を見捨て逃げるとはな。
人質を取れば大人しくなると考えたのが間違いだったようだな」
「まずいでしょうか? 王子は我々の裏切りを知っている…… どうすれば? 」
「案ずるな! 王子もまさか儂が裏切るとは思っていまい。
王子が逃げたのもあのバカが挙動不審な行動を取ったからこそ」
「ああやはり奴には最後まで教えるべきではなかったようですね」
「だが余計な行動をされても困るからな。これも仕方ないことだ。
リスクは承知の上だ。まあ結局王子に悟られ奴は追放の憂き目にあった。
こちらとしても荒立てられずに実行が随分先になってしまった。
それで奴はどうしてる? まだ立ち直れずにいるか? 」
「特に動きは。我々の仲間になるつもりはさらさらないようです。
「ははは…… 愚か者めが」
「それでどうも動きがあるようです」
「動き? まさかな。王子にそのような力ある訳がない。
ただの情けないガキではないか」
「それが…… 何でも人々が集結してる模様なんです。どういたしましょう? 」
「放っておけ! こちらには国王がいる。
たとえ王宮を突破されたところで手出しはできんさ」
「ですがどうもあの厄介な自由同盟も関係してるとか」
「それはまずいな…… 狙いは別にあるかもしれん。
とにかく監視を強めて迎え撃て! 国王に逆らう者はただではおかない! 」
「それですと我々もまずいのでは…… 」
「ふふふ…… そう言うことだな。良いから早く動け! 」
「お任せください! バロン大臣」
「その役職は捨てたわ。もう儂はバロンティア国王だ」
「失礼しました。次期国王様! 」
「くくく…… 何と心地よいことか。では頼んだぞ」
「お任せください! 」
続く




