ピエール先生
コーコへの疑惑の目が向く。
「私が幼い頃に両親が別れたんです。それから母一人子一人で辛い思いを…… 」
コーコが身の上話を始める。
「あれは寒い夜のことでした。私が寝ていると突然…… 」
「長くなるからまあいいや。お前の親父がどうだろうと構わない。
それで何を知ってる? 」
知っていることをすべて吐くように迫る男たち。
その様子を見守るマキシミンとロペス。
「私はただ一度会いたいだけなんです! 」
どうもコーコの話だと父親の失踪は自由同盟に関係があるらしい。
こうして隠されたコーコの過去が明かされていく。
「まだ疑わしいが要するにお前の親父と自由同盟に関りがあると言うんだな? 」
「ええ。だからどうしても会いたくて」
「名前は? 」
「ジュン…… ジュン・ピエール。私はコーコ・ピエール」
「ピエールってまさかあんたピエール先生の娘さんかい? 」
男たちは驚きを隠せない。
コーコは本当に自由同盟と関係があったようだ。
もしかすると行列に並んでいたのはこの自由同盟を見つけ出すため?
行列や爵位に関し豊富な知識があるから勝手に筋金入りの行列好きだとばかり。
「本当だな? 今の言葉信じて良いんだな? 」
「こんなことでウソを吐く訳ないでしょう! 」
コーコは腹を立て男たちを睨みつける。
いつも冷静で優しいコーコがこんなに感情的になっている。
ここは仲間として私たちが加勢しなくては。
でも…… マッギはオロオロ。王子も場違いに笑っている。正気なの?
これだからこいつらは…… 不甲斐ない弟子たち。
「コーコを信じてあげなさいよ! 」
「よしだったら一つ親父さんに会わせてやるか」
ロペスが口を挟む。
「どこ? どこにいるんです? 」
コーコのためにももう少し付き合うとしますか。
男の言うピエール先生はボロボロの家に住む世捨て人だそう。
自由同盟のために尽力した伝説の人だと言われている。
ではさっそくお邪魔して感動のご対面と行きましょうか。
「ちょっと待ってろ! 仲間と話をつけてくるからな」
マキシミンがここを動くなと命令。
一時間後。
「よしお前をピエール先生のもとに連れて行ってやる」
自由同盟は緊急の話し合いを行ったらしい。
その結果コーコに危険はないと判断したのだろう。
「望み通り会わせてやる。ついて来てくれ」
そう言うと馬車を手配。
マキシミンに従うことに。
ここからだと歩いても行ける場所らしいのだがあえて馬車を使う。
それには理由がある。
怪我明けでまだ動きの鈍いマッギや歩き慣れてない高貴な者がいるから。
それは少々甘やかしすぎの気もします。そこまでして頂かなくても……
ただ一番は居所を特定されないようにするため。
ピエール先生に会わせもし敵だったら隠れ家を知られない方が都合がいいから。
決して譲らない。これを守らなければ結局は会わせてくれないらしい。
こちらは一向に構いませんよ。楽ですからね。
馬車に揺られて十五分。乗ってすぐに着いた感覚。
ドンドン
ドンドン
マキシミンが力任せに叩く。
ちょっと強過ぎでは?
これでは警戒する者は出てこない。
ダンダン
ダンダン
代わりに家から響く音。これは合図?
仲間内だけ伝わるものらしい。
「ではどうぞ」
中には男たちが。自由同盟の者だろうか?
昼間からお酒をたらふく。
案の定酔っ払いのでき上がり。
「さあお前たち。この家の中にピエール先生がいる。
お前が選ばれし者なら間違いなど犯しはしないと信じている」
この酔っぱらい集団から目当てのピエール先生を探せと言うことらしい。
どうやらコーコを試しているらしい。
「コーコ? 一発で当ててね」
「分かってるって! 大丈夫。任せておいて」
何年ぶり? 何十年ぶりかのお父様。
母娘の前から突然姿を消した男。
だが何かしらの事情があったとしても連絡も取れないのはわざとではないか?
薄暗い室内でせっせと飲み食いしてる男たち。
どれがそのピエール先生なのかな?
「コーコどう? お父さん見つかった? 」
「それが全員見たけど違った。この中にはいないみたい」
断定するコーコ。一体マキシミンは何を考えてるのでしょう?
「ははは! どうやら君たちは正しいようだ」
「はあ何を言ってるんだお前はよ? コーコを信じてないのか? 」
大人しくしていたマッギが突っかかる。
相手の実力を見てからにした方がいいような気も。
「まあまあ。ではピエール先生お願いします」
奥のドアからギイイと言う音とともに銀色の髭を生やした男が姿を現した。
「ああコーコ! 探すなと言ったのに…… 」
「お父様ごめんなさい! でもお父様が作った自由同盟を偶然見かけたから」
コーコとピエール親子が運命の再会を果たす。
この場に居合わせたことを誇りに思う。
さあそろそろ事情を説明してもらいましょうか。
続く




