仲間入り
コーコとピエールの親子が運命の再会を果たす。
何て感動的なんでしょう? この場に居合わせたことを誇りに思う。
ではそろそろ事情と詳しいお話を聞くとしましょうか。
「お父さん! 」
ピエール先生に飛び込むコーコ。
「済まないなコーコ。俺はお前たちを捨てたろくでなしさ」
格好をつけて言い訳してるがどうやらコーコにはうまく伝わってないよう。
それはそうでしょう。あまりにふざけ過ぎで私だって腹が立つほど。
「ほら涙を拭きなさい。さあ離れて」
「ああ…… 」
感動の再会を終えお互い冷静になる。
「どうして…… 急に姿を消したの?
今お母さんが苦しんでるのに。顔も見せないつもり? 」
「済まないなコーコ。俺にはどうすることもできないんだ」
「もうふざけないで! こっちはどれだけ探し回ったと思ってるの! 」
「ははは…… 一年ぐらいか? 」
「ずっとでしょう? いつも探してた! でも手がかりは自由同盟だけ! 」
「どう言うことコーコ? 」
悪いとは思いながらも話を遮る。
「失踪する直前に自由同盟ってつぶやいていた。
お母さんの話では自由同盟を作るとか。忙しくなりそうだと。
それからは自由同盟の噂を聞きつけては移動を繰り返した。
そしてようやくこの国にたどり着いた」
コーコは必死にお父様を探していた。そんな時に私と出会った。
彼女も相当苦労してるのね。そして今ようやくその苦労が報われようとしている。
「何で置いて行ったの! 二人でずっと待っていたのに! 」
コーコは再会を果たしことで感情的になっている。
「済まない…… どうしてもお前たちを巻き込みたくなかった」
娘の追及を受け真実を語るしかないのにそれでも粘る往生際の悪さ。
どうにかその場をごまかそうと言い訳に終始する。
はっきりしないんだから。イライラするなもう。
「まあまあその件は後で好きなだけやってくれ。我々にはやるべきことがある。
だからぜひ協力して欲しい」
非情な王子が遮る。
確かに今はそんなのんびりしてる暇はないですが。
国王奪還作戦の賛同者を募ってる訳だから。
でもその言い方とタイミングはどうかと。少々冷たい気がします。
「そうでした王子…… 」
我に返ったコーコは恥ずかしそうに俯いてしまう。
まあそれくらいで気持ちが収まってくれればいいでしょう。
「あんた何を言ってるんだ! 俺たち親子の問題だろうが! 」
「それは後でと言ってる。それよりも自由同盟について聞かせて欲しい」
有無を言わせない。
王子としてはこの状況で親子喧嘩を続けられては堪らないですからね。
「ああ自由同盟は国を離れた者たちが作った共同体だ。
自国に絶望して新しい組織を立ち上げたんだ。
俺はその時の初期メンバーでなぜか皆から慕われてな」
「それは先生が天才的なカリスマだったからですよ」
マキシミンが尊敬の眼差しを向ける。
「ありがとうマキシミン。そうだな。俺たち三人で自由同盟は拡大していった。
ただプラスの面もあればマイナスの面もある。
名を知られ入隊する者も増えてはいる。
だがその名を利用して悪事を働く者も過去にはいた。
そんな奴は俺が成敗して排除した。
こうしてシュバリエ勲章を胸に自由同盟は今も守られている」
ピエール先生のありがたいお言葉に感銘を受ける男たち。
それを平気で遮ろうとする者が。
「要するに仲間になってくれるでいいんだな? 」
交渉する王子。自由同盟がどうであろうと重要なのは仲間になるかの一点のみ。
「ちょっと待ってくれあんた! さっきから何の話を? 仲間って? 」
ロペスが王子をけん制する。
「国王救出作戦に加わって欲しい」
「だからさっき王子って呼ばれてたのね。どうしますピエール先生? 」
冷静なロペスはコーコの一言を見逃さない。
陽気でフランクに振る舞っているが以外にも切れ者で侮れない。
「それは構わないさ。なあ皆? 」
「おう! 先生がそう言うなら俺たちはただ従うだけだ! 」
そう言って器を掲げて称えるがただ乾杯がしたいだけにも見える。
「それでお前ら強いのかよ? 」
何も知らない無礼なマッギ。許してやって欲しい。
「ははは! 自由同盟は強くないさ。ただ俺たち三人が集まれば怖い者はない」
マキシミン・ロペス・ピエール。
強そうで怖そうでそれでいて素敵な感じがする。
中心人物の彼らにはカリスマと集団をまとめ上げ大きくした実績がある。
国王救出作戦には団結力と統率力が。もちろん武力や攻撃力も。
それから冷静さと頭脳に経験も。
そのすべてを持ってるであろう自由同盟は今回の作戦に欠かせない存在。
ただ気がかりは自由同盟の正体が掴めないこと。
謎多き集団。
いまいち信頼に足りてない気がする。それだけが気がかり。
とは言え王子の正体を知られた今もう後戻りできない。
続く




