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恨み

コーコに誘われて新たな行列へ。

広場にはすでに長蛇の列が。参加者からは殺気と熱気が伝わってくる。

ここまで激しいのも珍しい。でもどうせ爵位の列ではないんでしょうね。

今までは一縷の望みに託してなるべく聞かずに並んでいた。

もしかしたら爵位を得られるかもしれない。そんな幻想に支配されて。

そうではないと言われるのが怖くて事前に聞けずにいたとも。

シンプルに後のお楽しみとして敢えて聞かないようにもしていた。

その結果無駄な時間を過ごすことになる。

一か月もない中そんなにのんびりしてられないはずなのに無駄なことばかり。

足搔きに足搔いてますがまったくの無意味。


やはりあの噂はただの噂でしかないのでしょうか?

どんな民にも爵位を与える物好きな慈悲深い国王がいると。

その爵位を得られればその者は幸せになれ一族も繁栄すると言われている。

誰が信じるのそんな戯言? でもその戯言のような噂に頼るしかない。

それが我が一族が復活する唯一の方法。 


「ねえコーコ。今度は何の行列なの? 」

思い切って聞いてみる。だってこれは彼女が誘ったものだから。

当然目当てのものではない。付き合いで並んでるに過ぎない。

「毎週行われている王子様お付きチケット」

これに当たれば何と王子様と一緒に練り歩くことができるらしい。


一年に一度国王が各地を回る伝統行事がある。

お年になり負担になると言う理由から数年前から王子が代わるようになった。

当然王子はこの国を治める使命がある。

そのためには民からの支持が必要不可欠。

顔を売っていて損はない。


全国各地に赴き自ら花嫁候補をお選びになることが目的だとも言われている。

ですからこのチケットを手にすればもしかしてがあり得るかも。

色めき立つ参加者。

大変名誉なことで誰もが憧れる。

条件は一つだけ。まだ結婚してない者。だから当たるチャンスは誰にでもある。


「さあ並びましょうか」

こちらの事情も知らずに気軽に誘うコーコ。

これが普通で私が特殊なだけなのですが。

「うん…… 」

どうも乗り気がしない。だって王子ってあの方でしょう?

あの方…… あいつだ。夢にまで出てきた王子。当然悪夢ですけどね。


お父様から爵位を奪った張本人。

たとえお父様がどんな失態を犯しても少し冷静になれば爵位まで奪うのは横暴。

我がままが過ぎる。それなのに国王ったら溺愛する王子の言いなりなものだから。

こうなっては聞き分けのない頑固者。ただの迷惑なお爺さん。

国王が国王なら王子も王子。親子揃ってどうしようもない。

これが我が国を支配してるのかと思うと大変情けない。


どうしてこんな愚かしい真似を? 完全に判断を間違えてるではありませんか?

そんな王子。私の婚約を台無しにした恨むべき人物。

恨み節の一つでも言ってやりたい。

でも言ったらその場で取り押さえられ牢屋に入れられるのでしょうね。

もちろんその覚悟はある。


今は復讐の機会を窺っているところ。

「ほら急いで! 」

ちょうど行列が少ない時間帯。夕方で皆さんお帰りになるとのこと。

だからこの時間になると行列は極端に減るそう。

コーコはこの瞬間を狙っていた。

行列攻略上級者のコーコからいかにして効率的に並べるかを伝授してもらった。

ただ何となくで並んでいたから勉強になる。


「クレーラ。急いで! 」

「ごめんなさい。私はちょっと…… 」

断るしかない。何が悲しくて王子のエスコートをしなければならないの?

「ほら早く。もう時間がない! 」

あと三十分もせずに終了してしまう。

毎週あるとは言え十日後に迫っているビッグイベント。

今日を含めてもう二回しかない。

まだ開催されているなら少なくても二人分は残ってるのでしょう。


こんなチャンス二度とない。一国民にとって本当に大変名誉なこと。

名誉なことなんだけど私には耐えられない。

苦しくて苦しくてどうしようもない。

この気持ちを理解してくれる人なんていないんでしょうね。

私だってもう子供じゃない。コーコの頑張りに水を差すようなことはしたくない。


               続く

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